Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Grand Tactical Series】「Operation Mercury:The Invasion of Crete」

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プレオーダーしていたMMP社の新作、GTS(Grand Tactical Series)第5作「Operation Mercury」が到着。お題は1941年5月の、ドイツ軍によるクレタ島侵攻作戦=メルクール作戦である。

これまでGTSのシリーズ・デザイナーは、Adam Starkweatherが務めてきたが、どうやらMMP社とケンカ別れしたらしく、シリーズ開発から脱退。シリーズ・デザイナーを失ったGTSの存続が危ぶまれたが、Joseph Chaconがデザイナーに名乗りを上げ、無事に本作が発売された。Chacon氏は、すでに先日のConsim Expoで、新作「GTS:Race to the Bastogne(1944年12月のバルジ戦・バストーニュ周辺の戦闘)」や「GTS:The Greatest Days:Utah Beach(1944年6月のノルマンディ上陸作戦・ユタ海岸編)」のテストプレイも披露しており、今後の展開も楽しみだ。

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そのChacon氏による「Operation Mercury」のゲームスケールは、1ヘクス=500m、1ターン=2時間とGTSの標準スケールである。地図盤は、フルマップ5枚+ミニマップ2枚(+さらにシナリオ用ハーフマップ2枚)だが、横長のクレタ島の3カ所で行われた侵攻を網羅するため、地図盤をすべて繋げるのではなく、フル3枚+ミニ2枚、フル1枚、フル1枚と、3つの地域に分けられている。詳しくは以下リンク。

「GTS Operation Mercury Map Layout」

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3地域間を繋ぐ、盤外移動ディスプレイもあり。

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カウンターシートは全8枚、カウンター総数約1400個(プレオーダー発送分の中にはカウンターシートNo.4が入っておらず、No.1が2枚入っているモノがあるそうなので注意)。侵攻するドイツ軍として、第7航空師団(この当時はまだ降下猟兵という名前ではなかった)と第5山岳師団が登場。第7航空は練度7のユニットが多く精鋭師団という感じだが、第5山岳もなかなか頼もしそうだ。もっとも装甲車両はまったく無い……と思ったら、第5山岳師団に1個だけII号戦車半個中隊があった。これ、空輸したのか?

基本ルールは、GTSv2.0にエラッタ等を修正したGTSv2.0bが適用されている。「GTS:The Greatest Days」にもあった空挺部隊の集結地点、海軍チット等も見受けられる。

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こちらが連合軍。第2ニュージーランド師団とクレフォースと呼ばれる混成守備部隊に分けられている。水色の兵科シンボルはギリシア軍ユニットだが、練度が1とか2とか、ほぼ最低レベルである。むしろギリシア警察部隊の方が練度が高い。まあダメな国ってそういうものか。連合軍にはマチルダMk.IIA戦車ユニットもあるが、その火力種別は「対戦車」である。ドイツ軍には(II号以外)戦車など無いのに!

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シナリオは、キャンペーン含めて13本収録。その半分以上がフルマップ1枚程度に収まっているので、サイズ的には遊びやすそうだ。特別ルールも多くないので、さっさと翻訳して遊んでみようと思う。

ただ、すでに「GTS:The Greatest Days」で派手な戦車戦を経験した身なので、ほぼ歩兵オンリーの戦いである本作は、やや地味に思えてしまう。そのあたり含めて、本作でなければ感じられない魅力があるかどうかも確かめたい。もちろん自分的には、GTSのスケールもシステムもグラフィックも、すべてのシミュレーション・ウォーゲームの中でベストオブベストなので、結局は楽しめてしまうのだろう。地味とは思いながらも、2017年My Bestウォーゲーム第一候補である。そして早くもエラッタが公開中⇩

CSW Forum - Operation Mercury: The Invasion of Crete (MMP) GTS 2.0

Crete 1941: Germany's lightning airborne assault (Campaign)

Crete 1941: Germany's lightning airborne assault (Campaign)

 
Crete: The Battle And The Resistance (History and Warfare)

