Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】エドワード・ルトワック「戦争にチャンスを与えよ」

戦争にチャンスを与えよ (文春新書)

戦争にチャンスを与えよ (文春新書)

 

2014年に「戦略論」が邦訳された、エドワード・ルトワックの「戦争にチャンスを与えよ」を購入。なかなか扇情的なタイトルだが、それもある意味、ルトワックの芸風だと思うので、まあ良しとしよう。本書は、論文やインタビューをまとめたもので、現在の東アジア情勢を中心に語られているが、冒頭に記された「戦争にチャンスを与えよ」は、ユーゴスラビアやアフリカ等での紛争を題材に、中途半端な停戦介入による、そのデメリットを説いている。つまり、一時的に地域紛争を停戦させても、国家や民族間の憎悪が不完全燃焼のまま残ったり、難民を永続化させてしまうと。「戦争は良くない」という人道主義だけで介入しても、その地域から憎悪を根絶したり、難民を定住化させるプロセスには莫大なコストと時間がかかり、それを引き受けるだけの能力が無いなら、無責任な介入になるという説だ。

以前読んだ「戦略原論」の中にも、紛争に対する人道的介入の章があったが、実際、虐殺などを見過ごすことは国際社会として無責任だが、その後、その国を再建する責任まではあまり議論されてこなかったという話もある。こういったあたりは、あまりウォーゲーマー向きの内容ではないが、現代の国際紛争を見るうえでは、とても重要な要素だと思う。

【Operational Combat Series】「Sicily II」Campaign AAR part.2

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今日は秋葉原イエサブにてFORGER氏主催の「OCS:Sicily II」キャンペーン会、第二回に参加してきた。前回、第2(7月14日)ターンまで進めたユニットを再配置し、第3(7月18日)ターンから再スタート。自分の担当は、前回と同じくシチリア島東部の枢軸軍である。

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第3(7月18日)ターン。先攻は連合軍。イギリス軍はアウグスタ市を包囲しつつ、第23機甲旅団をもってカタニア市へ向けて北上開始。イタリア軍装甲車大隊に攻めかかるも、イタリア軍とは思えぬ精強さ(アクションレーティング最良の5)によって逆奇襲をくらい、2個戦車大隊を失った。枢軸軍は、火力30のイタリア軍砲兵連隊を予備モードにし、連合軍の攻撃を阻止砲撃で鈍らせる構えである。

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第4(7月21日)ターン。先攻は連合軍。イギリス軍がアウグスタ市に攻撃を宣言すると、守備に就いていたイタリア軍3個沿岸ユニットがすべて降伏し、市街は無血占領された……。再び攻めかかってきたイギリス第23機甲旅団への火力30の阻止砲撃も失敗(2D6で4以上なら当たりなのに3が出た)。しかしイギリス軍のダイス目も振るわず、第23機甲旅団は再び攻撃に失敗し、後退した。拙守、拙攻である。

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一方、シチリア島西部では、アメリカ軍がいったん戦線を食い破ったものの、ドイツ軍の反撃によって突破した戦車大隊が孤立する事態が発生。アメリカ軍は別方面でも突破を試みて入念な攻撃を行ったが、そちらの戦果もはかばかしくなかったようだ。

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第4ターン裏の枢軸軍。すでにアウグスタ市を落とした連合軍は、いよいよ本腰を入れてカタニア市へ北上するであろうということで、東部枢軸軍各部隊は整然と後退。さながら戦略的持久を試みた沖縄戦の如くである。一方の西部枢軸軍は「攻撃こそ最大の防御」とばかりに、アメリカ軍戦線の穴を衝こうとしたり、ロケット砲で敵飛行場を砲撃するなど、あの手この手を繰り出していたようだ。

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第5(7月24日)ターン。先攻は連合軍。イギリス軍は3攻撃スタックを準備したが、うち1つはイタリア軍の阻止砲撃によって混乱。それでも44RTR戦車大隊を主力としたスタックが無事、渡河攻撃に成功し、プリマソーレ橋の南に到達した。

