Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

【Grand Operational Simulation Series】「Lucky Forward」

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プレオーダーしていたDecision Gamesの新作にして、WWII精密作戦級シリーズGOSS(Grand Operational Simulation Series)第4弾「Lucky Forward」が到着。2014年に発売されたシリーズ前作「Atlantic Wall」から実に6年ぶりの新作である。ちなみに送料込み230ドル(約25000円)。

本作のお題はサブタイトルにもあるように、1944年9月5日~12月15日における、パットン中将率いるアメリカ第3軍のロレーヌ地方侵攻作戦である。タイトルは「幸運な前進」だが、これはもう皮肉でしかなく、パットン第3軍は、連合軍の補給事情により、いったん進撃を停止され、その間に守るドイツ軍は戦力を増強して果敢に反撃を行い、また10月の長雨と洪水によって作戦自体にも遅れが生じたという、全然Luckyな前進ではなかったようだ。

ゲームスケールは、今までのGOSS同様、1ヘクス=1マイル(1.6km)、1ターン=8時間(午前・午後・夜間)、1ターン=大隊が基本(中隊に分割可能)という、戦術級寄りの作戦級。 

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マップは、大4枚+追加小2枚。北はルクセンブルグから、メッツ、ナンシーへと南下し、東はストラスブール手前の、サヴルヌ峡谷までを含んでいる。 

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2012年発売の「Hurtgen:Hell's Forest(HHF)」と「Wacht am Rhein(WaR)」と連結するとこんな感じ。というか、我が家の狭い六畳間でギリギリ入る感じ。これで北はアーヘン、ヒュルトゲン戦線から、アルデンヌ戦線、そしてロレーヌ戦線へとつながるワケだ。ちなみにDecision Gamesではすでに、このさらに北に連結する「GOSS:Market Garden」も企画されているが、果たして出るのだろうか。まあ、5年後に会えれば上等だろうし、もし発売されても、もう我が家では全作連結できないだろう…… 

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シナリオは、基本的に5本……出た出た「Hurtgen:Hell's Forest」と同じパターン。地図盤全域を使った、1944年9月、10月、11月、12月シナリオと、仮想「もしパットン第3軍の前進を助けるため、アメリカ第82・第101空挺師団の降下作戦が許可されていたら」シナリオ。「Hurtgen」同様、これは実プレイの敷居が高い。そのうちVASSALモジュールも出ると思うが、それでも結構大変だと思う。

イメージとしては、9月シナリオはナンシー戦、アラクールの戦車戦、10月がメッツ包囲戦と長雨、11月シナリオでザール川への橋頭堡確保を目指すという感じか。このあたり、日本語で詳しく読める書籍があまり無いかもしれないが、自分の手元にあるものだと、フォン・メレンティンの「ドイツ戦車軍団」の第20~第21章、「ラスト・オブ・カンプフグルッペV」の「ロレーヌは戦車旅団の墓標」あたり。 

ラスト・オブ・カンプフグルッペV

ラスト・オブ・カンプフグルッペV

 

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一応、システム修得用としてミニシナリオ「Battle of Gremercy Forest」が、拡大マップと共に1枚のシートに収められている。「Hurtgen」の時もそうだったが、こういうミニミニシナリオと、超巨大シナリオの間を埋める、中間シナリオが無いのが残念。「Wacht am Rhein」と「Atlantic Wall」は、多少そういったシナリオもあったし、OCSのように、遊びやすい規模のシナリオを複数取り揃えてくれると、このシリーズももう少しとっつきやすくなるのだけれど。 

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カウンターシートは全12枚、カウンター総数3360個。そのうち、カウンターシート5枚がマーカー類、3枚が連合軍ユニットになっている。ノルマンディ上陸から3ヶ月経ったせいか、各アメリカ軍師団の練度も高めに安定し、砲兵・工兵の支援部隊も充実。戦場の地形的にも、開けた箇所が多いので、複合兵科能力バリバリの機甲師団戦闘団(コンバットコマンド)が活躍できそうにも思う。そう、補給さえあれば、そして天候さえ良ければ、ドイツ軍なんぞひとひねりよ、と思ってもおかしくない陣容。そして仮想シナリオで使用する、第82、第101空挺師団も入っているが、もしその2個師団を使っていたら、バルジ戦はどう推移したのだろうか。 

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対するドイツ軍は、カウンターシート4枚分。こちらの練度は、総じてアメリカ軍より低いものの、まだまだ頼もしい部隊も散見される。またロレーヌ戦には、装甲旅団という新編成部隊が投入されたのが良く知られているが、たしかにユニット構成を見てみると、砲兵がまったく無いのが辛い。まあ、GOSSは軍団単位の管理もテーマなので、軍団直轄砲兵で助けてやればいいじゃないのとも思うが、それだけの弾薬があるかどうかも問題。そういやメッツ戦では、列車砲部隊も参加したはずだけど、どれだろう(ユニットが多すぎてまだ確認しきれていない)。また、アメリカ軍を苦しめた、メッツ近郊のドリアン砦などの城塞群もそれぞれカウンター化されている。 

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そして、むしろ「Lucky Forweard」本体よりもGOSSユーザーが待望していた、新しいGOSS基本ルールも搭載。3段組み80ページ……いや、いざとなったら訳すし、この新しい基本ルールを使って「Atlantic Wall」にも再挑戦したいと思っている。また、添付のヒストリカルノートは、カラー図版も多く、この戦役をざっと眺めるには便利。 

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こちらは戦闘結果表。ひとつの戦闘に、無数の修整をちまちまと積み重ねて計算し、攻撃側も防御側もお互いd100を振るという、他のウォーゲームだったら絶対やらないことをあえてやる。それがGOSS。 

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まあ、自分としても「Lucky Forweard」が出たことより、GOSS基本ルールが整理された形で出たことの方が、ずっと嬉しい。ConsimのGOSS板を見ていても、常にルールの疑問点が飛び交っており、ここ数年分のあれやこれやが整理されただけでも万々歳だ。まあ、それを翻訳するのは難儀だが、このGOSS2020ルールで、以前のシリーズ作にも再挑戦したいとは思う。しかしGOSSのプレイは滅茶苦茶重たいし、他に優先して訳したいタイトルもあるので、しばらくは塩漬けかな。

ちなみにDecision GamesのWWII専門ゲーム雑誌「World at War」80号付録は、このGOSSのシンプル版ルールを用いた「Hannut : France 1940」だそうだ。だったら、もうそのシンプル版ルールでいいんじゃないかという気もするし、いやでも3段組80ページのルールをどこまで単純化するのよ、という疑問もある。結局、自分も面倒だと言いつつ、ちまちました計算やプレイがしたいし、あんまり削られても興ざめするしなあ……などと思いつつ、いろいろ期待している。