Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】「ヒトラーが勝利する世界:歴史家たちが検証する第二次大戦・60の''IF''」

先日、古書店で、2006年に発売された「ヒトラーが勝利する世界」を発見。発売当時も軽く手に取ったが、仮想戦記っぽいかと思ってスルーしていた。しかし、あらためて執筆陣を見てみると、デビッド・M・グランツ(詳解独ソ戦全史)、デニス・E・ショウォルター(クルスクの戦い1943)、ゲアハード・L・ワインバーグ(戦争学入門・第二次世界大戦)という、真っ当な軍事史学者ばかりだったので、なんだこれ、マトモな本だったのかと気づき、今さら購入してみた。

これ原書も日本語版も、表紙に「What If ?(もしも)」と書いてあるが、仮想状況を楽しむのではなく、むしろ「こういう理由があったから、もしもという想定は成り立ちませんよ」という、仮想設定潰しのような内容になっている。なので、タイトルで損をしているし、仮想戦記っぽいと思って読むと失望するかも。逆に、自分のように「なぜその仮定は成立しなかったのか?」という要因を知りたい人向き。

まあ、ヒストリカル・ウォーゲームでも、どこまで展開の振れ幅を許すのかというのは、デザイナー自身の考えや、プレイヤー自身の好みもあって、千差万別かと思う。史実から思いっきり離れてもOKな人もいれば、史実に沿った展開を好む人もいるし、良い悪いで判断するモノではないのだろうが、それはあくまで商業ゲームでのお話であって、軍事史学者としては、あまりに荒唐無稽な夢想や妄想については、一言言っておきたいのかもしれない。

自分自身も、基本的には「歴史にもしもは無い」と思っているし、史実に沿った展開になった方が嬉しいウォーゲーマーである。とは言え、✕月✕日にこの部隊はここまで進んでいるはずだと、細かい展開まで合わせてほしいわけではない。このあたり、とても抽象的な言い方になるし、あくまで個人の感覚なので、論理的な線引きはできないが、多かれ少なかれ、それぞれのウォーゲーマー一人一人に、そういった感覚はあるんじゃないかな、と思っている。たぶん。