Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

GMT「A World at War」を学ぶ Part.1

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先日、ポラーニョの小説「第三帝国」も読んだことだし、そろそろその「第三帝国」直系の最新版である「A World at War」に触れようかと、いきなりバルバロッサ作戦シナリオを並べてみた。しかしルール(2003年版の和訳は2段組み208ページ)を精読していなかったので、そもそもユニットの個性も分かっていないし、地形効果も分かっていない状態。しかもシナリオの配置も、配置する戦力は決まっているけれど、どこにどう置くかはかなり自由。そのため脳内は『ソ連軍って前線に全戦力を貼っつけていいの?』とか『プリピャチ沼沢地って守りやすいの?それとも無視していいの?』とか『ユニットはスタックした方がいいの?それとも薄く二重防御線にした方がいいの?』と疑問符だらけに。

さらに本体ゲームには、ユニット一覧表などが入っていなかったため、BGG(Board Game Geek)から有志作のチャートをダウンロードして印刷してる間に日が暮れてしまった。

A World at War | Board Game | BoardGameGeek

これはやはり、ルールをよく読んでからプレイした方がいいし、プレイ指針や攻略記事も読んだ方がいいな……と思って「A World at War」専用サイトで探したら、まあ、あるわあるわ。さすがアバロンヒルの「Third Reich(第三帝国)」時代から、「Advanced Third Reich」「Empire of the Sun」時代を経て、21世紀の「A World at War」まで精通したマニアたちの研究記事がたっぷりと。「A World at War」専門誌「ULTRA」のバックナンバー(2005年~2010年)も無料で読めるが、アップデートされたルールを適用して書き直された記事は一部のみ。それだけでも読み応えがあるし、かなり参考になりそうだ。

ULTRA BackNumbers 2005-2010 

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早速、キャンペーンゲーム開始時(1939年秋)の、ポーランド攻略&防衛記事があったので、そこから訳してみた。文中では、詳細にルールや手順が説明されており、訳しているうちに『ああ、そういうルールなんだ』と分かってきたので、むしろこういった読み物でおおまかにルールや定石を学んでから、膨大なルールブックに取り組んでいった方が良さそうだ。

ただし、陸戦の解決は、非常にオーソドックスな戦闘比とダイス1個で判定するため、戦闘結果の幅は狭いし、結果もある程度予想できてしまう。そのためこの攻略記事も、長年の「第三帝国」マニアたちが理詰めで研究したものであり、非常に論理的。ポーランド空軍を無力化するのにドイツ軍は何戦力使えばいいか、どのヘクスをどれだけの戦力で攻めればいいかが、その成功確率と共に詳しく書いてある。まるで「第三帝国版・虎の穴(同人誌屋ではない)」に迷い込んでしまった感すらある。

正直言うと、自分は論理的な人間ではないし、ウォーゲームを理詰めで研究したり、最適解の探求も滅多にしないし、むしろ苦手な方。どちらかと言えば、場当たり式に、その場その場に適した行動を取っていくor選択していくのが好きなタイプ。なので、こういった論理的なウォーゲームはよく負ける。

それでも、ウォーゲームには、そういった理詰めで研究する楽しさもあるし、なにかワンタイトル、理詰めで研究するとしたら、この「A World at War」に向き合ってみたいなあと珍しく思った。

とは言え、手元にある和訳ルールは「A World at War」初版が発売された当時の、2003年版のルールなので、それ以降、かなり追加や修正がされているようだ。今回、ポーランド戦の記事を訳す中でも『ルール✕✕参照』とあるから、和訳ルールを見てみたら、そこがごっそり抜けていた(和訳公開後に追加されていた)ため、こりゃあ、本気でプレイするなら、最新版の和訳ルールを作るところからだな……とも思ったり。しかし、やるとしてもだいぶ後になりそうだ。

とりあえず手元の2003年版の和訳で、軽くポーランド戦からプレイしてみて、少しずつルールを覚えつつ、先に進んで行こうかなと。これはかなり長い旅になりそうだ……  

【参考文献】「新戦争論 グローバル時代の組織的暴力」「新訂第5版 安全保障学入門」

新戦争論―グローバル時代の組織的暴力

新戦争論―グローバル時代の組織的暴力

 

一昨日は、所沢古本まつりに行き、帰りに中村橋の古書店に寄り、そのまま練馬駅まで歩き、駅近くのBOOKOFFにも寄ってきた。まあ、特に期待はしておらず、単なるパトロール……のつもりだったが、なんとここで、メアリー・カルドーの「新戦争論」を定価以下で発見。散々、所沢で古書ブースを見たあげく、この日一番の出物がBOOKOFFにあったという……まあ、古書との出会いってそんなもんよね。

