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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】エドワード・ルトワック「戦争にチャンスを与えよ」

戦争にチャンスを与えよ (文春新書)

戦争にチャンスを与えよ (文春新書)

 

2014年に「戦略論」が邦訳された、エドワード・ルトワックの「戦争にチャンスを与えよ」を購入。なかなか扇情的なタイトルだが、それもある意味、ルトワックの芸風だと思うので、まあ良しとしよう。本書は、論文やインタビューをまとめたもので、現在の東アジア情勢を中心に語られているが、冒頭に記された「戦争にチャンスを与えよ」は、ユーゴスラビアやアフリカ等での紛争を題材に、中途半端な停戦介入による、そのデメリットを説いている。つまり、一時的に地域紛争を停戦させても、国家や民族間の憎悪が不完全燃焼のまま残ったり、難民を永続化させてしまうと。「戦争は良くない」という人道主義だけで介入しても、その地域から憎悪を根絶したり、難民を定住化させるプロセスには莫大なコストと時間がかかり、それを引き受けるだけの能力が無いなら、無責任な介入になるという説だ。

以前読んだ「戦略原論」の中にも、紛争に対する人道的介入の章があったが、実際、虐殺などを見過ごすことは国際社会として無責任だが、その後、その国を再建する責任まではあまり議論されてこなかったという話もある。こういったあたりは、あまりウォーゲーマー向きの内容ではないが、現代の国際紛争を見るうえでは、とても重要な要素だと思う。