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第5ターン裏、枢軸軍は、カタニア市沖合に浮かぶイギリス軍空母フォーミダブルに目をつけた。実は第5ターン表の航空戦で、イギリス軍は哨戒用の戦闘機を使い切っており、空母部隊をカバーする戦闘機は皆無だった。早速、Bf109g戦闘機が空母の直援機に襲いかかり、これを撃退。戦闘機の援護を失った空母めがけてイタリア本土からJu88爆撃機✕4が襲来し、これに混乱。さらに続く突破フェイズでも、イタリア本土から第二波となるJu88+SM84爆撃隊が襲いかかり、2D6振って4以上が出れば空母本体にダメージヒットが出るはずが、ここで振ったダイスが痛恨の2(ピンゾロ)!空母への混乱はこのターンで消えてしまうため、結局散々騒いだ割には何も結果が得られないというていたらくであった……

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ということで今回はこの第5ターンまで進めて終了。次回は第6(7月28日)ターンからの再開だが、すでにイギリス軍はカタニア市に3ヘクスにまで迫っており、戦線の破断界も近いような気がする……

【参考文献】「軍事史とは何か」

軍事史とは何か

軍事史とは何か

 

ドイツでの軍事史学会の講演録をベースとした「軍事史とは何か」を購入。歴史学という中での軍事史のあり方について、複数著者による考察がまとめられている。そもそも歴史学とは何かという専門的教養が無いとついて行けないし、自分にとっても、正直、本書の大半は歯が立たない内容だった。

しかし、戦後ドイツにおける戦争史研究がたどった変遷や、「作戦史」という聞き慣れないものの、非常になじみ深い概念を知れたのはありがたい。なるほど、自分がウォーゲームの参考資料として最近惹かれているのも、本書で言うところの「作戦史」なのだなと、あらためて再認識した。

恐らく、本書でも「作戦史としての軍事史」を書いているデニス・ショウォルターの「クルスクの戦い1943」や、カール・ハインツ・フリーザーの「電撃戦という幻」あたりは、学術的な作戦史なのだろう。まあ、どこからが学術的で、どこからが非学術的なのかという線引きは、単なる歴史ファンの自分には分からないが、これから洋書戦史を選ぶにしても、「作戦史」というワードが、自分の目安になりそうだ。

【Operational Combat Series】「Beyond the Rhine」 A Time for Trumpets AAR

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「OCS:Beyond the Rhine」のバルジ戦シナリオ「A Time for Trumpets」第1(12月15日)ターンは、地表状態:雪、上空:飛行不可という天候でスタート。先攻ドイツ軍は、9SPを獲得し、装甲教導師団、第1SS、第12SS装甲師団を斬り込み役に攻撃開始。後方に控える第2装甲、第2SS装甲、第9SS装甲師団、第3装甲擲弾兵師団は予備モードにして、突破に備えさせた。使用する選択ルールはいつも通り、21.2「ステップに比例した戦闘力」と21.8「空ヘクスへの攻撃」である。

幸先良く、第17ネーヴェルヴェルファー旅団の砲撃でヘクス3408のアメリカ軍分遣連隊が除去され、第12SS装甲師団先鋒スタックは、空になったヘクスを攻撃し、労せずして突破口を啓開した。しかし第1SS装甲師団を支援した第4ネーヴェルヴェルファー旅団の砲撃はスカ。仕方なく第1SS装甲は、そのままアメリカ第14騎兵グループを攻撃し、偵察大隊を失いつつ、マルメディへ迫った。第18、第62国民擲弾兵師団は、アメリカ第106歩兵師団を除去し、第116装甲師団も順調にオウル川を渡っている。

