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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

「Overlord」 Operation Overlord AAR

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「Overlord」は、ノルマンディ突破戦のみを扱ったゲーム「Killing Ground」に上陸時のルール、ユニット、地図を追加したエキスパンションセットで、昨年末「Killing Ground」ver2.0ルールと共に翻訳が公開されたので、遊んでみようと決意。基本システムは「パットン第3軍」等でお馴染みの戦力チット引きだが、補給と指揮を絡めた攻勢作戦や、詳細な地形効果など、巨視的・微視的に独自ルールが盛り込まれており、難易度は高くなっている。一応「Overlord」では、攻勢作戦や予備ルールが省かれているが、まず「Killing Ground」ver2.0ルールを読んだ後、「Overlord」での変更点を確認し、さらに第1ターン特別ルールに目を通す必要があり、かなり面倒ではある。今回も事前にルール・サマリーや戦闘結果表を自作し、じっくりシステムを読み込んだうえでプレイに臨んだが、とりあえず「Operation Overlord」シナリオ、12ターン完遂を目指した。

第1ターン(6月6日)、天候は重曇天、海上は時化。まず準備ステージ。連合軍の空挺降下から。イギリス第6空挺師団はペガサス・ブリッジを確保したが混乱も多く、アメリカ第82空挺師団は分散し、アメリカ第101空挺師団のみ穏当な降下を行った。艦砲射撃は、運良くオマハ海岸の武装拠点4ヶ所に命中。イギリス第9空挺大隊はメルヴィルの砲台を破壊し、アメリカ第2レンジャー大隊もオック岬の砲台除去に成功した。これによって手空きになったアメリカ第5レンジャー大隊はオマハ海岸へ増派。海岸抵抗値(戦力)は、ソード、ジュノーが3、ゴールド、オマハ、ユタが4に決定。最大7戦力チットを引く可能性もあったので、連合軍にとっては幸先良い展開である。

第1上陸フェイズ。海岸抵抗値が低かったため、上陸第一波の損害は軽微。第1ターンでは戦闘、移動、回復のいずれかしか行えないが、ほとんどの上陸部隊は移動を選択し、混乱状態のまま海岸を脱した(海岸を空けないと後続部隊がスタック制限に引っかかり上陸が遅延してしまう)。しかし移動余地のないオマハ海岸では、混乱(戦力1/2)のまま攻撃を行い、ソード海岸のイギリス軍もウィストレアムを攻撃し、これを占領。空挺部隊は回復のみ。ドイツ軍は、グループ7だけが活性化。オマハ海岸部隊の回復ならず。

第2上陸フェイズ。海岸抵抗チットが裏返され、抵抗値半減。ユタ海岸の海岸拠点は一掃され、ジュノー、ゴールド海岸も結合したが、この時点で連合軍支援ポイント(SP)が枯渇してしまい、以後の戦闘はSP無しの非支援下(戦力1/2)となる。空挺部隊は集結中。ドイツ軍は、グループ1、4、5、6が活性化。ドイツ第709歩兵師団第919連隊第II大隊が、ユタ海岸から2ヘクスへと迫る。

第3上陸フェイズ。ユタ海岸ではアメリカ第4歩兵師団と第101空挺師団が手を結び、ソード海岸から上陸したイギリス第3歩兵師団も第6空挺師団と合流する。ただし連合軍はほとんど回復に徹し、次フェイズの非支援下攻撃に備えた。

第4上陸フェイズ。オマハ海岸でアメリカ第1歩兵師団、第29歩兵師団が非支援下の2攻撃を行う。カナダ第3歩兵師団もクールスルを両岸から攻撃し、イギリス第50歩兵師団は(人工港予定地)アロマンシェへ迫った。

第5上陸フェイズ。ユタ海岸内陸ではアメリカ第4歩兵師団+第101空挺師団の共同攻撃が始まり、オマハ海岸のドイツ軍拠点はなおも粘り、一番長い日を生き残った。イギリス軍は、前フェイズに続いてクールスル、アロマンシェを攻め、これを確保。