Crete: The Battle And The Resistance (History and Warfare)

 

【Operational Combat Series】「Sicily II」Campaign AAR part.3

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今日は秋葉原イエサブにてFORGER氏主催の「OCS:Sicily II」キャンペーン会、第三回。第6(7月28日)ターンからの再開である。自分の担当は、引き続きシチリア島東部の枢軸軍。前回の終わりに「戦線の破断界も近いような気がする」と書いたが、まさに今回はその破断界を味わう展開となった。

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第6(7月28日)ターンの先攻は連合軍。すでにイギリス軍は、正攻法でゴリ押しできるだけの戦力を前線に積み上げ、カタニアへ北上開始。内陸部で、イギリス第1空挺師団を先鋒とした渡河攻撃を成功させた。ただしイギリス軍も、部隊はあるが補給ポイントがまだ少ないため、大規模な攻撃1カ所だけに留め、じりじりとした進撃である。一方、空では、引き続き連合軍が積極的な制空作戦を展開しており、枢軸軍の戦闘機はあちこちでその戦力を削られていった。

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この内陸部におけるイギリス軍の前進によって、枢軸軍東部・西部の間にクサビが打ち込まれかけた。実は、エトナ山の西からシチリア島北岸へと続く道路はがら空き状態で、そこを突破されると枢軸軍が完全に分断される危機が生じたため、枢軸軍は全体的に後退開始。とは言え、戦線を埋めきれるほどのユニット数も無く、少数のユニットをバラ撒き、結局は各個撃破されるであろう手しか取れなかった。

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アメリカ軍と相対する西部枢軸軍(N村氏指揮)も、ここまで「攻撃は最大の防御」とばかりに果敢な反撃を試みていたが、そろそろシチリア島東北部への撤退を検討する段階に。(西部枢軸軍の戦況についてはN村氏Blogをどうぞ)

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第7(7月31日)ターンも、先攻は連合軍。このターン、イギリス軍は再び内陸部でのゴリ押し的攻撃で突破を得て、続く突破攻撃でも枢軸軍ユニットを除去し、カタニア平原をほぼ制圧する勢いを見せた。写真で見るとわずか2~3ヘクスの前進だが、もはやカタニア平原は放棄するしかなく、全戦線を大きく下げないとまずい。一応、枢軸軍砲兵部隊は、リアクション砲撃で連合軍攻撃スタックに混乱(DG)を与えているが、すでに連合軍攻撃スタックの数の方が多く、対処しきれない状況だ。

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仕方なく第7ターン裏も、枢軸軍は後退。エトナ山西部にイタリア軍司令部を移設し、山岳突破に備えている……というあたりで今回はお開き。一応まだ、東部枢軸軍の前線は精強(アクションレーティング5)なドイツ第1降下猟兵師団が固めているが、これとて各ヘクスに1戦闘団(大隊規模)がいる程度。しかも再建不可のため、いったん除去されるともうゲームには復帰できない。つまり第1降下猟兵師団が壊滅すれば、その穴を埋める部隊はもう無いのだ。恐らく次の第8ターンから、その降下猟兵ユニットたちがひとつずつ揉み潰されていくのではないだろうか。

史実では、先にアメリカ軍が突破を果たしてメッシナへ到達したが、今回のプレイでは、イギリス軍がそのまま力押しでメッシナへ先乗りするかもしれない……という予感を抱きつつ、また次回へ。

※イギリス軍担当FORGER氏のBlog⇩

【Battalion Combat Series】「Baptism by Fire」Between a Rock and a Hard Place Solo-Play AAR

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「Baptism by Fire」の「Between a Rock and a Hard Place」シナリオをソロプレイしてみた。先日プレイした「Operation Spring Wind」シナリオは、戦役序盤を扱っていたが、このシナリオは枢軸軍がKasserineを落とした後、戦略目標をTebessaかLa Kefに決定して進撃するという、戦役後半を扱うものである。こちらもマップ1枚のみなので、プレイしやすそうだ。

