Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】「撤退戦 戦史に学ぶ決断の時期と方策」

ようやくお盆前の仕事も終わり、ホッと一息。仕事終わりに丸の内の丸善に寄ったら、ちょうど新刊「撤退戦 戦史に学ぶ決断の時期と方策」が出ていたので、ぱらぱらと眺めて購入決定。内容は、第一次大戦ガリポリや、第二次大戦のダンケルクスターリングラードガダルカナルインパールなど、どこで撤退の踏ん切りをつけたか、また撤退の時期を見誤ったのかに焦点を当てて解説した一冊。特に目新しい部分は多くないけれど、最近は目新しさを売りにしている割に無理筋な内容の本も多いので、むしろ本書は安心安定という感じがした。

撤退戦の意志決定レベルについても、国家レベル(ガリポリダンケルク朝鮮戦争スターリングラード)、軍統帥レベル(ガダルカナルインパールキスカ)、現地指揮官レベル(沖縄、ノモンハン)と、そのまんま、ウォーゲームで言うところの戦略級、作戦級、戦術級に当てはまるので、参考にもしやすい。

実際ウォーゲームでも、ダンケルクのように最初から撤退ありきの作戦はいいとして、インパールのように最初は攻勢をかけたけれど、どこかで防勢に切り替えなければならないゲームでは、その見極めで悩まされる。バルジ戦ゲームもそうだけれど、大概は攻勢側が散々暴れ回って、もう無理だなという攻勢限界点に来ると、時間的にも精神的にも「ここで投了します」となる場合も多い。防御側からすると「いやいや、こっちはこれからが本番なんだから」と思っていても、攻勢から反転攻勢までじっくりプレイするほどの時間が取れなかったりする。半日程度のプレイ時間でその両方まで味わえるゲームってなんだろう……自分の記憶では、古いゲームだけどアバロンヒルの「ロシアン・キャンペーン」とか。あれは途中で双方が「そろそろだな」と感じるタイミングがあるし、攻守逆転して最後までやりきりたくなる。戦略~作戦級ゲームのキャンペーンシナリオなら、そこまで包括しているだろうけど、プレイする時間がなかなか取れず、だいたいは攻勢が頓挫するところまでのシナリオだけプレイしておしまいになったり。

以前「TSWW:Sigapore !」のインパール作戦シナリオをソロプレイした時も、日本軍部隊が完全に消耗し尽くすまで攻勢を続けたけれど、よく言う「たとえ短期シナリオでも長期キャンペーンをプレイしている時のようにプレイしなさい」に従うなら、後々のことを考えて、戦力を温存した段階で撤退すべきだったのだろう。でも戦力が残っているうちは、ついつい「まだやれるんじゃないか」という希望が灯ってしまうのも事実。このあたり、やはりウォーゲームでも適切なタイミングで撤退するのは難しいなあと。