Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】ティモシー・スナイダー「ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実」

文庫化された「ブラッドランド ヒトラースターリン 大虐殺の真実」(上下)を購入。内容はその名の通り、二度の世界大戦前後に「流血地帯(ブラッドランド)」……ロシア、ウクライナベラルーシ、バルト諸国、ポーランド近辺で行われた凄惨な虐殺、民族浄化についてまとめられている。書籍版は2015年に発売されていたが、こういった虐殺が直接反映されたウォーゲームも少なく、ちょっとスルーしていたが、文庫が出たこの機会に読んでみることにした。ウォーゲームの資料と言うより、人類の基礎教養として。一応この文庫版には、2021年夏に書かれた「著者後書き」も追記されているので、どうせ手元に置くなら文庫版かなと。

この手のテーマが反映されたゲームは少ないものの、第二次大戦前の戦争準備を扱った「Gathering Storm」では、ソ連の政策として、粛正を行えば行うほど国内の結束が固まっていくという嫌なルールがある。それもあくまで抽象化されたものだが、一応、スターリンの非道さを表してはいる。

また、21世紀版エウロパ・シリーズことTSWW(The Second World War)シリーズの東部戦線前期セット「Barbarossa」には、独ソ両軍の人種政策(捕虜を後送して奴隷労働に就かせる、ソ連少数民族部隊を粛正する、等々)や、パルチザン戦、特別行動隊ユニットに関するルールもある。TSWWの場合、プレイヤーは戦域司令官を担当するが、その指揮上位にはヒトラースターリンがいるものとしてゲームが進められる。各国のプレイ指針としても「ドイツの目的は、東ヨーロッパで十分な経済的生活圏を獲得しつつ、ヨーロッパ内に人種的に純粋なドイツ人の超大国を建設することである」「ソ連は、共産主義の福音を広めつつ、枢軸側や西側連合の攻撃に対する防護を最大化する。枢軸側に攻撃された後は、 死戦によって、支配的な枢軸勢力を完全に破壊する」と明記されているので、プレイヤーも絶滅戦争を戦わされている戦域司令官、という前提/設定になっている。実際、ゲーム上でそのような政策を必ずしも採用する必要はないが、ルールの背景にある史実も、心の片隅に入れておきたいとは思う……