Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】David.M.Glants & Jonathan.M.House「Endgame at Stalingrad Book1 & 2」「Companion to Endgame at Stalingrad」

Endgame at Stalingrad: November 1942 (Modern War Studies: Stalingrad Trilogy, 3)

Endgame at Stalingrad: November 1942 (Modern War Studies: Stalingrad Trilogy, 3)

 
Endgame at Stalingrad: December 1942 - February 1943 (Modern war studies: The Stalingrad Trilogy (books 1-2))

Endgame at Stalingrad: December 1942 - February 1943 (Modern war studies: The Stalingrad Trilogy (books 1-2))

 

GMTの新作「Stalingrad'42」が到着し、「TSWW:Barbarossa」もそろそろ発売ということで、David.M.GrantzとJonathan.M.Houseの共著「Endgame at Stalingrad」(2分冊)を購入した。そもそもこれ、2009年に発売された「To the Gates of Stalingrad」「Armageddon in Stalingrad」に続く「スターリングラード3部作」の第3巻として予定されていたものの、発売は大きく遅れて2014年となり、しかも2分冊になったというシロモノ。自分としても、第1巻・第2巻は2009年に購入したものの、その後、ウォーゲームと戦史史料の断捨離フェイズに入り、第3巻以降は買っていなかった(正確には忘れていた)のだ。 

Companion to Endgame at Stalingrad (Modern War Studies)

Companion to Endgame at Stalingrad (Modern War Studies)

 

しかもこの第3巻、2分冊だけでは収まらず「Companion to Endgame at Stalingrad」という史料集も別売され、実質3分冊、シリーズ全体としては全5冊という凄まじい分量になっている。もちろん今回「Companion」も購入したので、我が家では2009年以来、10年ぶりに全5冊が揃うこととなった。並べてみると、恐ろしいほどのボリューム。これ青作戦、スターリングラード戦だけだぜ。 

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第1巻「To the Gates of Stalingrad」では、第二次ハリコフ戦から、青作戦の計画立案とその開始が記され、 第2巻「Armageddon in Stalingrad」では、スターリングラードでの市街戦が克明に記されていた。

そして第3巻「Endgame at Stalingrad」の上巻とも言える「Book One」では、ソ連軍の天王星作戦とスターリングラードが包囲されるまでを扱い、下巻である「Book Two」では、ドイツ軍によるスターリングラード救出作戦とその失敗、そしてドイツ第6軍の降伏までを扱っている。

恐らく今現在、青作戦・天王星作戦に関する最良の作戦史と言える本シリーズだが、第3巻で採り上げる歴史的疑問としては「そもそも誰がソ連軍の天王星作戦を立案したのか?」「なぜ天王星作戦は成功したのか?」「第6軍の救出・脱出は可能だったのか?」「なぜドイツ軍の救出作戦は失敗したのか?」「第6軍の降伏に最も責任があったのは誰なのか?」というあたり。これを検証するために「Companion」では、両軍指導部のやり取りも詳細に記されている。

しかし、なるほどその作戦史的研究テーマは分かったものの、さすがにこの分量なので、まだまだその疑問は読み解けていない。一応、先月到着してから、寝る前にちまちま読み進めているが、まだ「Book One」の前半程度。長い旅になりそうだが、おかげさまで「Stalingrad'42」「TSWW:Barbarossa」へのモチベーションは高まっている。 

Stalingrad (Modern War Studies)

Stalingrad (Modern War Studies)

 