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これに続く突破フェイズで、第9SS装甲師団が、第1SS装甲を追い抜く形で前線へ。再度、第14騎兵グループを攻めるも、除去には至らず。また第12SS装甲師団を追い抜いた第3装甲擲弾兵師団の偵察大隊は、一気に米軍砲兵スタックに肉薄し、AR(アクションレーティング)頼みで攻撃したものの、撃退されている。それでもエルゼンボルン尾根の米軍(レベル1陣地✕3)は、すでに半包囲下に。

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一方、装甲教導師団先鋒は、無事オウル川を渡り、続く第2装甲師団が突破攻撃を仕掛けたものの、単なる分遣連隊相手に逆奇襲をくらい、AL1o1で退却する始末。さらに南では、第212国民擲弾兵師団がエヒテルナッハを奪っている。

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これに対し連合軍は、第1ターン裏、北部からアメリカ第2、第3、第5、第7機甲師団、第1、第30、第84歩兵師団を送り込み、ドイツ軍の封じ込めにかかった。さながら一般的なバルジ戦ゲームでの一週間分の増援が最初の三日で全部到着したような感じだろうか。

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南部からはアメリカ第10機甲師団が来援。バストーニュ正面は、南部から来援する部隊が少なく、北部からの部隊も(移動力的に)間に合わないので、実は手薄である。ドイツ軍が突破に手間取ったせいで命拾いしたかもしれない。

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第2(12月19日)ターン。地表は乾き、天候も晴天。つまり道路事情は良くなったために連合軍増援の足も速くなり、空軍も飛んでくると。そして連合軍が譲る形でドイツ軍先攻。

ドイツ軍は再び9SPを獲得したが、第1ターンに使い過ぎたか、早くも補給が苦しく、全装甲師団を動かして攻撃させる余力が無い。それでも第116装甲師団がサンヴィットを奪取。第9SS装甲師団+第3降下猟兵師団は、第14騎兵グループをようやく除去し、突破モードでさらに前進したものの、すでにマルメディにはアメリカ第3機甲師団が到着しており、(支援砲撃も無い状態での)突破攻撃は断念した。第12SS装甲師団の目前にも、アメリカ第5機甲師団が立ちはだかっている。

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一方、装甲教導師団+第2装甲師団コンビも、バストーニュへ前進しているが、こちらも遅々として進まない。 さらに南では、ルクセンブルグへ向かった第352国民擲弾兵師団の攻撃が失敗。同じく第272国民擲弾兵師団に至っては、アメリカ軍分遣連隊相手に逆奇襲6シフトをくらって2ステップロスというていたらくである。

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第2ターン裏。連合軍は、北から南へ機甲戦闘団による防衛線を張り、その背後に予備モードの砲兵部隊を並べて阻止砲撃の準備も万端……

というあたりで、感触はつかめたので、今回はお開き。まあ、恐らくこのまま続けても、史実のような大突破はかなり難しそうだ。先にも書いたが、連合軍増援のやりくりが史実より自由なため、さっさと余っている部隊をかき集めて、ドイツ軍突破口を塞げば、それで決着が着くような気もする。バストーニュはともかく、マルメディすら落とせないとはドイツ軍として情けないが、特に陰謀ルールの無いOCSでバルジを表現するとこうなるのかと。

いや逆に考えれば、むしろこれは『もし連合軍が手持ちの予備を全部フリーハンドで使えたら?』という稀有なIfシミュレーションになっていると思う。連合軍にしてみれば、ジークフリート線の向こうに隠れているドイツ軍の装甲予備がごっそり、わざわざその防御線から出てきてくれるのだから、むしろ有り難い状況と言えるかもしれない。当時、アルデンヌ攻勢を知ったパットン将軍が『ドイツ軍は肉挽き器の中に頭を突っ込んだようなものだ』と言ったそうだが、確かにそうなのだ、この攻勢を逆に活かせば、ドイツ軍の装甲予備をまるごと撃滅できるのだから。そういった視点でプレイすると、このシナリオも面白いと思う。また挑戦してみよう。

