Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Advanced Squad Leader】「ASL Journal #12」「ASL Action Pack #12 #13」「Winter Offensive Bonus Pack #7 #8」「Best of Friends」

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毎年恒例MMP秋のセールで、例年通り、ASLの小物類をまとめ買い。まずは2017年発売の「ASL Journal #12」。一応、最新号。記事としては「VBMフリーズ(車両による歩兵拘束)への対抗策」「AP119 Konev Cross(1945年ベルリン戦シナリオ)作戦研究」「朝鮮戦争における韓国海兵隊の歴史」「単一ヘクスの歩兵と機関銃を、どのように射撃グループ化するか」「AP71 Head in the Noose(1944年フランス戦)作戦研究」等々。それにしても、あらためて思うのは、シナリオ分析から、メタゲーム研究、史実の紹介と、ひとつのゲームシステムでこれだけ様々な記事が書けるのも、ASLというゲームの豊かさの現れだなあと。シナリオは12本収録+「Yanks」収録の「181 Gavin Take」シナリオカードの訂正版があり。 

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「Action Pack #12」(2015年発売)「#13」(2017年発売)も購入。「#12」は、地図盤73とシナリオ10本。「#13」は、地図盤78、79とシナリオ11本。「ASL Journal #12」に研究記事が載っているAP119シナリオは「#12」に収録。「#13」収録の「AP123 Busting in Balta」は、昔なつかしい「Cross of Iron」収録のシナリオ13「The Capture of Balta」のリメイクか。 

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さらに「Winter Offensive Bonus Pack #7」(2016年発売)「#8」(2017年発売)も購入。「#7」は、地図盤74、75とシナリオ3本。「#8」は、地図盤76とシナリオ3本。さらにスウェーデンのASLトーナメント Friendly Fireから厳選されたシナリオ集「Best of Friends」(2013年発売)も購入。

これにて、ここ数年、後回しにしていたASL小物商品もほぼ網羅。これからは、せめて「Journal」だけは発売直後に買わねばと思ったり……

【Battalion Combat Series】「Last Blitzkrieg」

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先月のMMPのセールで購入したBCS(Battalion Combat Series)第1弾「Last Blitzkrieg」(2016年発売)が到着。BCSは、先に第2弾「Baptism by Fire」を買ってしまい、その独特な(直訳しにくい)用語と概念に翻弄されたものの、システム自体はプレイアブルかつ斬新で納得のいくものだった。結局「Baptism by Fire」が、個人的2017年ベストワン・ウォーゲームと相成り、遅ればせながら、この機(セール)に乗じて第1弾も買っておこうと。ちなみに第3弾「Brazen Chariots」もプレオーダー済み。

さて、このBCS第1弾「Last Blitzkrieg」のお題は、お馴染みの1944年冬のバルジ戦。フルマップ4枚と、見かけはビッグゲームだが、フォーメーション(師団・旅団/連隊・戦闘団)毎に活性化するシステムなので、一度に動かすユニット数は多くない。昨年一度、触れさせていただいたが、シナリオだけ切り取れば、かなり遊びやすいサイズだった(ちなみに収録シナリオは、キャンペーン4本、その他6本)。

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しかし1ユニット大隊級のバルジ戦ゲームと言えば「GOSS:Wacht am Rhein」もそうだし、地図スケール(LBは1ヘクス=1km、WaRは1ヘクス=1.6km)も近いが、本作の方が地図範囲は狭くなっている。具体的には、北方が省略され、バルジ戦ゲームでお馴染みのMonshau、Eupen、Verviers、Liegeあたりは描かれていない。これはデザイナーズノートでも言及されているが『Monshauでは、作戦初期に戦闘があっただけなので』カットしたそうだ。また時期的にも、ドイツ軍が反攻を開始した12月16日にスタートし、12月31日までしか描かれていない。

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カウンターシート6枚(カウンター総数1680個)ながらも、ユニットはそのうち半数に過ぎない。こちらはドイツ軍ユニット。細かく戦車の車種が分けられているのもBCSの特徴だが、シュトルムティーガーや無線誘導戦車大隊あたりまで入っているのが楽しい(ただしティーガー戦車系ユニットは、活性化する毎に損耗チェックを行い、失敗すると1ステップロス。そしてシュトルムティーガーも無線誘導戦車も1ステップしかない……)。またBCS独特の表現方法として、突撃砲は大隊としてまとめて活用するより、歩兵支援に分散させた方が有効というのも戦闘教義(ドクトリン)的に正しい。

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こちらはアメリカ軍ユニット。戦車の質的にはドイツ軍に劣るものの、機甲師団はすでにコンバットコマンドとして複合兵科化されており、中には9ステップ、8ステップという打たれ強いユニットもあり、ドイツ軍とは異なる部隊構造を指揮できる。またドイツ軍の突撃砲とも異なり、駆逐戦車大隊は歩兵支援専門である(大隊としてまとめて機能させられない)というのも戦闘教義的に正しい。このあたりも、先日翻訳したBCSv1.2でCarl Fungがあれこれ書いていたので、かなり思い入れがあるようだ。