ちなみにこのシリーズをまとめたダイジェスト版も、2017年に一巻本で出ているが、さすがにそれは買わなくていいよな…… 

GMT「Stalingrad'42」

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プレオーダーしていたGMTの新作「Stalingrad'42」が到着。ゲームデザイナーは、お馴染みのMark Simonitch。タイトル通り、1942年6月に開始されたドイツ軍の青作戦から、コーカサス方面への侵攻、スターリングラードの争奪、ソ連軍の天王星作戦等を包括した作戦級ゲーム。ゲームスケールは、1ヘクス=10マイル(約16km)、1ユニットは軍団(ソ連)~師団(枢軸)が基本となっている。6月~8月までは1ターン=4日、9月は1ターン=6日、10月~11月中旬は1ターン=7日、そして11月後半~12月中旬は1ターン=5日、12月後半は1ターン=6日という変速スタイル。ターンこそ独特のリズムだが、基本スケールは、やはりSimonitch作の「Ukraine'43 2nd」と同じだし、彼が近年出版している遊びやすいWWII作戦級システムを導入している。ある意味、Simonitchが1992年に発表したRhino Game Companyの「Campaign to Stalingrad」のセルフリメイクといった趣か。

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地図盤は、フルマップ2枚+コーカサス方面の延長ミニマップ2枚という構成。あいにく我が家のテーブル(150cm✕90cm)には乗りきらないが、青作戦シナリオならマップ1枚、コーカサスシナリオならミニマップ2枚、天王星作戦ならフルマップ2枚なので、そのあたりならどうにか。実際この範囲すべてを使うのは、キャンペーンだけである。ちなみに以前、Simonitchは、同じGMTから「Caucasus Campaign」も出したが、あの地図盤よりも、今回の範囲の方が狭くなっている。なので、より広い範囲でコーカサス戦を楽しみたい方には、まだまだ「Caucasus Campaign」も価値があるかなと。

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ゲームターンは、移動・戦闘・回復・補給をくり返すシンプルなもの。ルールに関しても、ZOCボンド、戦力比10:1による自動的防御側撃破(Automatic DS)、戦車シフトという、近年のSimonitch作と同様になっている。ただし、断固とした防御(Determined Defence)に関しては「Ukraine'43」と少し違い、防御側が攻撃側のステップロスユニットを選択できる結果もあり、都市での退却をキャンセルする市街戦(City Battle)マーカーも登場。このあたりはスターリングラード戦を意識しているのだろう。また戦闘結果表を「Ukraine'43」と見比べてみると、防御側2ヘクス後退や4ヘクス後退も多く、下がる時は下がる、留まる時は留まる戦いになりそうだ。

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プレイブックには、豊富なプレイ例も載っていて、ありがたい限り。 

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こちらは枢軸軍カウンターシート。「Ardennes'44」と同じく、厚みのある造り。 

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こちらがソ連軍カウンターシート。カウンターは、総数576。あまりキャラクター的部分を楽しむゲームでもないのだろうが、平地でも断固たる防御が行えるNKVDユニットや、北コーカサス義勇兵、ドイツ軍の市街戦工兵、指揮官としてチュイコフとマンシュタインもあり。

また史実を再現するルールとして、ドイツ軍の撤収、ソ連軍の冬期攻勢とその欺瞞作戦(マスキロフカ)もあり。欺瞞作戦は、ソ連軍ユニットを盤外のホールディングボックスに集結させ、盤上には予備軍マーカーだけが置かれる形。枢軸軍プレイヤーは、ボックスの中身は見えるものの、そのボックス内の予備部隊が、盤上のどの予備軍マーカーと一致するのかは分からないという仕組み。これ上手くすると、自分なりの天王星作戦が出来るはずなので、是非試してみたい。

まあ、恐らく本作も手堅く作ってあるだろうし、青作戦ゲームの新定番、新スタンダードになるはず。キャンペーンは敷居が高いが、とりあえず1マップでプレイできる青作戦あたりから入りたい。

【参考文献】ジェイムズ・リーソー「グリーン・ビーチ ディエップ奇襲作戦」

グリーン・ビーチ―ディエップ奇襲作戦 (1975年) (Hayakawa nonfiction)

グリーン・ビーチ―ディエップ奇襲作戦 (1975年) (Hayakawa nonfiction)

 

昨日、神保町の古本まつりで、ディエップ奇襲作戦を扱った「グリーン・ビーチ」(ハードカバー版)をワンコインで購入。実は以前、文庫版を持っていて、処分してしまったのだが、やっぱり要るなあということで再購入。最近このパターンが多いが、実際ディエップ奇襲を扱った日本語の本も無いし。

