Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Company Scale System】「Montelimar : The Anvil of Fate」Opening Blows : The Faint Solo-Play AAR

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CSS:Montelimar」のシナリオ1「Opening Blows:The Faint」(マップ1枚のみ、4ターン)をソロプレイしてみた。このシナリオ1は、ドイツ第11装甲師団による反撃を扱っているが、登場するのは師団の捜索大隊と空軍高射砲大隊が1個ずつのみである。師団の主隊(と言ってもそちらも装甲擲弾兵1個大隊だが)は、この東隣の地図盤で攻勢をかけており、そちらを扱うのがシナリオ2「Opening Blows:Strike to the East」(マップ1枚のみ)だ。シナリオ1と2を合わせたものがシナリオ3「Opening Blows:11th Panzer Attacks !」(マップ2枚)であり、反攻全体が俯瞰できるようになっている。

このシナリオ1に登場する捜索大隊+空軍大隊は、あくまで陽動(Faint)であり、アメリカ軍Butler任務部隊のユニットを除去するか、300高地(ヘクス1843)を奪うことで勝利条件が得られる。ただし各ターンにイベントチットが引かれた時、東隣にいる師団主隊の状況に変化が生じると、その得点が変わったり、あるいはMontelimarの防備で得点が得られるようになっている。また主隊の状況如何では、両軍に増援が(アメリカ軍の場合、ドイツ軍主隊の反攻を蹴散らして、東隣の地図盤から)登場するので、システム修得向けのシナリオ1にしては、なかなか趣向の凝らされたものになっている。 

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で、とりあえずプレイ開始。まずは先手を取ったアメリカ軍のM8偵察装甲車が、前のめりに前進。同じく前進してきたドイツ軍と四つに組み合ったが、なんと第1ターンのイベントチットで、早くも『東側でドイツ軍主隊の攻撃が成功、こちらの陽動部隊は後退し、Montelimar市を確保するに留まれ』という状況に変更。しかしドイツ軍も、市内に立て籠もるだけではたいした勝利得点は稼げないので、そのまま米軍装甲車隊を攻撃し、このうち1個中隊を撃破。一方のアメリカ軍も、高地に居座っていても得点が得られないため、陣地を放棄してMontelimar市に接近するも、ドイツ軍の連続チット攻勢に撃ちまくられ、2個歩兵中隊を失い、敗北した……

しかしどうもドイツ軍が有利過ぎる。アメリカ軍には、Butler任務部隊チットしかないが、ドイツ軍は、捜索大隊、空軍大隊、第11装甲師団チットを投入していたため、活性化チット的には1:3となってしまう。もしかして、こちらは陽動部隊なのだから師団チットを使ってはいけないのでは?と思い、公式サイトにあるシナリオ1のリプレイを読んでみると、やはり師団チットは投入していない(購入するだけの派兵ポイントはあるのに)。さらに増援部隊の箇所を良く見ると『ドイツ軍増援が登場したら、第11装甲師団チットは購入可能』と書いてあった! これはシナリオの書き方にも問題があって、「最初にカップに入れるチット」は書いてあるのに、「このシナリオで使って良いチット一覧」は書いていないのだ(この二つが異なるのは、GTS/CSSプレイヤー諸氏ならお分かりのはず)。やれやれ、このソロプレイは間違いじゃないかということで、早速、もう一度最初からやり直すことに。

https://s3.us-east-2.amazonaws.com/compassgamesbucket/downloads/AAR-Scenario_1-Montelimar.pdf 

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2回目は、公式リプレイと同様に、ドイツ軍捜索大隊は東寄りの道を、空軍大隊は西寄りの道を北上。やはりアメリカ軍偵察装甲車隊とぶつかった。公式リプレイでのアメリカ軍は、陣地部隊と協調するために後退しているが、今回のソロプレイでは、あえて陣地から離れたまま、抵抗線を維持した。アメリカ軍には、砲兵が2個中隊あり、その支援があれば、ドイツ軍の前進を阻めるのでは?と思ったからである。ドイツ軍にも迫撃砲中隊が2個あるが、対装甲火力は頼りない。 

