Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

【参考文献】Niklas Zetterling「Normandy 1944」

スウェーデン軍事史家、Niklas Zetterlingが2000年に出版した「Normandy 1944:German Military Organization, Combat Power and Organizational Effectiveness」(1944年ノルマンディ:ドイツ軍の軍事組織、戦闘力、組織戦闘効率)が再版されたので、Amazonにて購入。ノルマンディ戦のドイツ軍分析としては、評価が高い一冊だったし、自分も前々から読みたかったが、初版が長らく品切れで、中古市場でも高騰していたので、ありがたい再版である。

しかし今回の再版は、一応「fully revised and updated(全面改定版)」という触れ込みだったが、旧版と比較した米Amazonの評価を見ると、あまり大きな改訂はされていないようだ。2000年以降に出版されたドイツ軍師団史からの情報が適用されている形跡も無く「全面改定版」 という宣伝文句は大袈裟かもしれない。また第2装甲師団の編成表が第2SS装甲師団になっているミスもあり、やや残念な出来である(Kindle版なら、そのうち訂正されるかもしれない)。

とは言え、内容そのものは興味深いので、ぱらぱらと読み始めている。

そもそも本書の存在を知ったのは、2016年に入手した「GTS:The Greatest Day」(ノルマンディ上陸作戦の英軍海岸のみを扱った作戦戦術級ゲーム)が、ドイツ軍の戦闘序列を調べる際に本書を基礎とした、と書かれていたことだった。特に「GTS:The Greatest Day」では、本書でZetterlingが言う「ドイツ軍は、ノルマンディ戦線では、8.8cm対空砲を対戦車任務にはほとんど使用せず、もっぱら(本来の任務である)対空任務と、間接砲撃任務に使用していた」という主張を採り入れている。そのため「GTS:The Greatest Day」にも、ドイツ軍の8.8cm対空砲ユニットは入っているが、対戦車能力は無く、対空と間接砲撃力しかない。これは結構思いきった処理で、それを見た時、ことの真偽はともかく、なるほどそういう歴史解釈もあるのかと、非常に興味深く感じた。

他にも本書では、連合軍航空機による空爆の間違ったイメージ……戦闘爆撃機によるロケット弾攻撃なんて車輌にそうそう当たらないし、その実害は思ったより少なく、むしろドイツ軍増援の移動を阻害したり、鉄道操車場などのインフラ攻撃の方が効力を発揮していたという記述も面白く、ドイツ軍戦闘車輌の主砲による装甲貫徹力の比較や、トレヴァー・N・デュピュイが考案した数式によってドイツ軍の戦闘効率を論理的に算定しようとする試みも、興味深い。

基本的には、ノルマンディ戦に参加したドイツ軍師団や独立部隊の説明が大半だが、そういった新視点での研究も多々盛り込まれており、ノルマンディ戦にご興味のあるウォーゲーマーなら、目を通しておいて損は無い一冊かなと。