Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】「三八式歩兵銃 日本陸軍の七十五年」

文庫化された「三八式歩兵銃 日本陸軍の七十五年」を購入。サブタイトルの方がその内容をよく表していて、明治期における日本陸軍の創設から、西南戦争日清戦争日露戦争日中戦争、太平洋戦争に至るまでの変遷を追った日本陸軍史になっている。

著者の加登川幸太郎氏は、本書の前に「帝国陸軍機甲部隊」という著書も出されており、そちらでは機械化部隊を中心に書かれていると思うが(未読)、こちらの「三八式歩兵銃」は、歩兵と砲兵を中心とし、さらに航空部隊にも触れている。明治から昭和に至るまでの師団編成にも触れ、政治的意図や経済的事情による軍縮によって、日本軍師団が火力不足に至り、それを精神論で穴埋めしたことに憤っている。

手元にあるウォーゲームで、日本軍師団の火力不足が表現されている作品というと、まず「OCS:Burma」だろうか。本書でも「将兵は超一流」と書かれているが、実際この「OCS:Burma」でも、日本軍歩兵大隊の練度(アクションレーティング)は高い。しかしそれを支援する砲兵火力が貧弱で、事前砲撃で相手を混乱させられないまま攻撃し、歩兵がすり潰される……という展開もままある。

逆に「CSS:Saipan」「CSS:Guam」あたりは、日本軍の砲兵火力が妙に強力で、上陸したアメリカ軍が水際で砲撃を浴びまくり、海岸ヘクスから一歩も動けずに撃滅されることもあり、いや待て、これちょっとどうなのよと思った。元々のGTS(Grand Tactical Series)では、砲撃要請にもダイス判定が必要だったり、その連絡が途絶する可能性があったが、弟分のCSS(Company Scale System)ではそれがバッサリ削除されたため、やたらと砲撃機会が増えたことが原因だと思う。本書で語られるような、日本軍の火力不足を痛感できるような作品ではないかなと。

ちなみに著者の加登川幸太郎氏は、第二次世界大戦ブックス等の翻訳書も多く、自分も学生時代から「ドイツ軍は装甲師団」「英米軍は機甲師団」「ソ連軍は戦車軍団」という訳し方に慣れてしまい、このBlogでも、その訳し方を使っている。そのうち「帝国陸軍機甲部隊」も復刊されないかな…… 

陸軍の反省〈上〉

陸軍の反省〈上〉