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第2(1100)ターンには、アメリカ軍の間接砲撃とM8装甲車の射撃で、早くも空軍中隊が1個除去。第3(1300)ターンには、捜索大隊も空軍大隊もM8装甲車に白兵戦を仕掛けたが、わずかな混乱を与えただけで終わっている。最終(1500)ターンには、アメリカ軍の砲撃が先制し、捜索大隊の歩兵中隊を2個とも除去し、ドイツ軍の敗北となった。イベントで状況変化は無かったので、そのまま素でプレイすれば、こういう形になるのだろう。

最初はルールを間違えたが、ルール修得向けのシナリオ1としては、良く出来ているし、浮動的な状況も面白い。増援が出てくれば、展開ももっと派手になるだろう。とは言え、あくまで反攻作戦の陽動部分なので、本筋としてはシナリオ3か。シナリオ3にしても、マップ2枚とは言え、1日(8ターン)のみ、ユニット数もそこそこなので、遊びやすそうだ。とりあえず、次はシナリオ2を味見しつつ、シナリオ3を目指そうと思う。

【参考文献】「戦闘戦史 最前線の戦術と指揮官の決断」

戦闘戦史――最前線の戦術と指揮官の決断

戦闘戦史――最前線の戦術と指揮官の決断

 

かつて「歴史群像」に掲載された、樋口隆晴氏の戦史記事が一冊にまとまったので早速、購入してみた。収録されているのは、日本軍の戦例が中心で、日露戦争での「弓張嶺の夜襲」から「盧溝橋事件」「ノモンハンの金井塚大隊」「島田戦車隊のスリム戦」「ガダルカナル島の一木支隊」「ペリリュー島」「沖縄・シュガーローフヒル戦」「沖縄・嘉数高地戦」等々。いずれも作戦・戦術レベルの細かな戦例が多いので、まさにウォーゲーマー向きな一冊になっている。

我が家にあるウォーゲームの中で、今のところ本書にドンピシャなのは「ASL Journal #2」付録の嘉数高地戦モジュール「Kakazu Ridge」か。これもう20年近く死蔵しているのだが、本書でも解説してあるように、嘉数高地では反斜面陣地が取り入れられており、これを再現するルールも面倒なので、ずっと後回しになっている。いずれASLのヒストリカル・モジュールは、まとめてプレイしたいとは思っているのだが、なかなか……

【Company Scale System】「Montelimar : The Anvil of Fate」

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Compass Gamesに直接プレオーダーしていた、CSS(Company Scale System)第3作「Montelimar:Anvil of Fate」が到着した。ゲームスケールは、シリーズ前作と同様、1ヘクス=500m、1ターン=2時間、1ユニット=中隊である。フルマップ5枚、カウンター総数1056個と、なかなかのボリュームだ。

しかし、今作のテーマはMontelimarの戦い……と告知された時から『どこよそれ???』と思ったのだが、舞台は1944年8月21日~29日の南フランス戦線。ドラグーン作戦(8月15日)をもって南フランスに上陸したアメリカ第6軍団は、急速に内陸に進出し、ドイツ軍の後退路を抑えるべく、Montelimar市の北、Rhone峡谷へButler任務部隊を送り込んだ。これに対してドイツ軍も、第11装甲師団を中心とする部隊で反撃。味方の退路を確保しつつ、連合軍の占領地域から突破するという離れ業を見せたらしい。もちろん、多くのドイツ軍将兵が死傷したり捕らわれ、重装備も放棄されたため、連合軍側も勝利を主張したという、痛み分け的な戦闘だったようだ。

Montelimar Situation Maps

ドラグーン作戦を扱ったウォーゲーム自体が少ないし、Montelimar戦がゲーム化されるのも初めてだろうが、さながら高橋慶史氏の「ラスト・オブ・カンプフグルッペ」の一章を、そのままゲーム化したような内容なので、テーマとして非常に興味深い。一方が退却しつつ反撃し、もう一方は退路を塞ごうとするというシチュエーションも、双方共に攻防が担えるし、ゲームとしても面白く成立するかもしれない。

またCSSは、「Saipan」「Guam」と太平洋戦線モノから始まったが、この「Montelimar」が初のヨーロッパ戦線作品となるし、ようやく同じ土俵で、GTS(Grand Tactical Series)と比較できそうだ。 