私が目の敵にしているのは、ある種のウォーゲームで描かれているように、アメリカ軍の独立駆逐戦車大隊を、歩兵師団に割り当てることです。私は、そういった駆逐戦車大隊が、攻撃的な戦車大隊として集中され、動き回るのを目にしてきました。(BCSv1.2から)

到着したタイミングもちょうどバルジ戦の時期だし、すでにBCSv1.2も訳してあるので、年末の繁忙期が過ぎたら、(選択ルール込みで)ソロプレイしたいと思う。クリスマスまでに触れられるだろうか……

【Battalion Combat Series】BCS Rules v1.2 と 将来のBCS企画

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来年発売予定のBCS(Battalion Combat Series)第3弾「Brazen Chariots」に同梱されるであろうBCSv1.2基本ルールが公開されたので、早速翻訳してみた。実際の製品版とはまた変わるかもしれないが、とりあえずの第一印象ということで。

BCSv1.2 Rules

基本ルールの変更点は、ごくわずか。

・「状況による後退」ユニットが緊要地形にいなかったり、準備防御でなければ、移動面に裏返す。

・指揮範囲外への攻撃は不可(戦闘後前進による指揮範囲外への前進を防ぐため)。

・フォーメーションの補給段列(Combat Train)が適正ヘクスにいない場合、増援の登場が遅れる。

個人的に興味深い(使ってみたい)選択ルールは、このあたり。

・2ヘクス以上での射撃戦(Engargement)で「双方ステップロス」を無視する=2ヘクス以上での射撃戦で相手にステップロスを負わせる確率が下がる=一方的なアウトレンジ射撃の有利さを減らす。

・命令ルールの導入。各ターン、フォーメーション毎に、経由地点⇨目標地点だけの簡単な移動経路を書いておき、それに従って移動する。また回復と準備防御をする場合も、あらかじめターン開始時に計画する(つまりターン途中で、いきなり回復や準備防御はできない)。

・敵HQや補給段列がいるヘクスに自軍ユニットを突入させた場合、実際そのヘクスに敵HQや補給段列がいたかどうかの実在チェックを行う(敵HQや補給段列の位置など、そう簡単には分からないの意)。2/3の確率で『実はそのヘクスにはいませんでした』となる。

またBCSv1.2には、BCSの入門記事が付いているが、

このゲームの仕組みは非常にエレガントですが、あなたのこれまでのゲーム体験は、このシステムを学ぶうえで、助けとなるよりも、むしろ妨げとなる場合があります。BCS と出会ったなら、作戦級ウォーゲームをプレイするうえでの知識を、すべてを捨てなければなりません。ジェダイ・マスターの言葉を引用するなら『お前は、今まで学んだことを捨てなくてはならぬ』のです。

という文章から始まるあたり、このシステムの革新性と突飛さを象徴している。

実際、この入門記事で書かれているBCSプレイのコツとして『大きく考える』=『個々のユニットを見るのではなく、フォーメーションとして考える』のは、たしかに大事だと思う。だからこそ、個々の敵ユニットを除去するのではなく、敵フォーメーション全体を壊滅・混乱させることを考えるべきであり、そのために敵HQや補給段列を狙いに行くことも重要なのだが、そこにばかり囚われて強引にプレイするのを抑えるために、選択ルールとして「命令」「実在チェック」が生まれたのかなと。命令ルールは、TCS(Tactical Combat Series)よりずっと簡単な形ながらも、これなら無理なくプレイできるし、特にソロプレイでは役立ちそうだと感じた。

自分も、先月のMMPセールで、ようやくBCS第1弾「Last Blitzkrieg」を注文したので、到着次第、このBCSv1.2+選択ルールで試したいと思う。

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ちなみにBCS第4弾「Panzer's Last Stand」(45年ハンガリー戦)のテストプレイも始まっている。ただしシリーズの番頭さんであるCarl Fungに、最近、お子さんが生まれたので、その育児に忙殺され、開発が遅れるかもしれないが。 

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こちらは、さらに将来発売予定の44年コブラ作戦。大隊レベルでノルマンディ半島突破戦を扱うゲームって(「GOSS:Atlantic Wall」はそれを含むが)、単体では珍しいかも。 

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さらにCarl Fungは、フォリオサイズのミニBCSも検討しているらしい。こちらは、なんと「BCSノモンハン」の地図盤。まあ、これは地図だけ作って終わるかもしれないが、なかなか興味深いテーマである。

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さらにCarl Fungは「BCSクレタ島」の地図も、チラ見せしている。これも実現するんだかどうだか。Carl Fungとしては、1940年フランス戦も検討しているようだが、フランス軍の反撃を扱おうとすると、1日(BCSでは1ターン)で反撃が終わってしまうため、ちょっと難しいのかもしれない。