シナリオ開始時、撃退されたアメリカ軍第1機甲師団は戦線後方に下がり、Kasserine北の峠はTF Starkと地雷原によって固められている。さらに西の山中には(連合軍に降伏して味方になった)フランス軍部隊が陣取っており、TebessaとLa Kefへ向かうルートを塞いでいる。攻める枢軸軍は盤上にDAKしかいないが、後々、南と東から増援部隊が繰り出してくる予定だ。

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最初の2月19日ターン、晴天。枢軸軍が戦略目標チットをランダムに引いた結果、目指す目的地はTebessa(つまり北ではなく西へと突破する)と決まった。とりあえずDAKがKasserine北の峠を塞ぐ地雷原へ進入。一方、疲弊した連合軍は、疲労レベルの回復に入った。また地図盤北からは、イギリス軍NickForceなる部隊が登場し、La Kefへ向かう道の守備に就いたが、彼らの出番は無かった……

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2月20日ターン、晴天。地雷原を啓開したDAKが、TF Starkへの攻撃を開始。南からはイタリア軍センタウロ戦車師団が、東からはKG Reim、KG Gerhdtが登場したが、本格的な攻撃発起は翌2月21日ターンから。また連合軍にも増援として、アメリカ第1歩兵師団が登場している。

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2月21日ターン。枢軸軍の本格的攻撃が始まるという日に雨天=良くても部隊機能半減まで=攻撃OBJマーカーが1枚までしかもらえない=各フォーメーションは1カ所しか攻撃できないし有利な修整も得られない。それでもDAKは、TF Stark(準備防御中のため後退しにくい)を執拗に攻め、Kasserine北の峠にぎりぎりと食い込んでいく。後方には増援のKG Langも到着。

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西では、センタウロ戦車師団がアメリカ軍第1レンジャー大隊が籠もる山道を攻撃。イタリア軍XIV戦車大隊の射撃が冴え、この後、レンジャー大隊は全滅する。

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2月22日ターン、晴天。ようやく役者=フォーメーションも揃い、枢軸軍の本格攻撃開始である。しかし先んじてTF Starkが、アメリカ第9歩兵師団砲兵隊の支援を受け、阻止弾幕を展開。この砲撃により、DAKは戦力半減していた歩兵大隊1を失い、戦車大隊にも損失が出る始末。怒りに燃えたDAKはこの後、TF Stark司令部に殴り込み、これを大きく後退させ、峠に突破口を開いた。

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DAKに続けとばかりにKG GerhdtとKG Langが峠を突破して西進。KG Reimは、イギリス軍を牽制するように北進。それでもなおTF Starkの3/39歩兵大隊が頑強に抵抗し、その後方には回復したアメリカ第1機甲師団CCCとCCB、アメリカ第1歩兵師団が展開している。

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西では、アメリカ第1機甲師団CCAも息を吹き返し、山道を攻め上るイタリアXIV戦車大隊を3/1戦車大隊が攻撃し、これを追い返した。東側の山道を攻めるイタリア軍スタックに対しては阻止砲撃を喰らわせ、ステップを削っている。

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そして最終2月23日ターン。枢軸軍は、TF Starkの残敵掃討に手間取り、シナリオ終了時の最大進出線はここまで。すでに幾つかのフォーメーションは疲労レベル2に達しており、第2活性化に至れないものが多かった。西のセンタウロ師団も、たいした前進は出来ていない。連合軍も戦力的にはボロボロだが、どこにでも配属できる第9師団砲兵の便利さがありがたかった。

先の「Operation Spring Wind」シナリオより登場ユニットは多いが、こちらも馴れれば、午前中から始めて夕方には完遂できるサイズだと思う。枢軸軍がどこを戦略目標としているのか、連合軍プレイヤーには分からないため、競技用シナリオとしても面白いし、二度三度プレイしたくなるのは、こちらのシナリオかもしれない。

【1979 China Vietnam War / Company Tactics System】「The Battle of South Caobang 高平南之戦」軽取広淵 Solo-Play AAR