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5枚のフルマップは、横長2枚、縦長3枚を連結してこの戦区をカバーしている。さすがマイナー戦線。まったく馴染みが無い……(^_^;) 収録シナリオは、キャンペーン含めて8本だが、1マップシナリオが2本、2マップシナリオが2本あるので、そのあたりなら遊びやすいか。

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先の戦況図を簡単に描き込んでみると、こんな感じか。青の矢印がドイツ軍の退却ルート。緑が連合軍の攻撃ルート。黒がドイツ軍の反撃・突破ルート。 

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こちらが連合軍ユニット。Butler任務部隊の他に、アメリカ第3、第36、第45歩兵師団が登場。Combat Command Sudreと呼ばれる自由フランス軍部隊もあるが、兵科マークは、兄貴分のGTS同様、フランス軍式兵科記号になっている。それから英雄として、後に映画俳優になるオーディ・マーフィーがユニット化されているのも注目か。

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こちらがドイツ軍ユニット。第11装甲師団の他に、第189、第198、第338歩兵師団が登場。よく見ると、列車砲ユニット(射程は無限大)が3個ある。また両軍に(支援マーカーではない)戦車ユニットがあるので、「Saipan」「Guam」では、お目にかかれない戦車ユニット同士の戦闘も発生しそうだ。さらに8.8cm砲ユニットは、対戦車火力と間接砲撃火力の2つを併せ持っている。これが「GTS:The Greatest Day」だと『ノルマンディ戦線では8.8cm砲は対戦車任務にほとんど使われなかった』という解釈の下、間接砲撃能力しか与えられていないユニットもあるが、それとは対照的なレーティングである。

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また、これは「Saipan」「Guam」からの恒例だが、CSS作品のチャート類には、わざわざシワや汚れが印刷されている。戦場の風雨に耐えた感じを出しているのだろうが、最近Consimworldでも『その芸術センス、要る?』とツッコみが入っていた。うん、自分もこれは要らないなあと……

何はともあれ、期待の新作なので、近いうちにソロプレイして感触を確かめる予定。やはり「Saipan」「Guam」といった太平洋モノよりは、意欲が湧くし。

ちなみにCSSのこの先の新作予定は、すでにプレオーダーに上がっている「Tinian」の他には「1943年のNovorossiysk戦」「1985年のFulda峡谷(つまり仮想第三次世界大戦)」が予定され、さらに「1985年のHof峡谷」「1942年のDieppe上陸作戦」「1944年のMortain戦」「1945年の沖縄戦」が企画されているとのこと。個人的には、Novorossiysk、Fulda & Hof、沖縄には期待、Mortainは範囲広くない? Dieppeは期間短くない?と感じているが、実際どうなることやら…… 

【Grand Operational Simulation Series】「Atlantic Wall : D-Day to Falaise」Operation Epsom : The Hill of Death Solo-Play AAR

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先頃購入した「Atlantic Wall : D-Day to Falaise」にようやく着手。とりあえず小規模シナリオから触れてみようと、1944年6月25日~28日のカーン西方でのイギリス軍の攻勢、エプソム作戦を扱う、シナリオ2「Hill of Death」をセットアップしてみた。ちなみに以前「Wacht am Rhein 2012」「Hurtgen:Hell's Forest」をプレイした時と同様、陣地などのマーカーも自作した(イギリス軍用、SS部隊用、空軍野戦部隊用)。どうもGOSS公式の赤・青マーカーは好きになれない……(^_^;)

エプソム作戦自体は、カーン西方に陣取るドイツ第12SS装甲師団に対し、イギリス第8軍団を中心とする、機甲師団1、機甲旅団3、歩兵師団3という大兵力が殴りかかり、Odon川南の要衝112高地(ヘクス3926)を奪い、反撃に出た第9、第10SS装甲師団を撃退するも、イギリス第2軍司令官デンプシー中将の判断ミスにより、わざわざその112高地を明け渡すという大失態で幕を閉じている。シナリオ1「The Whole Front in Flames」(やはりイギリス軍の攻勢、グッドウッド作戦を扱う)も候補に挙がったが、時系列的にはエプソム作戦の方が先なので、まずはこちらからと。

https://decisiongames.com/wpsite/wp-content/uploads/2016/10/AW-v4.0-Sept-2016a.pdf

