Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

Game Journal #46「謙信上洛」

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2013年発売のゲームジャーナル46号を購入。さすがに古い号だったので、i-OGMの中古コーナーで買ったが、なかなかのプレミア価格……。付録ゲームは、1990年にツクダから発売された「謙信上洛」。天正六年(1578)に上杉謙信が急死せず、そのまま上洛戦を続け、織田信長と決戦していたら……という仮想戦ゲームである。自分も当時、ツクダ版は買っていたので、GJ版はいいやと思っていたが、GJ版戦国群雄伝も揃えてしまったので、だったらこちらも行くかと。我ながら難儀なコレクター道だなあ……

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本作は、先輩シリーズの戦国群雄伝とはゲームスケールが異なる。なぜかヘクススケールは書いていないが、1ヘクス=6kmだった群雄伝よりも広いのはたしか。群雄伝は1イニング=1週間だったが、こちらは10日間になっている。ゲームとしては、上杉謙信武田勝頼毛利輝元本願寺勢力による織田信長包囲戦を扱うため、地図盤には畿内を中心とした広大な地域が描かれている。

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戦国群雄伝は1ユニット=500人~1000人だったが、こちらは1ユニット=2000人。ある意味、群雄伝システムでは処理するのが面倒な大規模な戦いを扱えるスケール。

そして武将のレーティングも、0(最低)から6(最高)までの戦闘能力と、0(最低)から5(最高)までの行動力という、群雄伝とは違ったキャラクター付けが成されている。戦闘能力は、群雄伝で言うところの野戦修整なので、これはまあ、すぐに理解できた。上杉謙信は最強の6、武田勝頼はそれに次ぐ5、毛利輝元は1とかなり頼りないが、小早川隆景3、吉川元春4でなんとか。雑賀衆の6というのも恐ろしい。実際の戦闘では、この戦闘力差がそのままダイス修整として反映されるのも戦国群雄伝と同じ。

問題は行動力である。この行動力ルールが、戦国群雄伝から進化した本作の真骨頂。戦国群雄伝では、1イニングが4ステージに分かれ、各武将は行動力に等しいステージ(回数)まで必ず行動できた。ある意味、自軍も敵軍も、どこまで動けるかは確定していたし、相手の移動を計算することも可能だった。しかし本作では1イニングに、移動、強行軍、相手手順のリアクションと3回移動チャンスがあるが、必ず移動できるのは自軍移動フェイズだけで、強行軍とリアクションの場合、ダイス1個を振って行動力以下が出れば移動可能になっている。つまり各武将が、1イニングに何回移動するかは読めないわけで、非常にスリリングな展開になったのを覚えている。

そう見ると、上杉謙信は行動力5なので1イニングに3回移動できる可能性が高く、毛利輝元は行動力1なので1回のみの移動で終わる可能性が高い。しかしそれもダイス目次第なので、必ずしもそうなるとも限らない、というところがミソ。

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同じく織田方を見てみると、織田信長は戦闘3・行動5と、やはり戦国群雄伝同様、動きは速いが野戦で強いわけではない。そして盟友・徳川家康は戦闘5・行動5と非常に頼もしい。そして信長と家康がスタックすれば、同じ総大将格なので、家康の戦闘力5を用いて、上杉謙信の戦闘力6に拮抗できると。また織田軍内では唯一、羽柴秀吉が行動力5だが、これいかにも働き者の秀吉という感じだし、信長が秀吉を可愛がった理由が分かる気もする(実際どうだったかは知らないが)。

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ツクダ版「謙信上洛」も当時、発売と同時に購入した。それまでは戦国群雄伝に慣れていたが、この不確定な移動ルールをプレイした時、単純に『こっちの方が面白い!』と感じた。当然、自宅会で3人プレイもしたが、いつものように精強な上杉謙信は担当させてもらえず、いつも織田信長をプレイしていた。たしか当時は織田信長として、東海方面に戦闘力4の明智光秀を送って武田勝頼に対峙させ、信長本隊と共に徳川家康を近江に向かわせ、北陸の柴田勝家を後退させて合流、謙信が必ず来るであろう栃ノ木峠に砦(戦闘力が1有利になる)を築き、家康の戦闘力5+砦1で、謙信の戦闘力6に対抗し、兵力差で上回って勝とう、としていたような。ただ、謙信が決戦に及ばず、その間に武田・毛利・本願寺勢で攻勢をかけられ、このままではマズいと感じて、結局、砦から出て謙信に決戦を仕掛けたような記憶も……

とにかく当時かなり楽しんだタイトルであり『このシステムでもっといろいろ出して欲しい』と思ったが、あいにく戦国モノとしては、次の「真田軍記」だけで終わってしまった(実はツクダ「銀河英雄伝説ラグナロク作戦」もこのシステムを流用している)。シリーズ展開としては惜しかったが、シンプルながらも機動の妙が味わえるシステムなので、またこのシステムを使って、誰か新作を作ってくれないかな……