本書は、1990年代のボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争や、スーダンソマリア等のアフリカでの紛争を題材に、今までとは異なる組織的暴力=「新しい戦争」形態が生じ、旧来の「旧い戦争」のようには対処できないとしている。いわゆる「新しい戦争」学派の代表的な著作で、自分も前々から読んでみたかった。

とは言え、その「新しい戦争」に対処するには、国際機関やNGOや市民勢力等を交えて人道的解決を目指す……というアプローチ方法が、あまりに理想主義的であるという批判もある。また、本書の出版から20年以上経過した現在でも、国家間による「旧い戦争」の可能性は依然として残っており、戦争形態が完全に入れ替わったわけでもない。まあ、そういった現実が前提としてあるうえで、理想主義的な人々の主張も読んでみたかったと。 

新訂第5版 安全保障学入門

新訂第5版 安全保障学入門

 

実は昨年末に「新訂第5版 安全保障学入門」も購入し、積ん読のままだったが、こちらの冒頭では、まず国際政治学の学派ごとの紹介から始まり、その中でカルドーのような「コスモポリタニズム(世界市民)学派」も紹介されている。こういった国際政治や紛争解決を語るうえでも、そもそもその発言者がどのような思想的立ち位置なのかを知っておくのが大切だし、それによって客観的にその論を見れるかと思う。

自分の場合は、コスモポリタン的な理想は素晴らしいと思う反面、まだまだ旧来的な武力対立が続いている様を見ると、現実的にならざるを得ない……という感じだろうか。

【参考文献】ヒュー・トマス「スペイン市民戦争」

スペイン市民戦争

スペイン市民戦争

 

昨日は、所沢古本まつりの帰路、西武池袋線中村橋駅で下車し、駅前通りの古書店もチェックしたところ、ヒュー・トマスの「スペイン市民戦争」の新装版(1988年刊・ハードカバー・一巻本)を1000円で発見。これの旧装版(1952年刊・ソフトカバー・上下本)は、古本まつりの会場にも出ていたが、状態が悪かったのでスルーしてきて正解。まあ、こちらもカバーに汚れはあったが、やはり一冊にまとまったハードカバーの方が読みやすいしね。内容的には古いのだろうが、一応、古典として読んでおきたい。

スペイン市民戦争のウォーゲームと言えば、TSWW系列のBTW(Before the War/戦間期)シリーズ第1弾「La Guerra」が発売されるはずだが、予定はだいぶ遅れている。すでに昨年11月にはカウンターの印刷を開始するというアナウンスがあったが、またまた新型コロナの影響で、延び延びになっているようだ。自分もすでに前払い金を払っているので、到着したら、触れてみようと思う。このゲームが発売されたら、アントニー・ビーヴァーの「スペイン内戦(上下)」も読もうと思うので、それまではトマスの著作を読んで雰囲気作りをしておくしか。 

スペイン内戦――1936-1939 (上)

スペイン内戦――1936-1939 (上)

 
スペイン内戦――1936-1939 (下)

スペイン内戦――1936-1939 (下)

 

 

【参考文献】軍事研究1992年7月号別冊「海軍機動部隊」

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今日は、久しぶりに所沢古本まつりへ。今回は「乗り物」特集ということで、兵器系の雑誌もかなり出ていたが、あいにく自分は兵器メカマニアではないし、プラモデルの参考写真集が欲しいわけでもないので、そこらへんはほとんどスルーしてきたが、その中から「海軍機動部隊」(軍事研究1992年7月号別冊)なる一冊を購入。30年前の雑誌とは言え、内容的には面白そうだったので。 

中でも興味を惹かれたのが「太平洋戦争初期の洋上防空」「日本海軍の戦策・一向に改められなかった戦術、とくに戦闘陣形」 という記事で、防空戦術や艦隊フォーメーションとしての日米軍の違いに触れているあたり。個人的には、個々の艦が集まった際の艦隊運用や、その各国差に興味があるのだが、自分の探し方が悪いのか、この手の話題をまとめた本に出会っていない。もしかすると、あちこちの軍事雑誌に記事としては出ているのかもしれないが、その手の雑誌も毎号チェックしているわけでもないし、まあ、ちょっと見かけた時に買っておこうと。そろそろまた「TSWW:Day of Infamy」の未開拓シナリオにも挑戦したいしね。

【参考文献】アブラハム・ラビノビッチ「ヨムキプール戦争全史」

ヨムキプール戦争全史

ヨムキプール戦争全史

 