【Operational Combat Series】「Beyond the Rhine」 A Time for Trumpets Set-Up

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「OCS:Beyond the Rhine」のバルジ戦シナリオ「A Time for Trumpets」をセットアップした。本シナリオは、1944年12月15日ターン~1945年1月12日ターンまでの全9ターンを用いてバルジ戦の時期を扱うが、対象範囲は一般的なバルジ戦ゲームよりかなり広く、ドイツ軍の目標都市であるアントワープブリュッセル、メッツ、ヴェルダンまで含まれている。一般的なバルジ戦ゲームであれば、最初から連合軍の増援は固定されているが、本シナリオではバルジ戦区外からいつ、どのように増援を持ってくるかは自由だし、ドイツ軍にしてみれば、北のアーヘン戦区や、南のメッツ戦区で助攻をかけてもいいし、史実とは異なり、南に作戦重点を置いてもいい。再現度より自由度を楽しめそうなシナリオ、という感じだろうか。しかしマップ1枚シナリオとはいえ、地図盤の長辺を戦線が横切っているため、配置ユニットも多いし、密度も高い。セットアップには半日かける気力が必要だ。

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こちらが北部戦線。イギリス軍が最北部に展開しており、地図最北端は、マーケットガーデン作戦でもお馴染み、アイントホーフェンからフェーヘルへ向かう「地獄のハイウェイ」である。つまりこの地域、真っ平らに見えるが、実は運河と沼沢地が入り組んだ厄介な地形であり、ドイツ軍側から助攻を行うのも厳しそうだ。その南ではアーヘン攻略を終えたアメリカ軍歩兵師団群がスクラムを組んで押し出してきている。アメリカ軍戦線が最も厚い地域であり、戦線後方に控えるアメリカ第2・第3・第7機甲師団は、ドイツ軍攻勢への対応に用いられるだろう。

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そしてこちらが中央戦線。一般的バルジ戦ゲームでの範囲である。しかしユニットの配置自体、史実をそのままなぞっているワケではない。ドイツ軍第501SS重戦車大隊は、第1SS装甲師団に組み込まれておらず、軍団直轄部隊として留め置かれ、どこに送り込むかも自由だ。フォン・デア・ハイテの空挺大隊も地上ユニットとして配置されている。前線のアメリカ軍スタックがあちこちで補給ポイントを背負っているのは、孤立してもそれでしばらく生き延びろということか、あるいはドイツ軍がパックマンの如く、その補給ポイントを奪って食べて前進しろということか。

またちょうど地図盤中央にバストーニュが位置しているが、この街が、南北に延びる一級道路と鉄道の交差点になっているため、バストーニュを取れば一応、北のブリュッセルアントワープと、南のヴェルダン、メッツに進めることになっている。そういう意味では、運命的な街なのかもしれない。

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そしてルクセンブルグ、メッツ、ヴェルダンを含む南部戦線。ドイツ軍には、こちらから正面突破できるほどの戦力は無く、もしメッツ、ヴェルダンを狙うなら、やはり中央戦線で突破し、南へ旋回して、連合軍戦線の裏へ回る方がいいのだろうが、果たしてそんな突破が出来るかは微妙……

連合軍としては、36火力砲兵を移動モード(18火力)にして機動防御的に、突破してくるドイツ軍装甲部隊に阻止砲火を浴びせつつ、遅滞活動を行うのが良さそうだ。対するドイツ軍としては、阻止砲撃一発で攻撃が頓挫しないよう、複数スタックにしたうえで、敵砲撃目標を分散させたいが、この入り組んだ地形では、どうしても道路に集まらざるを得ないのが厳しい。

また、ドイツ軍装甲師団の主力は戦車大隊(黄色い装甲)ユニットのため、Heavy Woodsで戦闘力1/2、Major Cityで攻撃力1/3となるが、アメリカ軍機甲師団は複合兵科(赤い機械化)ユニットのため、Heavy Woodsでは戦闘力が落ちず、Major Cityでの防御力も変わらない。つまりアメリカ軍の機甲師団編成の方が、この地域では有利なのだ。かつてのOCS作品では、黄色装甲ユニットが強く、赤色機械化は弱い、という評価だったが、今は赤色機械化ユニットの方が使い勝手が良くなっている。