終了ステージ。アメリカ第82空挺師団、イギリス第6空挺師団にグライダー大隊の増援が到着。だが空挺部隊が行える橋梁破壊は、いずれも失敗した。 

……と云う感じで、7段階に及ぶ特殊な第1ターンが終了。特別ルールは多いものの、頭に叩き込む必要はあまりなく、添付のPlayBookの指示に従えば、それなりにプレイできると思う。 連合軍が念頭に置くべきは、やはり早期の海岸堡拡大だろうか。部隊は、再編・混乱状態で上陸するので、すぐ回復させたいところだが、海岸ヘクスに踏みとどまると、作戦スケジュールそのものが遅延するので、空きヘクスがあるなら、たとえ混乱状態でも前進すべきかと。 ほとんどの海岸拠点ユニットはZOCを持たないため浸透移動もOK。一方ドイツ軍には、さして出来る事もないが、もし部隊が活性化したなら海岸ヘクスから2ヘクス以内に接近させ、上陸部隊に対してプレッシャーによる修正+2を与えてやる程度か。今回は、艦砲射撃がオマハ海岸のドイツ軍に当たりまくり、海岸抵抗値も低いと、連合軍にとってかなり幸運な展開だった。それでもオマハ海岸の拠点は掃討しきれなかったので、平均的な展開としては、もっと連合軍が苦戦すると思われる。

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第2ターン(6月7日)、天候は晴曇、海上は平穏。連合軍は航空ポイント6を航空妨害4、補給妨害2と割り振る。アメリカ軍4SP、イギリス軍1SPを得たが、各1SPを人工港建設修正に回す。なにしろ人工港と物資集積所が進捗しなければ、SPも戦闘部隊も円滑に揚陸できないし、戦闘もままならないのだ(現時点で、連合軍ユニットは混乱状態で上陸する)。このターンまで連合軍はすべて補給下とみなされるが、次ターンに補給切れとなるアメリカ第82空挺師団が補給範囲へ後退する(補給範囲は海岸から3ヘクス。道路は1/2ヘクスとして扱う)。ドイツ軍は4SPを獲得(本来は8SP獲得だが、補給妨害で4SP減)。そのほとんどが軍団HQの活性化に費やされ、反撃に転じる余力は無い。ドイツ第21装甲師団はオルヌ河両岸に配置につき、カーン前面の防衛に就いた。

第3ターン(6月8日)、天候は軽曇天、海上は平穏。アメリカ軍4SP、イギリス軍5SP獲得。アメリカ空挺部隊の一部が補給切れとなる。このターンから部隊の再統合(大隊ユニットを連隊にまとめる)が始まる。海岸には、アメリカ第5、第7、イギリス第1、第30軍団HQが上陸。この第3ターンまでに軍団HQを揚陸しなければ、海岸から離れた連合軍ユニットが補給切れになるので気をつけること。ドイツ軍は、再び補給妨害を受けて4SPのみ獲得。第12SS装甲師団をオルヌ河西岸に配置し、イギリスと対峙させた。

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第4ターン(6月9日)、天候は晴天、海上は平穏。アメリカ軍6SP、イギリス軍4SPを獲得。上陸戦闘で傷ついたアメリカ第1歩兵師団第16歩兵連隊は休養(4ターン後に復帰)。アメリカ第101空挺師団はサン・コム・デュモンを攻め落とし、イギリス第50歩兵師団+第7機甲師団は要衝バイユーに迫る。カナダ第3歩兵師団はヴィエルビルに籠もるドイツ第21装甲師団を攻めるも、1ステップロスさせたのみ。さすがブロニコフスキー戦闘団は頑強である。