ちなみにCompass Gamesから出版されているCSS(Company Scale System)で、このディエップ奇襲作戦を出すかも、というアナウンスがある。たしかに作戦規模が小さいので、1ユニット=中隊スケールのCSSなら、上手く収まりそうな気もする。しかし実質1日で終結した作戦なので、1ターン=2時間のCSSでは、10ターンかからずに終わってしまうだろう。となると『もしも、もっと上陸部隊が多かったら』『事前にドイツ側に情報が漏れていなかったら(実際、2日前に漏洩している)』『上陸翌日以降も戦闘が続いたら』のような、仮想設定を盛り込めば、面白くなりそうな気も……とりあえず、それが出る時には、本書を再読してみよう。 

グリーン・ビーチ (1981年) (ハヤカワ文庫―NF)

グリーン・ビーチ (1981年) (ハヤカワ文庫―NF)

 

【参考文献】M.ミドルブルック & P.マーニー「戦艦 マレー沖海戦」

戦艦―マレー沖海戦 (ハヤカワ・ノンフィクション)

戦艦―マレー沖海戦 (ハヤカワ・ノンフィクション)

 

ぶらり、神保町の古本まつりに行き、古いハヤカワの翻訳物「戦艦 マレー沖海戦」をワンコインで購入。その名の通り、イギリスの戦艦プリンス・オブ・ウェールズ巡洋戦艦レパルスの撃沈を記録したノンフィクション。古いモノだが、このあたりのハヤカワの翻訳物は、美本かつ安価なら買うようにしている。このマレー沖海戦シナリオも含んでいる「TSWW:Singapore !」も買ったことだし、ちょうど良い副読本になりそうだ。 

【参考文献】「戦理入門」(昭和50年・増補改訂版)

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川越の古書店から「戦理入門」(昭和50年・増補改訂版)を取り寄せ購入した。これも以前所有していたものの、経済的ピンチの折りに軍事書専門の古書店に売り払い、そしてまた別の古書店から再購入と相成った。売り払う際も、古書店のご主人から『いいんですか?これ持ってる人、普通は売りませんよ?』と言われたが、まあ、ご縁があればまた会えるだろうと思ったし、実際再会できたので良しとしよう。

光人社NF文庫「戦術学入門」では、本書を「旧陸軍・陸上自衛隊をつうじて唯一ともいえる戦術学参考書」と評しているが、実際には「昭和44年・新書版」「昭和50年・増補改訂版」「平成7年・陸戦学会版」があるとのこと。自分が以前所有していたのも、この昭和50年版を昭和55年に再刊したモノであり、同じ版を買い直したことになる。平成版は、フォークランド紛争などの新しい戦例も載っているようだが、あいにく未見。まあ、新しい戦例が載っているのはありがたいが、基本戦理はあまり変わらないだろうから、この昭和50年版でも、十分に価値はあると思う。

以前も書いたが、本書の存在を知ったのは、ウォーゲーム雑誌「TACTICS」「石川輝の戦術講座」で紹介されていたのがキッカケ。その記事を見た後、たまたま神保町の古書店で発見し、購入したのが、自分がまだ学生時代の1990年。そう考えると、約30年ぶりの再購入というわけだ。

もちろん本書は、自衛隊幹部向けの基本戦理の解説書であり、プロフェッショナル向けなのだが、より高度なテキストである「戦術原則の基礎的研究」や「戦術との出逢い」に比べれば、かなり平易で読みやすい。「TACTICS」でも紹介されていたように、まさにウォーゲーマー向けの一冊でもある。

参考までに、章題を記しておこう。

 

「第1編 序論」

「第1章 序言」「第2章 戦いの本質と陸戦の特色」「第3章 戦理の意義と性格」

「第2編 戦闘力の意義及び特性」

「第1章 戦闘力の意義及び原理」(戦例:第二次アキャブ作戦における英印軍の戦闘、第1次大戦当初の西方戦場における独軍の攻勢、ポーランド会戦)