ドイツ軍は大戦略として、北を狙うか南を狙うかだが、なにしろOCSなので、最初の突破攻撃で逆奇襲をくらい、出オチ的に攻勢が頓挫する場合もある。とりあえず各所で攻撃をかけ、突破できた所から後続を流し込んでいく感じだろうか。それでも一番手近な目標都市リエージュぐらいは取りたいので、やはり向かうは北か……という、おおざっぱなイメージだけ描いてソロプレイしてみようと思う。

A Time for Trumpets: The Untold Story of the Battle of the Bulge (English Edition)

A Time for Trumpets: The Untold Story of the Battle of the Bulge (English Edition)

 

【Operational Combat Series】「Beyond the Rhine」Nordwind AAR

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今日は秋葉原イエローサブマリンにて、FORGER氏主催の「OCS:Beyond the Rhine」に参戦。シナリオは、1945年1月1日に始まったドイツ軍最後の攻勢「Nordwind(ノルトウィンド=北風)」である。今回はFORGER氏が連合軍を担当、自分はノルトウィンド作戦の主攻勢部隊であるG軍集団(主力は第21装甲師団、第10SS装甲師団、第17SS装甲擲弾兵師団、第25装甲擲弾兵師団)を担当、N村氏が助攻部隊であるオーバーライン軍集団(司令官はあのハインリヒ・ヒムラー)を担当した。

ドイツ軍は、ストラスブール(D22.24-23.24)を取ればサドンデス勝利。またはザールブルグ(D28.32)、サヴェルネ(D26.28)、ヘーゲナウ(D27.23)、コルマール(D13.31)のうち2カ所を最終第13ターン(2月12日ターン)まで保持すれば勝利する。積雪のため、道路上でも1移動ポイント消費が必要(本来は1/2消費)。

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まず第1(1月1日)ターン。G軍集団の第21装甲師団・第17SS装甲擲弾兵師団が、旧マジノ要塞線(地図盤上の青い六角の縁取り)に陣取るアメリカ軍部隊へ攻撃開始。アメリカ軍は、予備砲兵で第21装甲に阻止砲火を浴びせ、これを混乱。それでもドイツ軍は、第353火炎放射戦車中隊を斬り込み役にしてアメリカ軍戦線を突き崩し、マジノ線の一角を占拠した。南方のオーバーライン軍集団も、第106装甲旅団で攻撃をかけ、サドンデス勝利都市ストラスブールまで2ヘクスに接近した。

これに対し連合軍は、第1ターン裏・第2(1月5日)ターン表とダブルムーヴを獲得。ストラスブールを守りつつ、さらに南から自由フランス第1機甲師団でオーバーライン軍集団の背後を攻めるも、これをドイツ軍の山岳歩兵大隊1個が食い止める善戦を見せた。

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第2ターン裏、G軍集団はヘーゲナウ目指して第10SS装甲師団でも攻撃開始。また第17SSも、先に奪ったマジノ線ヘクスを足がかりに突破口を広げた。

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さらに第3(1月8日)ターン表、今度はドイツ軍がダブルムーヴを獲得。G軍集団は、第21装甲師団で3つ目のマジノ線ヘクスを奪い、アメリカ軍戦線に大穴を穿ち、予備にしていた第25装甲擲弾兵師団の戦車大隊を突破させた。また阻止砲火に遮られた第10SS装甲に代わって、第6SS山岳歩兵師団も斬り込み、アメリカ軍戦線を両翼から包囲する格好となった。ただし、ここまで3ターンにわたる攻撃によって、G軍集団のSP(補給ポイント)は枯渇寸前である……