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「The Battle of South Caobang 高平南之戦」を早速ソロプレイ開始。まずはシナリオ1「納隆保衛戦」を配置したが、山岳地帯の小道(機械化移動が不可)を、どうやって中国軍司令部(機械化移動ユニット)が前進すればいいか分からず、いったん撤収。多分、正解はルール11.4.2「機械化能力を喪失」させ、徒歩移動に切り替えて前進する、だと思う。

次にシナリオ2「東渓奇襲」を配置したが、中国軍の指揮ポイントが少なく、どうやって攻めればいいか分からず、これまた撤収。続くシナリオ3「弄梅果崗大道」は、地図盤2枚を使うため、面倒になり断念。ようやくシナリオ4「軽取広淵」なら無難に動かせそうだと気づき、このシナリオを進めてみた。

シナリオ設定は、中国軍第162歩兵師団第485連隊が、街道上に点在するベトナム軍保安中隊の陣地を攻撃しつつ、広淵なる目標市街へ進撃するというもの。第485連隊としては、隷下の2個歩兵大隊と支援砲兵を指揮範囲に収めつつ、途中で攻略ルートを分岐させるという、基本的な連隊運用を学べるシナリオになっている。ベトナム軍側は、ほとんどが陣地に籠もっているため、特にやることは無いような気が……

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シナリオは全11ターンだが、単純に中国軍の1フォーメーションが進撃するだけなので、さくさくと進んだ。中国軍は、突撃モード+攻堅戦で保安中隊陣地を奪い、次のターンは機動モードで次の陣地へ接近、そしてまた突撃モードで攻堅戦、の繰り返し。遭遇戦は後退結果が多く、陣地は後退結果を無視できるため、今回は攻堅戦のみで攻めてみた。一応、保安中隊が籠もる陣地は難なく潰せたが、いざ広淵近辺に陣取るベトナム正規軍相手となると勝手が違い、中国軍側は何度か敗退し、結局、広淵ヘクスの奪取には至らなかった。基本的なユニットの動かし方を学ぶには、妥当なシナリオだが、中国軍が一方的に攻める展開なので、もう少し(競技的に)面白いシナリオも探してみたい。

また、全般的にルールの書き方が曖昧なのは難点。今回の場合だと「敵ZOCに進入したら停止しなければならないのか、それとも停止しなくてもいいのか」「HQの指揮範囲は敵ユニットや地形の影響を被るのか」「攻撃力を半減する場合、小数点以下は切り捨てるのか切り上げるのか」といった辺りが不明のままプレイした。恐らく他にも疑問点が出てくると思うが、そういった曖昧な部分をデザイナー側で明確化してもらえれば、ありがたし。

【参考文献】「戦術の本質」

茶店でお茶する間、何かささっと読める本はないかなと探して「戦術の本質」を購入。ものすごく簡単に書いてあるけれど、実はアメリカ陸軍の旅団戦闘チーム(BCT)のMDMP(軍事意思決定プロセス)がきちんと解説されていて驚いた。同著者の「戦術学入門」ではよく分からなかった人も、こちらから入った方が良いかもしれない。 

【1979 China Vietnam War / Company Tactics System】「The Battle of South Caobang 高平南之戦」

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5/14(日)の東京ゲームマーケット2017にて、中国のウォーゲーム・メーカー、Kuro Neko Design Workshopの中越戦争シリーズ「The Battle of South Caobang 高平南之戦」(日本語ルール付属)を購入。 本作は、1979年2月に始まった中越戦争を戦術作戦級スケール(1ヘクス=1.6km、1ユニット=中隊~小隊、1昼間ターン=4時間、1夜間ターン=8時間、5ターン=1日)で再現するシリーズの第一弾である。

スケール的には自分の好みど真ん中だったものの、ゲームシステムが分からず、ゲームマーケット当日に現地で買うかどうか判断しようと思っていたが、実際に現地で日本語ルールを読ませていただいたところ、まるで簡易GOSS(Grand Operational Simulation Series)のような造りだったので、思わず購入してしまった。もう新規シリーズには手をつけないつもりだったのだが……(^_^;)

