Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Tactical Combat Series】「GD'42」TCS4.0 Rules Review

※2022年10月11日 ジップロック版で再購入したので写真を撮り直し。
Tactical Combat Series(TCS)第15作目「GD'42」を購入。テーマは1942年11月、ソ連軍「火星作戦」におけるルチェッサ渓谷戦で、ルチェッサ河沿いに突破を目論むソ連第3機械化軍団と、それを阻止せんとするグロスドイッチェラント師団の戦闘を扱う。フルマップ3枚の大作なれど、地図1枚以下で遊べるシナリオも5本あり。雲霞の如く攻め寄せるソ連軍戦車(150台以上!)を、精鋭GD師団が撃退しまくるはず。

フルマップ3枚で描かれたルチェッサ渓谷。

主役のドイツ軍。精鋭グロスドイッチェラント師団は、歩兵が士気値2(優秀)、IV号戦車長砲身、III号突撃砲、マーダーII自走対戦車砲装備と頼もしいが、各車輌ユニットいずれも1ステップ=1車輌しかない。それ以外の歩兵師団の小隊ユニットも士気値は低く、1942年末の寒々しい戦況そのもの。

こちらはソ連軍。とにかく戦車が多い。1ユニットで5ステップ(5輛)、4ステップ(4輛)は当たり前。ただ、ある程度損害を被れば、大隊ごと退却してしまうし、実際そうなったのでリプレイをご参考に。

本作からTCSルールは、Ver4.0にアップデートされた。グラフィック面も一新されたため、リニューアル第1弾と云った趣である。TCS4.0への変更点は、デヴェロッパーズ・ノートに書いてあるが、それに準じて自分が感心した点を挙げておく。

・砲撃がアクションフェイズから外れた。妙に連携の良すぎる支援砲撃ができなくなったはず。

・地域射撃とポイント射撃 の結果表が統一。

・機関銃は、射撃済みになっても臨機射撃が可能に。

・回復も臨機射撃のトリガーになる。

・複数ステップの車両ユニットが登場。指揮統制の悪いソ連軍は、3~5台で1ユニットにされ、逆にドイツ軍は、1ユニット1台のまま柔軟に運用できる。

・複数ステップによるポイント射撃が可能に。

・ポイント射撃における攻防のマイナス修正がより大きくなった。弱い戦車もまとめて撃つことで撃破率を上げられるようになったが、防御力の優位性も高まったので、意外にプラマイゼロかもしれない。

・ポイント射撃の遠距離撃破率が向上し、近距離は抑制気味。確率計算すると分かるが、撃破率がなだらかに変化している。アウトレンジ射撃可能なリーチの長い戦車/砲はより有利に。

・車両突撃(1/3移動→射撃モードに変更→射撃)が追加。

・移動しなければ3回ポイント射撃が可能に。これはD&D3.0-3.5を思わせるルールである。動いて一発殴るか、足を止めて全力攻撃するか。おかげで「逐次躍進」「交互躍進」と云った戦術も再現可能になった。

・「ハッチ閉鎖」の削除。たしかに細かいルールは不要。ASLではないのだ。

・「未発令状態が3ターン以上続くと10ヘクス後退」の削除。これにより「作戦成功→未発令に→次の命令が受け取れず後退」 と云った妙な展開が無くなった。

・士気チェック表で、麻痺とSYRのコラムが入れ替わる。

SYRの後退ヘクスが固定値に。遮蔽地形に入ったら停止してもOK。遮蔽地形で停止するのは予備陣地に逃げ込むっぽくて良い。このルール変更で「Bloody Ridge」の日本軍も安心か?(ジャングル内をSYRしまくり、元の位置に戻るまで何ターンもかかった)

・大隊士気は、累積損害によって低下。以前は「大当たり」が出ないと大隊士気が落ちなかったが、単純に「損害が増せば士気が落ちる」に変わって良かっ たと思う。

・複合突撃の削除。まあ、突撃システムは2つあれば十分かと。

他にも視認線、砲撃、突撃戦闘の手順など変更点は多く、今読んだ限りではTCS3.1の問題点はいくつも改善されてるようだ。もっとも相変わらずルールの並べ方がイマイチだったり、書き方も曖昧だが、そこはもうTCS 愛と想像力で乗り切るしかない。しかし久しぶりにTCSルールを読みこんだら、プレイ意欲も高まったので、こうなったらコマンドルールありで遊んでしまおうかと目論んでいる。日本で「TCS4.0を遊んだ」と云うネット記事も見かけないしな・・・