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南のオーバーライン軍集団も、ストラスブールを目前にして停止中。もちろん、増援SPを優先的にG軍集団に譲っていただいたせいなのだが、オーバーライン軍集団の輸送手段は馬車1台しか無く、そのあたりも厳しい。そして第3ターン裏の連合軍も補給は厳しいらしく、包囲された戦車大隊が補給切れで除去され、このままではまずいとばかりに戦線を下げてターンを終えた。一応、P51戦闘機の群れが、第10SS装甲に空から襲いかかってきたが、迎撃に出たBf109戦闘機によって追い返されている。

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そして第4(1月12日)ターン表。ドイツ軍先攻。G軍集団としては、もはやSPが枯渇気味だったので、さてどうするかと思案している最中、なんと盤上のスタック下に、忘れていた6SPを発見(セットアップに参加していなかったツケ)! この隠し資金を糧に、第10SS、第21装甲、第17SSが再び息を吹き返し、さらにアメリカ軍戦線に食い込んだものの、目標都市ヘーゲナウにはまだまだ届かず。そして突破口は開いたものの、伸び始めた戦線を埋める部隊がいないというていたらく。逆に連合軍は、第4ターン裏、戦線を縮小して各スタックの厚みを増し、ヘーゲナウを守る構えを見せた。北ではアメリカ第14機甲師団が進出してきたが、これはドイツ軍の予備砲兵がリアクション砲撃で混乱させた。

と、第4ターンを終えた時点で両軍ジリ貧になってきたので、今回はここでお開き。今回ドイツ軍は、低密度スタックをバラまき、敵砲爆撃の焦点を分散することを心がけたが「非隣接or3スタックからの攻撃が成功しても突破は得られない(ルール9.13b)」にあたる場合も生じてしまい、なんともかんとも。それでも「OCS:Beyond the Rhine」の味見はできたので、そのうちバルジ戦シナリオ「A Time for Trumpets」にも挑戦したいところだ。

【Battalion Combat Series】BCS Rules v1.1 First Impression part.3

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WWII大隊作戦級BCSルールv1.1の第一印象・その3。OCS先輩は「13:1で攻撃したはずなのに、逆奇襲をくらった結果3:1になってしまった」という振れ幅の大きい戦闘システムだったが、BCSにそのような戦闘の変動はない。むしろBCSは、第2活性化に成功し、1ターンに4回の攻撃回数を獲得することで、相手へのダメージを倍加させる、という感じだろうか。

やはりBCSで振れ幅が大きいのは、フォーメーションが部隊機能判定(SNAFU)に失敗して、いきなり師団・戦闘団全体が戦闘・移動不能に陥る部分か。さながら「あの師団、昨日まで元気に戦っていたのに、急に倒れるなんて疲れていたのかな……」という過酷な労働環境を彷彿とさせるシステムなので、勤労ウォーゲーマー諸氏は、自身のワークライフ・バランスを考える意味でも、この疲労に主眼を置いたBCSシステムに是非触れていただきたい。

カセリーヌ峠の戦い1943―ロンメル最後の勝利 (オスプレイ・ミリタリー・シリーズ 世界の戦場イラストレイテッド)

カセリーヌ峠の戦い1943―ロンメル最後の勝利 (オスプレイ・ミリタリー・シリーズ 世界の戦場イラストレイテッド)

 

さて面白いと思ったのは、射撃戦(Engagement)の処理だ。多くのウォーゲームでは、射撃と言えば一方的に撃ち、相手へのダメージを判定するが、BCSではお互いに撃ち合った結果を判定する。つまり撃ったのは自分なのに、逆に自分だけが損害を被る……という場合もあるのだ。まして射撃戦を自分から仕掛けると、疲労レベル上昇チェックをしなければならないため、ムダ撃ちは避けたい。もちろん、射程2を持つユニットが2ヘクスの距離から射撃戦を仕掛け、射程1しか持たないユニットからステップロスを被った場合、その損害は無効となる……という、いわゆるアウトレンジ射撃も再現されている。