「第2章 戦闘力の組織及び調整」(戦例:長篠の戦、フーコン(タルン河畔)における米支軍三角陣地、ノルマンディー上陸作戦、サイパン作戦)

「第3章 戦機と奇襲」(戦例:賤ヶ岳の戦、桶狭間の戦、アルバート運河及びエベンエマエル堡塁に対する空挺作戦)

「第4章 正面戦闘力と縦深戦闘力」(戦例:三方原合戦)

「第5章 拘束と打撃」

「第3編 戦力の集中」

「第1章 要旨」(戦例:国連軍の北鮮進攻作戦、レイテ作戦)

「第2章 戦闘力の求心的行使」

「第1節 求心の理」

「第2節 外線作戦」(戦例:武漢攻略作戦、インパール作戦)

「第3節 分進合撃」(戦例:徐州会戦、ケーニヒグレッツの会戦)

「第4節 包囲」(戦例:朝鮮の雲山における中共軍の包囲)

「第5節 突破」(戦例:第2次大戦初期の独軍のマジノ戦突破、第2次大戦終期における独軍のアルデンヌ攻勢)

「第3章 戦闘力の偏心的行使」

「第1節 偏心の理」

「第2節 内戦作戦」(戦例:第3次中東戦争)

「第3節 各個撃破」

「第4章 対上着陸作戦」(戦例:アンチオ上陸作戦)

「第4編 敵戦闘力の逆用」

「第1章 衝力の逆用と操縦」(戦例:ソ芬戦争におけるスオルサルミの戦闘)

「第2章 牽制と逆牽制」

「第1節 牽制と逆牽制の意義及び特性」(戦例:奉天会戦における鴨緑江軍の東翼からの攻撃)

「第2節 主作戦と支作戦の関係」

「第3節 持久作戦」(戦例:フーコンにおける第18師団の持久作戦)

「第4節 主力の翼側に行動する部隊」(戦例:ミシチェンコ騎兵集団の海城周辺における作戦)

「第3章 戦場における殲滅戦」(戦例:タンネンベルヒ会戦、仁川上陸作戦)

「第5編 主動」

「第1章 要旨」

「第2章 遭遇戦」(戦例:遼陽会戦における第12師団の戦闘)

「第3章 陣外決戦」(戦例:ウルムの会戦、ガザラとバー・ハッチェム(ビル・ハケイム)の戦闘)

「第4章 後方遮断」

「第6編 戦闘力の限界」

「第1章 戦局転換点の打算」

「第1節 要旨」(戦例:第2次大戦の独の対ソ作戦=スターリングラード及びコーカサスに向かう攻勢)

「第2節 攻勢転移」(戦例:マルヌ会戦におけるジョッフル攻勢、アウステルリッツ会戦)

「第3節 攻勢終末点」

「第4節 延翼包囲競争」(戦例:第1次大戦の西方戦場における延翼包囲競争)

「第2章 追撃と退却」

「第1節 追撃」(戦例:独山追撃作戦)

「第2節 退却」(戦例:インパール作戦における第33師団の後退行動)

「第7編 特殊地形等の作戦」

「第1章 要旨」

「第2章 地形的特殊性に基づく作戦(戦闘)」

「第3章 夜暗等を利用する戦闘」(戦例:弓張嶺付近における第2師団の夜間攻撃) 

ちなみに、このBlogの前身であるココログ時代の2007年に書いたこの紹介記事は、昔も今も、トップアクセス数を誇る人気記事になっている。それだけ、この手の戦術教本に興味をお持ちの方が多いのだろうし、情報も少ないのだろう。なかなか入手は難しいかと思うが、もし見かけたら、是非手に入れて頂きたい一冊である。だったら売るなよと言われそうだが、多分、自分が売り払った一冊も、今頃は、誰かのお役に立っているんじゃなかろうか……(^_^;)

【参考文献】「日本の戦争 図解とデータ」

日本の戦争―図解とデータ

日本の戦争―図解とデータ

 