ちなみにセットアップ情報に間違いが多々あり、Decision Games社サイトに上がっているver4.0ルール(2016年10月バージョン)も確認したが、それでも疑問点がすべて消えなかった。一番不可解だったのは、Carpiquet(3921)に『第12SS装甲師団の第1戦車中隊(IV号戦車装備)を配置しろ』と書いてあるが、第1中隊はV号パンター装備だし、そのユニットはすでに別のヘクスに配置してあるのでどうしろと。仕方なく、他のV号パンター中隊が余っていたのでそれを配置したが、プレイ前から、そういう誤記チェックに時間とエネルギーを使ってしまった…… 

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ということでソロプレイ開始。シナリオ初日6月25日は、イギリス第8軍団は動かず、右翼の第30軍団=第49歩兵師団+第8機甲旅団しか動けない。これだけの大兵力がありながら何やってんだ!と言いたくなるが、総司令官モントゴメリーが『大規模攻撃を仕掛けて失敗したら私の責任になっちゃうし、ここは軽く攻めておいて、うまくいったら私の手柄、失敗したら「いやあれは西にいるアメリカ軍を支援するための牽制攻撃だったんだよ、はっはっは」と言えばいいや』とか思っていたらしい……

そんなモントゴメリーの自尊心はともかく、第49歩兵師団+第8機甲旅団は、Fontenay-le-Pesnel(3122)の陣地に立て籠もる、第12SS装甲師団第26連隊第2大隊を力尽くで粉砕して南下。ドイツ軍戦車隊も、そのしぶとさ(1ステップ面⇨0ステップ面になっても戦える。連合軍戦車には0ステップ面は無い)を発揮して、後方へ下がりつつある。またドイツ軍は、予備の第101SS重戦車大隊(VI号ティーガーI装備)も前線に投入している。 

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シナリオ2日目、6月26日、ようやくイギリス第8軍団が始動。しかしCheux(3423)に立て籠もる第12SS装甲師団第26連隊第3大隊は、午前・午後ターン、2回にわたる、イギリス第15歩兵師団の攻撃を跳ね返した。これによって師団を支援していたイギリス第31機甲旅団(チャーチル戦車装備)が、6個中隊のうち4個中隊を失い、ほぼ壊滅。それでも第15歩兵師団は、Carpiquetに隣接するヘクスまで進出。強引に突破口を押し広げている。

一方、Rauray(3224)に立て籠もるV号パンター+IV号戦車中隊も、イギリス第49歩兵師団の攻撃を撃退。こちらを支援するイギリス第8機甲旅団(シャーマン・ファイアフライ装備)も、9個中隊のうち4個中隊を失った。こちらの戦区には、午後ターンに、ドイツ第2装甲師団のV号パンター1個中隊が来援し、戦線を補強している。

……というところ(2日間、6ターン)まで進めて、今回のソロプレイはお開き。正直、GOSSに触れるのも2年半ぶりで、忘れていることも多く、スムースなソロプレイとはいかなかった。チャートも英文直読みで挑んだが、これも自分で日本語化した方が良いなと思ったり。まあ、今回はGOSSのリハビリなので、ルールを思い出したり、シナリオの雰囲気をつかむだけでも良いかと。GOSS自体、ルールが細かいけれど、ちまちまと戦術要素を積み重ねていくあたり、やはり好みのシステムなので、この購入を機に、またルールを再インストールしていきたいと思う。

【参考文献】マーティン・ファン・クレフェルト「新時代 戦争論」

新時代「戦争論」

新時代「戦争論」

 

日本でも「補給戦」「戦争文化論」「戦争の変遷」等でお馴染みの、マーティン・ファン・クレフェルトの「新時代 戦争論」の訳が出たので購入。『戦争とはなんぞや』というテーマを、孫子クラウゼヴィッツが触れていない領域を指摘しつつ、その穴を埋める形で、現代の戦争を紐解くという内容。先の「戦争の変遷」では、それまでの通常戦争から非正規戦へのシフトを予見し、クラウゼヴィッツ的な通常戦争はもう古いし通用しないと説き、実際それによってアメリカ軍全体も非正規戦仕様に変容してしまった。しかしそれに対してコリン・グレイ等のクラウゼヴィッツ学派から反論も出ていたので、本書にはそれに対する回答という面もあるのかもしれない。

