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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

【Levy & Campaign】GMT「Nevsky : Teutons and Rus in Collision 1240-1242」

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2019年に発売されたGMT「Nevsky」をクロノノーツゲームさんから購入。テーマは、1240年~1242年にかけて、カトリック勢力を拡大せんとするドイツ修道騎士会(チュートン騎士団)が、ノヴゴロド公国(中世ルーシ/ロシアの都市国家)へ攻め寄せたものの、ノヴゴロド大公アレクサンドル・ネフスキーと凍結したチュード湖/ペイプシ湖上で戦い、敗退したという、北方十字軍戦役である。

デザイナーは、対治安戦(非対称戦)をマルチプレイヤー・システムで表現したCOINシリーズの産みの親、Volko Ruhnke氏。そのRhunke氏が新たに立ち上げた、Levy & Campaign(召集と戦役)シリーズの第1弾が本作である。COINシリーズは、対治安戦とは言え、その題材は現代アフガニスタンから、ガリア戦記アメリカ独立戦争、果ては応仁の乱まで発売されるそうで、時代的な枠は存在しなかった。

しかしこちらのL&Cシリーズは(今のところ)中世の戦役だけに焦点を当て、先日シリーズ第2弾の「Almoravid」(スペインの国土回復戦争)が発売され、さらに第3弾「Inferno」(イタリアでの教皇派・皇帝派戦争)、第4弾「Plantagenet」(イングランドの従兄弟(薔薇)戦争)、第5弾「Henry」(英仏百年戦争アジャンクール戦役)等も発売が告知されている。いずれのテーマも、戦役級ゲームとして見かけたことはあまり無いし、この第1弾「Nevsky」も海外での人気が高く、また独特のシステムを採用しているようだったので、だったら一度触れてみようと。北方十字軍というテーマは「北の十字軍」でしか読んだことがないが、だからこそ、ゲームで触れた方が史実も理解できるんじゃないかと。

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ハードボード製の地図盤は、ハーフサイズ。地図盤の上1/3は、ターン進行トラック(1ターン=40日間)になっているので、実際の地図部分はかなり小さい。街や城塞が、道路と水路で結ばれている、シンプルな作りになっている。まあ、中世当時、軍隊が通行できるルートは(補給物資を賄えるという意味でも)かなり限定されていたのだろう。

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こちらが君主マット。チュートン騎士団とロシア側、それぞれ6枚ずつ用意されている。このマット上に、部隊コマ(騎士や歩兵)、物資(輸送手段、補給品、金銭、戦利品)などを配置し、軍勢全体の状態を表す。また各君主には、忠誠値(召集のしやすさ)、軍役値(何ターン先まで戦争を継続できるか)、統治値(何回召集が行えるか)、命令値(何回アクションが行えるか)が記され、個性化が図られている。

このうちゲームタイトルにもなっている、主役のノブゴロド大公ネフスキーは、最高司令官(Marshal)という地位にあり、他の君主を引率して移動できる。対するチュートン騎士団側は、リヴォニア騎士団長フォン・ヘルベンが最高司令官であり、この2人が盤上に存在しない場合は、また別の君主が最高司令官を務めることになる。

この「最高司令官と君主」という関係は、日本で言うところの「戦国大名と国衆」に近い。最高司令官も自前の軍勢を持っているけれど、戦の時には諸侯を動員して、戦力を増そうとするわけだ。実際、ネフスキーは最も軍役値が高く、6ターン先まで継続して戦う意志がある。統治値、命令値も高く、まさにロシア側のエース的存在。その弟にしてスズダリ公国の大公、アンドレイも、兄貴に1ポイント劣るが、ネフスキー不在時には最高司令官の役目を果たしてくれる。

しかし諸侯の中でも、デンマーク大公や、プスコフからの追放者ヤロスラヴ、カレリア族あたりになると、軍役を2~3ターンしか努めてくれないので、あくまでも短期アルバイト部隊として使うか、軍役を延長する手段もある。

こちらが部隊コマ。そう、COINシリーズも、一般ボードゲーム的な内容物とアイデアを用いていたが、このL&Cシリーズもコマの見た目だけならファミリーゲームに見えなくもない。一応、各部隊コマは、騎兵なら50~100名、歩兵なら100~200名を表している。

各兵種には、射撃や白兵戦で与えるヒット数や、被ったヒットを帳消しに出来る防御ダイス目が決められている。つまり戦闘の際は、攻撃する際にダイスを振るのではなく、相手に与えるヒット数は自動的に決まり、そのヒット数を減らせるかどうかをダイスを振って決めると。

また丸い円筒状のコマは君主を表し、シールを貼って判別する。まだシールは貼っていない状態だが、親切なことに、予備用のシールとしてもうワンセット揃っている。部隊コマにしても、必要な数より1個ずつ多く含まれている。

また、木製コマじゃあその軍勢のヒット数がぱっと見わからん!という方のために、与えるヒット数を記した紙製カウンターも用意されている。

ターントラックに配置する軍役マーカーは、それぞれどの君主が、どのターンまで軍役を務めてくれるかを表す。また各君主に従属している家臣(Vassels)マーカーは、君主マット上の使用可能ボックスに配置し、召集することによって、同じく君主マット上の部隊配置場所へ移す。まとまった戦力を持つ家臣もいれば、少数の民兵しか抱えていない家臣もあり、それがそのまま君主の動員能力になっている。