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地図盤は、フルマップ2枚。A4サイズのミニシナリオマップ(両面)も入っている。舞台は、中越国境の高平市南部だが、さすがにまったく馴染みが無い。ただ、戦術作戦級らしく、詳細な地形が描かれた地図盤は美麗で、雰囲気は素晴らしい。

CTS(Company Tactical System)と銘打たれたシステムは、両軍がお互いにフォーメーション(連隊や大隊)を交互にひとつずつ活性化し、移動・戦闘を行うもの。ただし各ターン開始時に、両軍は各フォーメーションのモード(行軍・機動・突撃・命令無し)を秘密裏に決定する。行軍モードなら徒歩8/機械化18/高速機械化24移動力が使えるが、敵ユニットには隣接できない。機動モードなら4/9/12移動力で敵ユニットに隣接可。突撃モードなら1/2/3移動力しか使えないが、攻撃に有利なコラムシフトが得られる。

モードを選択するには、HQ(司令部)が持つ指揮ポイントを消費する必要がある。昼間ターンなら行軍1/機動2/突撃3、夜間ターンなら行軍2/機動3/突撃4指揮ポイントを消費しなければならない。しかし連隊や大隊司令部は、1~3指揮ポイントしか持っておらず、毎ターン突撃を仕掛けるなら、上級師団司令部や前線司令部から指揮ポイントを借りて支払えばいい。この指揮ポイントは、蓄積することも可能だが、それを表すカウンターやトラックは無い。これは、コンポーネント的にかなり頑張っている本作の中でも、ちょっと残念な部分か。

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こちらが中国軍ユニット。戦闘ユニットのレーティングは、攻撃力・質・防御力。砲兵には射程もあり、フォーメーションの活性化前には事前砲撃も行える。中国軍の場合、実際の中越戦争で76.2mm砲と85mm砲を直接水平射撃で用いたそうで、特別ルールとして、その2種類の砲兵を敵ユニットに隣接した状態で歩兵戦闘に付随させると有利なダイス修正が得られる。また中国軍戦車ユニットは、移動途中に浸透攻撃(オーバーラン)が可能で、1移動力を消費する毎に「遭遇戦」が行える。

戦闘には、遭遇戦と攻堅戦がある。双方1ユニット同士で射撃し合うような遭遇戦は戦力差式CRT(戦闘結果表)を用い、双方全ユニットを用いる攻堅戦は戦闘比式CRTを用いる。遭遇戦は、攻防両者がダイスを振り合って結果を適用し、攻堅戦は、攻撃側だけがダイスを振って結果を適用する。戦闘結果が後退になりがちなのが遭遇戦、ステップロスが多くなりがちなのが攻堅戦だろうか。

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こちらがベトナム軍ユニット。標準的なベトナム軍歩兵中隊は攻撃力6・防御力7、一方の中国軍歩兵中隊ユニットは攻撃力5・防御力6。あまり大差無いようにも見えるが、ベトナム軍歩兵中隊は中国軍歩兵中隊に対し、戦闘比1:1(攻撃力6:防御力6)が立つ。逆に中国軍歩兵中隊は、2個スタックしても攻撃力7.5(先導ユニットだけが攻撃力を100%使用でき、それ以外のユニットは攻撃力50%となる)、3個スタックしても攻撃力10(先導ユニットの攻撃力5+その他の攻撃力2.5+2.5)にしかならず、防御力7のベトナム軍歩兵中隊に対して戦闘比1.5:1に届かず、戦闘比1:1止まりであり、意外と質の差が表現されているようだ。また各フォーメーションは、一定のステップ数まで減少すると崩壊し、機動や突撃モードになりにくくなるが、ベトナム軍の中には、最後の1ステップになっても崩壊しないという頑強な大隊もあり、そのあたりでも質の差が表されている。