本書では、サイバー戦争、宇宙戦争といった空間的な拡大による戦争の変化にも触れているが、21世紀を扱うウォーゲームでも、こういった要素は次第に取り入れられている。ただ、技術的な革新スピードが早まっているので、今現在を扱うウォーゲームであれば、日々のアップデートも必要なのだろうなとは思った。

たとえば、911以後の対テロ戦争を扱ったGMT「Labyrinth」も、比較的新しいゲームだが、拡張セットを追加することで、より最近の要素も取り入れている。もちろん基本的に抽象的なゲームなので、ゲーム自体が変わるほどの変化ではないかもしれないが(追加セットは、いまだに触れていない)

また仮想・第二次朝鮮戦争を扱う「Next War:Korea」も、旧版の「Crisis:Korea 1995」からアップデートされているが、あくまでも第二次大戦型の戦争として表現されているので、やはり追加サプリメントで、サイバー戦要素が追加されているそうだ。ただ「Next War」シリーズの場合、元々のシステムが詳細かつ重たいので、後からルールを追加すると、どんどんプレイしづらくなるのでは?と感じている。そのあたり、サイバー戦なり宇宙戦なりを、もう少しシンプルに統合した形で、21世紀の戦争を再現するシリーズシステムがあっても良いかもしれない。「レッド・ドラゴンライジング」も、そうではないような気がするしなあ……

【Grand Operational Simulation Series】「Atlantic Wall : D-Day to Falaise」+ Errata Counters

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前々から買おうと思っていた、GOSS第3弾「Atlantic Wall : D-Day to Falaise」(2014年発売)を、遂に購入してしまった。先月のみ、Decision Gamesで40ドル引きセールだったので、この機会に買ってしまおうと。まあ、送料を含めると、結局3万円近くになったので、国内ショップで買うのと大差無くなってしまったが、こういったビッグゲームを買う時は、タイミングも必要なので。

かつてSPIでも同名の「Atlantic Wall」が発売されていたが、SPI版がノルマンディ半島の制圧までを扱っていたのに対し、このDG/GOSS版では、地図範囲と時期を拡大し、1944年6月6日~8月23日までの、ノルマンディ半島の突破、ファレーズ包囲戦まで扱っている。ちなみにGOSS前作である「Wacht am Rhein 2012」「Hurtgen:Hell's Forest」と同じく、3ターン=1日というスケールなので、フルキャンペーンの場合、236ターンかかる。価格、コンポーネント量、ゲーム期間、ルール難易度……どれをとっても、自分が今までに買ったウォーゲームの中でもビッグ3に入る大作だ。 

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地図盤は、合計6枚+拡張部分。さらに図表類も広げる必要があるので、フルキャンペーンをやるとしたら、六畳間では無理。幸い、地図盤1枚で収まるシナリオが3本(グッドウッド作戦、エプソム作戦、シェルブール攻略戦)あるので、それなら我が家のテーブルでも何とかなる。北端のシェルブール地図盤を省いた中間シナリオ2本(コブラ作戦、カーン戦)もスペース的には厳しいが、一応、アメリカ軍戦区のみ、イギリス軍戦区のみの分割シナリオもあるので、実質シナリオ数は+6本。とは言え、できれば地図盤1枚でトータライズ作戦とかモルタン戦、ファレーズ戦のシナリオも欲しかったが、贅沢は言うまい。VASSALモジュールも提供されてるので、それを活用するしか。

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SPI版では、連合軍の進撃をわざと遅らせるためか、カーン北方に実際には無いボカージュ地形を描き込んでいたが、DG/GOSS版では平坦な地形になっている。ただし平地に見えても、眺望点(Vantage Point)という防御側に有利な地形だし、カーン北方には、その眺望点が散在し、激戦地112高地は、マーク2個付きの高眺望点になっているので、史実同様、両軍の争奪地になるかも?

