Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】Harry Yeide「The Tank Killers」

Tank Killers: A History of America's World War II Tank Destroyer force (English Edition)

Tank Killers: A History of America's World War II Tank Destroyer force (English Edition)

 

「The Tank Killers」をペーパーバック版で購入。Kindle版の方が安いのは分かっていたけれど、やはり実体の書籍として欲しかったし、その方が読むだろうと思って。

サブタイトルは「第二次世界大戦でのアメリカ軍駆逐戦車部隊史」。北アフリカチュニジア戦での苦いデビューから、イタリア戦線、ノルマンディ戦、バルジ戦での駆逐戦車部隊の戦闘を扱っている。巻末には、各駆逐戦車大隊の戦歴が簡単にまとめられていて、参照するにも便利な一冊。

駆逐戦車部隊は、本来の用途からすれば、歩兵支援的な運用をするはずだが、旧来のウォーゲームでは「M4シャーマン戦車隊より少し防御力が低いだけの戦車部隊」として表現されることが多く、M4戦車同様に、攻撃的な運用をしても問題ないゲームも多々あったと思う。

そこに疑問を呈したウォーゲームが、BCS(Battalion Combat Series)で、ユニットとして駆逐戦車大隊はあるものの、それを単一ユニットとして地図盤上で運用することはまず無く、むしろ地図盤から取り去り、歩兵連隊に薄くばらまくように配属して対戦車効果をもたらすようにしている。ここはBCSのこだわりポイントのひとつでもあるし、駆逐戦車部隊を非常に上手く表現していると思う。

また本書を眺めて思うのは、1943年3月にチュニジアで敗北した駆逐戦車部隊=75mm砲装備の対戦車ハーフトラック部隊から、よくまあ1年も経たないうちに、M10駆逐戦車装備の部隊に生まれ変わったものだなあと。このあたり、アメリカ人の『使えないモノにこだわっても仕方ない』という実用主義(プラグマティズム)の現れなのかもしれない。