Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】リチャード・オウヴァリー「なぜ連合国が勝ったのか?」

イギリスの歴史家、リチャード・オウヴァリーの「なぜ連合国が勝ったのか?」の邦訳が出たので購入。初版は1995年だが、今回は2006年に出版された第2版の翻訳。第二次大戦で連合国が勝利した要因を、戦域レベルでは制海戦、戦略爆撃、東部戦線、フランス奪還に絞り、戦略レベルでは経済、技術、リーダーシップ、士気に焦点を当てて概説している。戦後、元ドイツ軍将官たちによって語られてきた敗因(ヒトラーが悪かった的な)ではなく、連合国のさまざまな勝因を分析することで、旧来までの偏りを是正するような内容にもなっている。

ただ、戦争経済面では、旧来のドイツ軍需相シュペーアの主張をそのままなぞっている面もあり、そのあたりは、2006年に出版された「ナチス 破壊の経済」の方がより実像に近い分析なのではないかと思う。オウヴァリーの「Russia's war」は、David Stahelからもケチをつけられていたので、古典なのだろうけれど、より新しい戦史書と組み合わせて読むのがイイのかなと。