民兵ユニットは、5ターンに1度の夜間ターンに現れ、0~3攻撃力を設定し、地図盤上に裏返して(攻撃力を秘匿して)配置する。民兵は移動不可だが、たとえ0戦力でも、それが確認されないうちは中国軍の補給線を遮断できる。警察官や退役軍人で組織されたベトナム公安中隊は、指揮範囲の制限を受けないというボーナス付き。

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中国語版ルールブックには詳細なヒストリカルノートも付いているが、あいにく日本語化はされていない。一応、付録の中越戦争写真集を眺めてみると、この地域の地形の険しさが伝わってくるし、実際ゲーム上でも、機械化ユニットは道路や平地・灌木ヘクスしか通れず、難儀をしそうだ。シナリオは10本収録され、A4ミニマップで収まるシナリオもあるので、まずは小規模シナリオから試してみたい。

⇩Kuro Neko Design Workshop 公式掲示板(メーカーサイトがまだ無い)

Kuro Neko Design Workshop 「Red Dragon Storm 赤龍風暴」

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5/14(日)の東京ゲームマーケット2017にて、中国のウォーゲーム・メーカー、Kuro Neko Design Workshopの「Red Dragon Storm 赤龍暴風」(日本語ルール付属)を購入。本作は、1979年2月から始まった中越戦争(中国vsベトナム)全般を再現したゲームである。この中越戦争は、親中国のカンボジア(ポル・ポト政権)にベトナムが侵攻し、親ベトナムヘン・サムリン政権を樹立したあたりに端を発する。このベトナムの拡大路線を牽制すべく、中国がベトナム領へ侵攻。首都ハノイ近くまで攻め込み、ベトナム側は急ぎカンボジアに派遣していた兵力を引き抜いてハノイ周辺に展開したところで、中国側も戦略目標を達成したと見なして退却……という顛末のようだ。

この大ざっぱな展開だけ見れば、中国側の戦略的勝利にも思えるが、どうやら侵攻過程で中国軍が負った損害も大きかったらしい。なにしろ中国側はまだ近代化が進んでおらず、軍事組織としても脆弱な部分があった一方、ベトナム側は2度のインドシナ戦争でフランス、アメリカを敵に回して勝利した経験を持つ民兵たちを招集してゲリラ戦で応じるなど、かなりの抵抗を見せたと言われている。

この中越戦争を、本作ではエリア式+カード併用の、いわゆる「Storm Over」システムで再現している。1ターン=2日。1ユニットは連隊/旅団~大隊。中国軍昆明軍区プレイヤーと廣州軍区プレイヤーに分けて、3人でプレイできるようにもなっている。また用意されている戦術カードは、昆明軍区10枚、廣州軍区16枚、ベトナム軍9枚。廣州軍区の方が主攻部隊らしく、「軍団重砲」カードが多く、「広正面(攻勢)」カードは廣州軍区にしかない。

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廣州軍区の焦点のひとつである高平(Caobang)市と周辺エリア。この地域のみを作戦戦術級レベルで再現した、同じくKuro Neko Design Workshopの「The Battle of South Caobang 高平南之戦」も購入したが、その紹介はまた別記事にて。

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両軍ユニットのレーティング(攻撃力・防御力・移動力)を見る限り、双方に大きな差は見られない。

シナリオは、第8ターンまでに中国軍が指定された4エリアを支配していれば、そこから「目標ハノイ」シナリオへ進み、中国軍は第14ターンまでに、さらなる戦果獲得を目指す。しかし中国軍が4エリアを取れていなければ、「家に帰る道」シナリオへ進み、全中国軍ユニットが第14ターンまでに登場ボックスへ戻ることが目標となる。

プレイすれば、中越戦争全体を俯瞰できるようだが、個人的には「The Battle of South Caobang 高平南之戦」の方に興味があるので、まずはそちらから手を付けたいと思っている。

⇩Kuro Neko Design Workshop 公式掲示板(メーカーサイトがまだ無い)