第5ターン(6月10日)、天候は軽曇天、海上は平穏。米英軍ともに5SP獲得。アメリカ第101空挺師団は師団の総力を挙げてカランタンを攻撃。守るはフォン・デア・ハイテ大佐率いるドイツ第6降下猟兵連隊であり、精鋭同士の激突はドイツ軍に軍配が上がり、第101空挺は後退・混乱した。カーン前面では、高戦力チットを引いて波に乗るカナダ第3歩兵師団がネーベルヴェルファー砲の防御弾幕に阻まれ、3ステップロスの大損害。しかしイギリス第3歩兵師団はヴィエルビルからドイツ第21装甲師団を叩き出した。

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第6ターン(6月11日)、天候は晴天、海上は平穏。アメリカ軍7SP、イギリス軍5SPを獲得。補給妨害でドイツ軍SPを6削る。人工港と物資集積所の建設は順調で、今ターンから再編状態での上陸となる。航空支援を受けたイギリス第50歩兵師団は、バイユーを2ヘクスとも占領。 これで米英軍戦線がリンクされた。イギリス第51歩兵師団は、ドイツ第12SS装甲師団第25装甲擲弾兵連隊を攻めたが、連隊長クルト・(パンツァー)・マイヤー大佐に率いられた精兵は無傷。ドイツ軍は、補給妨害によってわずか2SPしか得られず。カーンには、ドイツ第101SS重戦車大隊(装甲値最強の4)が来援した。

第7ターン(6月12日)、天候は重曇天で雨、海上は時化。ようやくの悪天候。連合軍の機影は無くなったが、前ターンの補給妨害が響いてドイツ軍はSP不足に陥り、全HQを活性化できず、オマハ~ユタ海岸戦区で補給切れ部隊が続出した。アメリカ軍は6SP、イギリス軍は8SP獲得。 回復したアメリカ第101空挺師団は再びカランタンを攻撃する。守るドイツ第6降下猟兵連隊はSP不足から補給切れ(戦力1/2)であり、ステップロス。 イギリス第7機甲、イギリス第51歩兵師団、カナダ第3歩兵師団は協力し、再びパンツァー・マイヤー連隊に猛攻をかけたが、今回も後退はかなわず。 しかし頑強に抵抗するあまり、マイヤー連隊に包囲の危機が…… 。一方バイユーを落としたイギリス第50歩兵師団は、イギリス第79機甲師団と共に次ターンの補給切れも承知でティリーを抜け、フォントニーまで急進する。ここからカーン側面に迫られれば、ドイツ軍戦線の破綻に繋がるため、ドイツ第2装甲師団と第101SS重戦車大隊が迎撃に向かった。折しも次ターンは6月13日。伝説のヴィレル・ボカージュ戦当日である。「もう勝ったと思っているな」「そうらしい。では教育してやろう」 果たしてミハエル・ヴィットマン中尉は、奇跡を起こせるのか?

第7ターンまで連合軍は毎ターン、人工港・物資集積所の建設修正にSPを回した。この2要素を進捗させれば、物量を揚陸させる蛇口が太くなり、揚陸ユニットはすぐ戦闘に突入できる状態にもなる。勿論SPも徐々に増えるので、戦闘後の補充にも余裕が出るだろう。この時期はまだ連合軍軍団HQの指揮範囲も狭いため、無理に海岸堡を拡大せず、戦線の構築に務めた。MustAttackが免除される障害地形を利用して無駄な戦闘も控えた方が吉か。一方ドイツ軍には「今なら連合軍を叩ける!」と思える瞬間もあったが、実際に戦闘比を立ててみるととてもダイスを振る気にはならず、結局は戦線の整理、カーン周辺での陣地構築に徹した。総じて連合軍ばかりが忙しく、ドイツ軍はじっと我慢な展開だったが、何となくプレイしていたらイギリス軍がカーン側面に進出でき、なおかつSS重戦車大隊が迎撃に向かう展開になってニマリとした。 無理矢理ではなく、何となくってとこがポイントである。   