神奈川の古書店から、1982年刊行の「日本の戦争 図解とデータ」を取り寄せ購入。実は以前、所有していたのだが、経済的に厳しかった時に売却してしまった一冊。内容は、明治維新以降に日本が関わった戦争……日清戦争日露戦争第一次世界大戦(青島攻略・シベリア出兵)、満州事変から日中戦争、そして太平洋戦争の各場面を、簡単な説明と、戦況図としてまとめたもの。

今年は「TSWW:Day of Infamy」「TSWW:Singapore !」と太平洋戦争のウォーゲームを続けて購入し、さらに最近、TSWWシリーズの日中戦争編「The China Incident」の予約プレオーダーも始まったので、やはり本書ももう一度手元に欲しくなって、再購入と相成った。まあ、当時の定価4400円とさほど変わらない価格だったので、良しとしよう。

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本の作りとしては、左側が戦況解説、右側が戦況図という構成。日清・日露から太平洋戦争終戦までを67枚の図で概説している。まあ、あくまで解説の方は短いので、簡単な参加部隊と指揮官名が分かれば良いし、詳しいことは、それぞれの戦場を詳解した別の史料を読んだ方がいい。個人的には、日中戦争での諸作戦の戦況図がありがたい。なぜかヨーロッパの戦場名はそれなりに頭に入っているのに、中国の戦場名と位置関係はそれほどでもないので、また勉強し直そう。巻末には、戦時日本の経済状況や、戦備に関する史料もあり。まあ、これも古いものだろうが、それもまた今時の史料で補完するつもり。

とりあえず、赤と青の矢印が入った戦況図だけでも、ウォーゲーマーは大好物だと思うので、未読の方は是非是非。まだそれほどプレミア価格でもないし。

【参考文献】アルバート・C・ウェデマイヤー「第二次大戦に勝者なし (上下)」

第二次大戦に勝者なし〈上〉ウェデマイヤー回想録 (講談社学術文庫)

第二次大戦に勝者なし〈上〉ウェデマイヤー回想録 (講談社学術文庫)

 
第二次大戦に勝者なし〈下〉ウェデマイヤー回想録 (講談社学術文庫)

第二次大戦に勝者なし〈下〉ウェデマイヤー回想録 (講談社学術文庫)

 

柏の古書店にて、講談社学術文庫版の「第二次大戦に勝者なし(上下)」を再購入。以前、旧版(読売新聞社のハードカバー版)を持っていたが、処分してしまい、でもやっぱり要るなあということで、再び入手した。この文庫版もすでに絶版なので、定価以上の買い物となったが、まあ、仕方ない。

本書は、第二次大戦時のアメリカの戦争計画にも携わった、ウェデマイヤー将軍の回想録。しかし久しぶりに読むと、このウェデマイヤー将軍、マーシャル参謀総長の下でアメリカの動員計画そのものを立案し、戦争前のドイツ陸軍大学留学時代にはゲッベルスゲーリングなどナチスの要人にも会い、クラスメイトには後にヒトラー暗殺計画の実行犯となるフォン・シュタウフェンベルグ(当時)大尉がいて、イギリス出張ではチャーチル首相とも会い、英米カサブランカ会談にも同席し、オーストラリアではマッカーサー将軍に会い、ガダルカナル島も視察し、パットン将軍の参謀としてシチリア島上陸作戦にも参加し、ビルマ、中国戦線にも行くという、まるで戦争大河ドラマの主人公のように、第二次大戦の名場面、主要人物と巡り会い続けるという、なかなか数奇な運命をたどっている。彼を主人公にしたら、面白いドラマが作れるかもしれない。

しかし最初に読んだ時は、アメリカの戦争計画を立案したプロセスの方に驚いた記憶がある。枢軸側に勝つためには、アメリカとしては850万人の動員が必要であるとする「勝利の計画」は、その規模の大きさに目眩すら覚える。そしてそれが可能だというアメリカの国力にも。