射撃戦では、ユニットの射撃値(AV)+アクションレーティング(AR)の差分を基にして判定する。これも射撃値+ARが戦闘力になっている感じだ。上のサンプル画像で言うと、ドイツ軍のティーガーI戦車中隊は射撃値4+AR5=基本値9であり、アメリカ軍戦車大隊は射撃値2+AR4=基本値6。その差3。ティーガー中隊が射撃側なら、ダイス2個振って6以上でアメリカ軍戦車大隊の1ステップロス&後退となる。アメリカ軍戦車大隊が射撃側なら、ダイス2個振って9以上で双方ステップロス、運良く12が出ればティーガー中隊がステップロスだ(そしてティーガー中隊は1ステップしかないため全滅し、再建不可なので二度とゲームには帰ってこない)。

また、他のウォーゲームでは、射程内に侵入した敵ユニットに対して、防御側ユニットが臨機射撃を行うが、BCSでは、もしも防御側ユニットの実効射撃ZOC(Real AV ZOC)に入ったなら、侵入したユニット側が射撃戦を仕掛けなければならない。これは停止射撃戦(Stopping Engagement)と呼ばれるが、なるほど、これも仕掛けた方が損害を被る場合があり、実質、臨機射撃としての役目を果たしている。

そのような射撃戦含めた攻撃を、各スタックは行動中に2回まで行える。攻撃回数を2回消費したら、そのスタックは行動完了となるので、2回目の攻撃を移動のどの時点に持ってくるかが鍵だ。行動を開始したヘクスからまったく動かず、2回攻撃してもいいが、それで行動は終わる。あるいは移動→攻撃→移動→攻撃(完了)でもいい。移動→攻撃→攻撃(完了)でもいい。攻撃→移動→攻撃(完了)でもいい。

また各フォーメーションは、あらかじめ攻撃(目標)OBJマーカーを配置し、そのマーカーから2ヘクス以内にしか攻撃できない(射撃戦はマーカー範囲外も可)。この攻撃OBJマーカーは、各師団・戦闘団の索敵能力、情報収集能力、攻撃計画力を表しており、部隊機能判定(SNAFU)に成功すれば、通常通り、各活性化毎に2マーカーを獲得できる。攻撃箇所を2カ所にしてもいいし、2枚のマーカーを重ね置きしてダブル攻撃OBJゾーンを形成すれば、攻撃に有利な修整が付く。しかし部隊機能半減なら攻撃OBJマーカーは1枚しかもらえない(つまり1カ所しか攻撃できないし、ダブル攻撃OBJゾーンは形成できない)。しかし偵察ユニットによる、敵ユニットへの偵察行動(ダイス1個振ってアクションレーティング以下なら成功)に成功すると、追加の攻撃OBJマーカーが配置できる。

さらに戦闘に関する砲爆撃、準備防御、後退のルール、もっと言えば補給まわり……主要補給ルート(MSR)とその遮断や混線(Crossing the Stream)、前線補給部隊(Combat Trains)とその機能不全状態(Ghost Side)等々にも触れたいが、そろそろ書き疲れてきたので、この辺でお開きに。Part.4は、現物として新作「Baptism by Fire」が届いてからということで。

まあ、ルールを読んだだけの第一印象としては、やはりOCSやTCS同様、独創的なシステムながらも未洗練な部分も散見され、ルールがver3.0とかver4.0になる頃には安定するのでは?とも思ってしまう。システムとして完成させずに走り出し、走りながら修理していくという、ある意味、The Gamersブランドの伝統芸を継承しているかもしれない。デザイナーのDean Essigが「このルールは曖昧だけど、あまり理屈っぽく考え過ぎたり、悪用しないでね」とプレイヤーの善意やお作法に委ねているのも、ああ、この人も変わらないなあと思ったり。とは言え、なんだかんだ書きつつも、かなり惹かれているシステムだし、走りながら修理するプロセスにもつき合う気満々なので、今から取り組むのが楽しみだ。