Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

VUCA Simulations「Across the Bug River : Volodymyr-Volynskyi 1941」

f:id:crystal0207:20210722161817j:imageドイツの新興メーカーVUCA Simulationsの「Across the Bug River」を「小さなウォーゲーム屋」さんから購入(日本語ルール付)。お題は、1941年6月22日、バルバロッサ作戦劈頭の、ヴォロディームィル=ヴォルィーンシキー(長いな)周辺での数日間の戦闘を扱っている。攻め込むのはドイツ南方軍集団だが、ほとんどの戦史書では『南方軍集団はスターリンラインを突破し、キエフ包囲に向かい……』とか何とか書かれている程度で、あまり詳細に述べられることは少ないと思う。かろうじてグランツの「詳解 独ソ戦史」で、迎え撃つソ連南西部正面軍の様子もちょこっと書かれている程度。まあ、そういった穴場的な戦場を、ウォーゲームで知れるのも楽しみのひとつよね。

Across the Bug River - Volodymyr-Volynskyi 1941 – VUCASIMS 

f:id:crystal0207:20210722161827j:image

地図盤は、ハードボード製のフルマップ1枚。ゲームスケールは、1ヘクス=2.2km。1ターン=8~16時間。キャンペーンシナリオでも全7ターンなので、いいとこ3~4日間の戦闘というところか。地図盤左側(西側)を流れるのが、タイトルにもあるブグ川=ソ連国境線で、ドイツ軍はここを渡河してソ連領内に攻め込むことになる。 

f:id:crystal0207:20210722161837j:image

1ユニットは基本的に大隊、戦車系とNKVDは中隊。個人的には大好物なスケール。こちらはドイツ軍ユニットだが、師団毎にフォーメーションが色分けされている。各戦闘ユニットには、戦闘力(耐久ステップ数)、戦車/対戦車ポイント、移動力、有効値(戦闘力の乗数に関係する)などが記され、裏面は混乱状態(移動不可、戦闘力の乗数が低くなりがち)になっている。司令部ユニットには、指揮範囲、攻撃支援ポイント(戦闘へのダイス修整)、司令部自体を移転する際の再配置値、フォーメーション全体のリアクション値が記されており、個性的で楽しい。ただ戦車と突撃砲などの区別は無いので、BCS(Battalion Combat Series)ほど戦闘車両のディティールが再現されているわけでもない。 

f:id:crystal0207:20210722161847j:image

こちらはソ連軍ユニット。総じてドイツ軍よりも有効値が低く、戦闘効率の悪さが表れている。ちらっとKVII戦車中隊(本ゲーム中、最強の戦車値7)も見えるが、ドイツ軍が第6ターンより前に、地図盤北端のソ連軍補給エリアに近づかないと登場しないので、まあ、出てこないんじゃないかなと。  

f:id:crystal0207:20210722161906j:image

ゲームシステムは、すでにVUCA Simulationsから発売されている「Crossing the Line」(1944年アーヘン戦)と同じ……というか、その元ゲームである「Piercing the Reich」(Moments in History 1995年)と同じ、と言った方がいいのか。そういやそんなゲームもあった気はするが、なにしろ1990年代はウォーゲームから離れていたし、買うこともプレイすることもなく今に至っている。

システムは、主導権を握ったプレイヤーから、任意の1フォーメーションを活性化させ、各フォーメーションの活性化レベルに応じて10面体ダイスを振り、使用できるアクションポイント(AP)を決定する。移動に1AP、応急攻撃に1AP、標準攻撃に2AP、周密攻撃に3APとかかるため、その活性化中に「移動・戦闘」が行いたければ、最低でも2APが必要となる。1APしか獲得できなければ、移動だけで終わるとか。

その移動中に、敵ZOCに侵入したり、敵ZOCから離脱する場合には、相手方プレイヤーがリアクションを試みることができる。成功すれば、手番プレイヤーの移動を中断させて、やはりアクションポイントを決定し、いずれかのスタックに行動させて、また手番プレイヤーに戻すと。

f:id:crystal0207:20210722161857j:plain

戦闘は、戦力比を求めて両軍の損失ステップを求めるが、戦闘毎に、両軍とも戦闘チットを引き、各ユニットの有効値と戦闘状態によって乗数(つまり戦闘力を何倍にするか)を決定する。乗数は1~3なので、最大でも戦闘力3倍までだが、これによって事前の戦闘比計算が立たないようになっている。戦闘チットは、戦闘毎にプールから引き直すので、SPI「Operation Typhoon」「Patton's 3rd Army」のように、ユニットとチットがずっと固定( 紐付け)されるわけではない。

f:id:crystal0207:20210722161915j:image

ちなみにチャート類も、ハードボード製なので、ゲーム全体が物理的にずしりと重い……

とまあ、ざっと見た感じ、1ユニット中隊~大隊レベルで、交互に師団フォーメーションを活性化させ、その活性化量はランダム……というあたり、BCSに似ているなあと。いや、元ゲームの「Piercing the Reich」は1995年発売なのだから、実は先輩ゲームにあたるわけで、知らなかったのが申し訳ない感じ。ただ、BCSの方が補給線ルールが独特だったり、戦車の差異が細かいので、よりシンプルな印象。今回もその詳細を知って、BCSと遊び比べたいと思って、購入してみた。

一応、先に発売された「Crossing the Line」も、ハードボード版となって再販されたし、さらに同システムで北アフリカ・ガザラ戦を扱う「Operation Theseus」も出るようなので、ちょっとシリーズとして追っかけてみたい。 

Crossing the Line - Aachen 1944 - Reprint (2nd Edition) with mounted m – VUCASIMS

Operation Theseus - Gazala 1942 – VUCASIMS