Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Battalion Combat Series】「Arracourt」

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プレオーダーしていた、戦術作戦級シリーズBCS(Battalion Combat Series)の第5弾「Arracourt」が到着した。本作のテーマは1944年9月18日~30日にかけての、フランスのロレーヌ地方、アラクール周辺で行われた機甲戦闘を軸にしている。アラクール戦と言えば、ドイツ軍の装甲旅団による攻撃とその失敗がよく採り上げられるが、デザイナーズノートを読むと、その前後でも活発な戦闘活動が行われていたと。

また本作は、BCS入門者向けにデザインされており、そういう意味でも興味深い新作になっている。

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地図盤はフルマップ1枚……なのだが、既存のBCSゲームよりも、ヘクス径が大きく(広く)なっている。特に険しい地形は無く、森、平野、小川、小さな街で構成されている。

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カウンターも、入門者向けのためか、既存のBCSゲームより大きくなっている(そして老眼にも優しい)。両軍のユニットはカウンターシート1枚に収録され、扱うユニットも少なくて済んでいる。こちらはアメリカ軍。時期的には、ノルマンディ上陸から3ヶ月以上が経過し、各ユニットはすでに戦闘経験を積んでいるため、アクションレーティング(練度)的にも平均以上になっている。特に主役のアメリカ第4機甲師団、フランス第2機甲師団は頼もしい。またM18ヘルキャット駆逐戦車装備の第602、第704駆逐戦車大隊は、実際に歩兵支援以外の戦闘も行ったため、実体射撃(Real AV)ユニットとして表されている。M18駆逐戦車は、展開モードでも移動力6、しかも第602駆逐戦車大隊は防勢射撃(Limited AV)ながらも射程3と、なかなか使い勝手が良さそうな数値設定になっている。これほどM18ヘルキャットの評価が高いゲームも珍しいかもしれない(^_^)

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こちらはドイツ軍。新編成の装甲旅団は、この戦いがデビュー戦となったが、アクションレーティングは平均的で、しかも装甲旅団フォーメーションに固有の支援砲兵が無い。第11、第21装甲師団にしても、連合軍のノルマンディ上陸以来、後退戦が続いて消耗したため、戦車ステップ数も少ない。この戦力を用いて、元気いっぱいのアメリカ軍に反撃しろというのは、無茶な命令。一応、パンター戦車装備の大隊は射程が3なので、M4シャーマン戦車大隊に対してはアウトレンジ攻撃が行えるが……

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当然、マーカー類も大きめになっている。

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シナリオは6本収録。そのうち4本は、5ターン以下で終了するため、時間的にもプレイしやすい。

特別ルールは少なく、地図盤が狭いため、補給段列(Combat Train)を地図盤外まで退却させる必要はないとか、回復作業を一部、自動化してゲームをテンポアップさせる等々。酷いのはドイツ空軍のルールで『何も無い。これは間違いではない』で終わり(^_^;)  またアメリカ軍の観測パイロット、チャールズ・カーペンター中佐が、観測機の翼下にバズーカ砲を6基積んで対戦車攻撃を行ったという逸話から、この「バズーカ・チャーリー」(観測無しに敵のAVユニットを爆撃できる)のルールも登場。

さすがBCS入門向けに作られただけあって、このような特別ルールは最低限に抑えられ、あくまで共通基本ルールで遊べるようになっている。自分もすでにルールやデザイナーズノートは翻訳してしまったので、近いうちにプレイしてみたい。

しかしロレーヌ戦と言えば、2年前に購入した「GOSS:Lucky Forward」がまだまったくの手つかずなんだよなあ……シリーズ前作の「GOSS:Atlantic Wall」ともども、そちらもなんとかプレイできるようにしないと……