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第8ターン(6月13日)、天候は晴天、海上は平穏。アメリカ軍6SP、イギリス軍8SPを獲得。アメリカ第101空挺師団がカランタンを奪い、アメリカ第2機甲師団がイジニイを占領したため、オマハ-ユタ戦区が繋がった。イギリス軍は歩兵連隊+戦車大隊をフォントニーへ送り、ドイツ軍の反撃に備える。それでもドイツ軍は、SS自走砲兵の支援弾幕を受けて突入。第101SS重戦車大隊だけで攻撃2シフトを得たが、連合軍も航空支援2シフトでこれを相殺し、ヴィットマンたちは撃退された。またカーン前面では、パンツァー・マイヤー連隊が包囲攻撃を受け後退する。

第9ターン(6月14日)、天候は重曇天で雨、海上は時化。再び悪天候だが、ドイツ軍SPも枯渇気味。人工港・物資集積所の建設はさらに進み、アメリカ軍9SP、イギリス軍6SP獲得。またイギリス第30王立重砲兵旅団(通称AGRA)が到着する。アメリカ第2機甲師団は、オマハ-ユタ戦区を繋ぐ一級道路を確保するため、ヴィール運河に進出した第17SS装甲擲弾兵師団を攻撃したが失敗。イギリス第50歩兵師団もカーン前面で第12SS装甲師団に撃退され、イギリス第51歩兵師団はフォントニー攻撃に失敗した第2装甲師団を攻めたが、混乱状態にもかかわらず逆に押し返される始末であった。

第10ターン(6月15日)、天候は重曇天で雨、海上は時化。アメリカ軍9SP、イギリス軍8SP獲得。イギリス軍第1AGRAも上陸。このターンはサン・ローを目指すアメリカ第2歩兵師団、第30歩兵師団が前進したのみ。

第11ターン(6月16日)、天候は軽曇天、海上は平穏。アメリカ軍11SP、イギリス軍10SP獲得。 アメリカ第2機甲師団は再び2ヶ所で第17SS装甲擲弾兵師団を攻めたが、ともに失敗し、甚大な被害を被った。すくざまアメリカ第1歩兵師団が救援に向かう。イギリス第50歩兵師団、第51歩兵師団は第30AGRAの支援を受けて、カーン西方のブレトヴィルに籠もるドイツ装甲教導師団を攻撃。AGRAの攻勢弾幕は凄まじく(3シフト)、装甲値4のパンター大隊も損耗。またイギリス第7機甲師団がオーテイの防御陣地を奪取した。

第12ターン(6月17日)、天候は軽曇天で雨、海上は平穏。アメリカ軍11SP、イギリス軍10SP獲得。このターンで人工港、物資集積所が完成し、「増強」期間は終わる。次ターンからは「Killing Ground」ルールが始まり、完全に別ゲームな展開になるので、ここで終了とした。

連合軍は、ほぼ遅延なく人工港、物資集積所を完成させたものの、増援のアメリカ第2機甲師団オマハ海岸戦区ではなく、ユタ海岸からシェルブール攻略に向かわせるべきだった。シナリオ全体として補給が主眼であり、支援ポイント、補充ポイントのやりくりを求められる。今回、連合軍は人工港、物資集積所の建設にSPを回し、ちまちまと戦線構築に徹したので、地味な展開だったが、あえてそれを後回しにし、攻勢にSPを突っ込んだらどうなるか、また試してみたい。史実の「Killing Ground」開始日は7月6日なので、今回はかなり早い移行……もしかしてルール間違えたか?基本的にはMustAttackなゲームだが、Must免除地形も多く、SPも潤沢ではないので1ターンに行う戦闘回数は少ないはず。 実際に遊ぶなら「Killing Ground」の方が派手そうで、「Overlord」はあくまでそのお膳立てキットと云う位置付けかもしけないが、システムの根幹を学ぶには良いサイズかもしれない。