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軍役については、硬貨(Coin)や戦利品(Loot)を消費して、軍役期間を延長できる。硬貨は本拠地で徴税アクションを行うか、敵の拠点を奪うことで得られる。拠点を奪った場合、他にも戦利品や糧食(Prov)が得られる。ただし征服した拠点は荒廃してしまうので、糧食を挑発できなくなる。

各君主は、それぞれ所有できる硬貨、戦利品、糧食の数に限りがあり、制限数の2倍を超えてしまうと荷重状態(laden)となり、移動するのにアクションポイントが余計にかかってしまう。余っている物資は、味方の君主と共有したり、廃棄もできるので、補給的なマネジメント要素も上手く表現されているようだ。

こちらは輸送手段マーカー。川船(Boat)、海上船(Ship)、荷車(Cart)、橇(Sled)とあり、それを持つ君主は、部隊コマを引き連れて陸路や水路を利用できる。

各ターン最初の召集フェイズ開始時には、両軍とも「戦争術(Art of War)」カードを引く。各カードには、上半分にイベントが書かれ、下半分には君主の追加能力が書かれている。開始ターンに引いた2枚のカードは追加能力として、そのゲーム固定の能力として決定される。ある意味、毎回ゲームをプレイするたびに、諸侯の能力が変化するので、飽きずに遊べるかもしれない。

それ以降のターンに引いた2枚ずつ引いたカードは、イベントとして実行される。

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こちらは命令カード。各ターンの召集フェイズが終わると、実際の移動や戦闘などを行う戦役フェイズに入る。戦役フェイズでは、両軍が1枚ずつ命令カードを使用し、その君主を行動させていく。各ターンに使えるカード数には制限があり、夏ターンは6枚、冬ターンは前期・後期ともに4枚、春の泥濘ターンは5枚となっている。命令カードは、各君主ごとに3枚、パスカードも3枚用意されているが、そのターンに招集されている君主のカードの中から、制限枚数分だけ選んで計画山札(Plan stacks)を作る。もちろん、有能な君主カードは3枚入れたいし、無能な君主カードはあまり入れたくない。そしてその命令カードを使用する順番もプレイヤーが決定し、その順番は後になって変更できない。なるほど、だから「計画」山札なのか。

カード手番が来て活性化された君主は、その指揮値(1~3)の数だけアクションが行える。アクションには、行軍、拠点の攻囲、拠点への強襲、包囲下の拠点からの出撃、補給源からの補給(糧食の獲得)、現地での徴発(これも糧食の獲得)、荒廃(糧食と戦利品の獲得)、海上移動、本拠地での徴税(硬貨の獲得)、パスとある。指揮値が3あれば、同じ種類のアクションを3回続けて行ってもかまわない。

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こちらは戦闘マット。行軍アクション中に、敵君主が存在する場所に入った場合、その相手が籠城したり、回避したり、撤退しない限り、戦闘(会戦)が発生する。両軍とも、左翼・中央・右翼にそれぞれ1君主ずつを配置でき、それ以上の戦力は予備に回される。各戦闘ラウンドは、防御側⇒攻撃側、射撃⇒騎兵⇒歩兵という順番で解決される。戦闘は最低でも1ラウンドは行われ、どちらかが戦場を離脱するまで行われる。

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先にも書いたように、それぞれの部隊コマごとに、敵に与えるヒット数が決められており、戦闘時はダイスを振って、そのヒットをどれだけ相殺できたかを判定する。もちろん装甲の堅い騎士(Knights)は、ダイス目1~4でヒットを無かったことにできるが、農奴兵は防御ダイスを振るチャンスすらない(つまりヒット数をそのまま被る)。

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敵の拠点を攻める場合も、攻囲(Siege)アクションを行って、攻囲マーカー値を上げたり(攻囲状態を有利にする)、君主が籠城していなければ降伏勧告を行える。また戦闘と同様に、籠城部隊に対して強襲(Storm)もかけられるが、そのラウンド数は攻囲マーカー値と同じまでなので、あらかじめ攻囲マーカー値を上げておいた方がいい。また籠城側も拠点内から出撃(Sally)し、うまく攻囲側を撃退できれば、それまでに積まれていた攻囲マーカーを取り除ける。出撃側が負けた場合は、また拠点内に戻ると。

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また選択ルールとして、自軍の君主マットを隠し、どの君主にどれだけの部隊コマや能力があるのか分からないようにする、という遊び方もある。そのため、手元を隠す紙製のスクリーンも用意されているが、これがまた雰囲気たっぷり。しかも両面印刷。

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このように、コンポーネント的にもかなり豪華な上、一般ボードゲームのシステムや遊びやすさを取り入れつつ、しっかり史実のディティールを再現したシミュレーション・ウォーゲームになっているという、こりゃたしかに人気出るわなあという印象。ルールブックとは別の、バックグラウンドブックには、戦役の背景や、各君主の解説、戦争術カードの能力とイベントの解説があるのも嬉しい。とりあえず、まずはプレイしてみよう。