「国防軍潔白神話の生成」を購入。タイトルにある「国防軍」とは、もちろんWWII当時のドイツ国防軍のこと。戦後、国防軍の元将軍たちが「負けたのはヒトラーと取り巻きのせい」「SSの残虐行為も、反ユダヤ・反コミッサールにも無関係」と著述し、それによって「国防軍=潔白」と云うイメージを定着させた裏には、実は意図的なガイドラインや、冷戦事情が関係していたのだという一冊。
内容は、アメリカ軍の戦史研究企画(OHP)から始まり、それに協力するハルダーを筆頭とする元将軍たちの保身や葛藤、「死人に口無し」を用いた国防軍復権のガイドライン、冷戦期の「我々だけがロシア軍と戦った実績を持っている」との売り込み、東西ドイツで異なった歴史研究、儀式に過ぎなかったマンシュタイン裁判、ヒトラーから内密の下賜金を受け取った将軍(グデーリアン含む)等々、なかなか興味深い事柄が連なっている。特に元将軍たちが戦後、自分たちが騎士道的に戦い、あたかもスポーツかゲームの如く戦争を著述した、との一文を読んだ時は、なるほど、だからWWIIウォーゲームは人気があるのか、とも感じた。ゲームのように描かれた戦争故に、ゲームにしやすくて当然かと。
しかし本書を読んで「俺は騙されてたのかー!」と激昂し、「電撃戦」も「失われた勝利」も古本屋さんに叩き売り、それらを元にして作られたウォーゲームを捨てちまう、という事もない。元々ドイツ軍に限らず、こういった英雄譚は、一歩引いた目で眺めるクセがあるので、信じ込んでいなかった分、あまり驚きもなかったり。基本的に自分は、世の中の情報は100%信じない人間なので「ああ、そうなのね」で終わっている。本書で書かれていることの真偽も、どうなのだろうと思ったり。
ちなみに現在では、新装版が出版されている。
ドイツの謝罪は誠実だったか: 国防軍潔白神話の生成 (WW2セレクト)
- 作者: 守屋純
- 出版社/メーカー: パンダ・パブリッシング
- 発売日: 2017/08/12
- メディア: Kindle版
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