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こちらは、上陸ディスプレイ。SPI版と比べると、だいぶ簡略化されているし、SPI版では海軍艦艇もユニット化されていたが、DG/GOSS版では戦艦・巡洋艦駆逐艦別に艦砲射撃ポイントとして省略されている。自分は基本、陸戦ゲーマーなので、あまり海軍艦艇には思い入れは無いし、それでも良いかなと。実際、艦艇を用いた上陸戦をプレイしたいなら「GTS:The Greatest Day」をやれば良いと。

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こちらは、選択ルールの地図盤外移動ディスプレイ。ドイツ軍は、このディスプレイ上で増援を移動させ、盤内に部隊を送り込む。連合軍は、ドイツ軍の移動を航空阻止しつつ、盤外突破した部隊も動かし、ディスプレイ上でも戦闘が発生するそうだ。さすがにこれはやり過ぎだが、もしもフルキャンペーンをやるなら使ってみたい気もする……いや無理か……

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シリーズ前作で白黒だった戦闘結果表は、カラー化された。たしかに見やすくなっている。 

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カウンターシートは、全16枚。カウンター総数は、4480個。自分が購入したウォーゲームの中では、カウンター総数第1位だ。おめでとう(何が

戦闘ユニットは、GOSS前作と同様、1ユニット=大隊を基本とし、中隊にも分割可能になっている。同じ車種・兵種でも、部隊毎にレーティング(能力格付け)が微妙に違っているので、ユニットを眺めるだけでも楽しい。ただ、より詳細な「GTS:The Greatest Day」に比べると、その戦闘評価は甘めだ。たとえばイギリス海兵コマンドは、本作では一律、最高練度になっているが、GTSでは、実戦経験が無く、かつ実戦で活躍しなかったコマンド部隊は低評価に抑えてある。

ちなみに「If(もしも)増援」として、史実のノルマンディ戦には参加しなかった、ドイツ軍グロス・ドイッチュラント師団 、イギリス第1空挺師団、ポーランド空挺旅団のユニットもあり。

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よく見ると、カウンターシートの枠(ランナー)部分が、アメリカ軍・イギリス軍の境界線を示すバーになっている。間違って捨てないこと! 

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そしてこちらがエラッタ・カウンターシート。実は、Decision Gamesに直接オーダーしたのは、こちらのシートが欲しかったせいもある。しかし注文と同時にエラッタも送ってくれるよう頼んだのに、ゲーム本体は2週間前に到着、エラッタは本日到着。まあ、これでコンポーネントはすべて揃ったことになる。ちなみにこのエラッタ・カウンターの中にもエラッタがある。第12SS装甲師団の捜索大隊の分割ユニット、「12SS」という師団名の字の色が、17SS装甲擲弾兵師団の色になっている(本来の12SS師団名は、地がオレンジで字は黒)。惜しいね。

とにかく発売当初から欲しかった大作を手に入れたのだから、いずれじっくりプレイしたい。ただしGOSSの基本ルールが「Wacht am Rhein 2012」とは若干異なっているため(特に師団の疲労ルールの変更は影響が大きい)、その差分チェックも必要となる。また来年発売予定のGOSS第4弾「Lucky Forward」(パットン第3軍のロレーヌ戦)に向けて、Consimworld等でルールの改訂・明確化も進んでいるようなので、そのあたりもどうなるか。まあ、焦らずじっくり取り組もうと思う。

このシミュ2015年版.pdf - Google ドライブ

また「このシミュゲがすごい!2015年版」には、YSGA会長・山内克介氏による本作の紹介記事が掲載されている。「このシミュ2015」は、ネット上で無料公開されているので、こちらの記事も是非是非。 

ノルマンディー上陸作戦1944(上)

ノルマンディー上陸作戦1944(上)

 
ノルマンディー上陸作戦1944(下)

ノルマンディー上陸作戦1944(下)

 

【参考文献】コリン・グレイ「戦略の未来」

戦略の未来

戦略の未来

 

「現代の戦略」「戦略の格言」でも知られるコリン・グレイ教授の「戦略の未来」を購入。 戦略には、時代や場所を選ばない「本質(Nature)」があるとして、それを一般理論化しようとする試み。たしかに根本的な戦略の仕組みについては、ああなるほどと思う一方で、核兵器という超越的な要素の扱いにくさも納得した。試みとしては興味深いが、核兵器込みで、戦略を一般理論化するのは難しそうだなと……