Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】「エドワード・ルトワックの戦略論」

エドワード・ルトワックの戦略論

エドワード・ルトワックの戦略論

 

以前読んだ「大戦略の哲人たち」でも紹介されていた、エドワード・N・ルトワックの「戦略論」を購入。この邦訳が出たのはありがたい。本書でまず語られるのは「戦争における逆説の意識的な活用」である。つまり『まさか、これはやらないだろう』という逆説的な判断や行動を用いることで、リデル・ハートの「間接的アプローチ」にも通じる部分があると思う。

まあ実際ウォーゲーマーなら、相手の意表をつく作戦を、常に意識しているかと思うが、自分の経験からすると、それが意外とできていない場合も多々あったりする。ウォーゲームには、ルールという縛りがあるため、プレイヤー側でも『これは出来る』『これは出来ない』と自己判断をするが、実はルールを守りながら、そのルールを超越するような形で、相手の虚を突ける場合もある。

人間は意外と、思考が縛られるもので『補給範囲はここまで。それを超えたら補給切れでペナルティが入るよ』とルールで縛られると『だったら相手は、補給切れになるようなことはしないだろう』と思ったりする。ところが、意外と補給切れのペナルティがゆるく、補給切れ前提で行動しても、さしたる損耗が無ければ、相手の思考範囲を超越した行動が行える場合もある。このあたり、よくルールを読むこと、そしてそのルールの超越を想像できるかどうかがカギなのだが、あいにく自分はそこまで練達のウォーゲーマーではない。いいとこ、ルールに沿った最適な行動が行える程度だ。しかしルトワックが言う「逆説の意識的な活用」は、そういったルールの超越を指していると思う。ウォーゲームをプレイする際に、そこまでの域に達せるかどうかは自信がないが、リデル・ハートの「間接的アプローチ」と併せて、肝に銘じたい心構えではある。