とは言え、バルジ、チュニジア北アフリカに続いて、ハンガリーコブラ作戦が出れば、かなり魅力的なシリーズになるような気がする。BCSは、それなりに戦車ディティールも盛り込みつつ、プレイアブルな大隊級シリーズなので(GOSSも好きだが難しすぎる)、これからのラインアップに期待したい。

【参考文献】「自衛隊幹部学校戦略教官が教える 米軍式最強の意思決定」

自衛隊幹部学校戦略教官が教える 〈米軍式〉最強の意思決定

自衛隊幹部学校戦略教官が教える 〈米軍式〉最強の意思決定

  • 作者: 中村好寿
  • 出版社/メーカー: パンダ・パブリッシング
  • 発売日: 2018/10/05
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
  • この商品を含むブログを見る
 

先に読んだ「ドイツ電撃戦に学ぶOODAループ超入門」に続き、OODAループのより深い解説書を購入。こちらは、ややビジネス寄りにもなっているが、それでもウォーゲーマーが読むには、良い内容。

ただ、ウォーゲーム内でこのOODAループを実践しようとするのも、なかなか難しい。リデル・ハートが言う「間接アプローチ」や、ルトワックが言う「逆説の活用」を行い、対戦相手を精神的に麻痺させれば、OODAループ的には優位に立てるだろう。でも実際そうなった場合、相手が『あ、もう降参降参。今日はここまでしようよ』と言われてゲームが終わる場合もある。

ゲームシステムとしてOODAループの物理的差異が再現できるのは、やはりBCS(Battalion Combat Series)だと思う。BCSでは、行動力に劣る軍隊が徐々に受け身に回り、相手への対応で手一杯となり、能動的に行動できなくなるプロセスが良く表現されている。もちろん自軍が、必ずしもOODAループを上手く回せる保証も無いけれど、フルに2回活性化できるというチャンスをつかんだ時、いかに上手く行動するかも求められるので、OODAループにご興味のあるウォーゲーマーは、是非BCSに挑戦していただきたい。

またボイドのOODAループについては「エア・パワー 空と宇宙の戦略原論」も参考に。

【参考文献】ヴァルター・ネーリング「ドイツ装甲部隊史」

ドイツ装甲部隊史: 1916-1945

ドイツ装甲部隊史: 1916-1945

 

「ドイツ装甲部隊史」を購入。著者は、ポーランド戦、フランス戦ではグデーリアンの参謀長を務め、バルバロッサ作戦では第18装甲師団長、北アフリカではドイツアフリカ軍団長、さらに東部戦線に舞い戻って第24装甲軍団長、第1装甲軍司令官となり、終戦まで戦ったヴァルター・ネーリング大将。よく歴史ドラマで、主人公が都合良く、ドラマチックな現場にすべて登場する場合があるが、ネーリングの戦歴を見ると、まさにドイツ装甲部隊が戦った主要な戦場を渡り歩いている感がある。彼がいなかったのは、ノルマンディ等の、大戦後期の西部戦線ぐらいじゃ……

【参考文献】「ラスト・オブ・カンプフグルッペ VI」

ラスト・オブ・カンプフグルッペVI

ラスト・オブ・カンプフグルッペVI

 

「ラスト・オブ・カンプフグルッペ VI」を購入。今回の収録記事は、第287アラブ特別連隊や、第950インド歩兵連隊など、手持ちのウォーゲームでも、なかなかお目にかからない部隊ばかり。ノルウェー駐留の第14空軍地上師団、第25戦車師団は、どちらも「TSWW:Hakkaa Päälle」でユニット化されているが、それをプレイする時は来るのだろうか……

【参考文献】「作戦司令部の意思決定」

作戦司令部の意思決定

作戦司令部の意思決定

  • 作者:堂下 哲郎
  • 出版社/メーカー: 並木書房
  • 発売日: 2018/10/05
  • メディア: 単行本
 

海上自衛隊司令部幕僚長、地方総監を歴任された著者による「作戦司令部の意思決定」を購入。著者は海上出身だが、本書では、陸海空統合作戦計画プロセス=JOPP(Joint Operation Planning Process)を詳解している。途中、ウォーゲームの導入にも触れているが、趣味ウォーゲームとはケタ違いなほど、詳細な計画手順が記されている。やはり本職は、それに関わる人間の死も考慮しなければならないため、作戦計画も慎重かつ念入りになると。

この作戦計画プロセスを参考にして、趣味ウォーゲームの作戦を立てたり、作戦経過を判断するのも面白いかもしれない。また、趣味ウォーゲーマーが普段、頭の中で考えていることや、自然とゲーム上で行っていることが、本書の中で成文化されている部分も多々あり、そのあたりも参考になるかなと。