先日、土浦の古書店にて「ヨムキプール戦争全史」(2008年刊行・現在品切れ)を購入した。昨年行った際にも見かけていたが、定価4800円がプレミア価格8000円代になっていて、良さそうな本だけど高いなあ~と思って帰宅してからネットで確認したら、Amazon中古は13000円スタートだったので、なんだ、あれでも安い方だったのかと。まあ、BCS(Battalion Combat Series)の次々回作がこのヨムキプール(第四次中東)戦争らしいので、今から早めに予習しておこうと。

著者のラビノビッチ氏は、この戦争に関わった政治家や将軍から、中級指揮官、一兵卒に至るまで、さまざまな階層の人々にインタビューを行い、この戦争の推移を、さながら群像劇のようにまとめている。たとえて言うなら、コーネリアス・ライアンの「史上最大の作戦」「遠すぎた橋」や、ジョン・トーランド「バルジ大作戦」「大日本帝国の興亡」 のような形で、第四次中東戦争を記した一冊で、個人的には大好物な読み物スタイルになっている。実際、戦闘経緯も詳しく描かれ、ウォーゲーマーが参考にするにも向いている。ただ、戦車戦のシーンで、いちいち両軍の装備車両すべてを明記してはいないので『この場面、なに戦車と、なに戦車が戦っているんだろう?』と不明瞭なところもあった。まあ、そのあたりは、BCS第四次中東戦争が出るのを待つしか。

【C3 Series】「The Dogs of War」デザイナーズ&デベロッパーズノート翻訳

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シリーズ前作「Less Than 60 Miles」の時と同様、「The Dogs of War」のデザイナーズノートを翻訳し、本日、Thin Red Line GamesのBlogにアップされました。すでにルールや図表類は、馬場夫氏謹製の翻訳がアップされていますが、そちらと同じBlog記事に並んでいます。

今回はデザイナーズノートとデベロッパーズノートの両論併記という形ですが、これがまた「Less Than 60 Miles」とは全然違うテイストの読み物になっていますし、ゲームをお持ちではなくても、1980年代の仮想第三次世界大戦にご興味のある方は、楽しめるのではないでしょうか。特に「The Dogs of War」では、イギリス軍、西ドイツ軍、ベルギー軍が登場するため、多国籍軍としてのNATO軍の対応に焦点が当てられています。

基本的に今回のノートでは、「なんでもうまくいく(NATO側の対応に楽観的)」派の退役イギリス陸軍大佐のデベロッパー氏と、「これは演習ではない(NATO側の対応に悲観的)」派のゲームデザイナー氏の見解の相違が、それぞれ語られています。悲観的なゲームデザイナー氏に言わせれば、NATOは1968年のチェコ動乱「プラハの春」の時もまったく対応できていなかったし、それは1985年でも同様であろうと。しかし楽観的なデベロッパー氏に言わせれば、いや過去は過去、1985年当時は、レーガン大統領やサッチャー首相など、果断な決断を下せるリーダーシップがあったぞと。

一応、ゲームでは「これは演習ではない」的に、ワルシャワ条約軍の侵攻に対して、NATOの対応が遅れたという設定で始まりますが、まあ、こういった場合「摩擦」 が多めに生じたという想定の方が、展開としては興味深いですね。

ちなみにデザイナーズノートでは、西ドイツ軍の第四次編制についても触れられており、年末に出た「幻の東部戦線」を買っておいて良かったなと思いました。「NATO軍の歴史と現状」も買おうかな…… 

NATO軍の歴史と現状 (WAR MACHINE REPORT No.77)

NATO軍の歴史と現状 (WAR MACHINE REPORT No.77)

  • 発売日: 2019/02/27
  • メディア: 雑誌
 

 

【参考文献】マイケル・ジョーンズ「レニングラード封鎖」

レニングラード封鎖: 飢餓と非情の都市1941-44
 

ぶらり立ち寄った古書店にて「レニングラード封鎖」を購入。これも邦訳が出たのは2013年だが、すでに品切れでAmazon中古でも高値になっている。今回は定価以下での購入だったので、まずまずのヒット。 

レニングラード戦というと、昔懐かしい「攻防900日」(英語版は1969年初版)が有名だが、本書は、2008年に英語版として出版され、ソ連崩壊後に出てきた資料を反映させているとのこと。「攻防900日」ほどの大ボリュームではないが、その分、簡潔にまとめられている。

しかし我が家のウォーゲームで言うと、レニングラード包囲戦そのものに焦点を当てた作品は手元に無く、レニングラード周辺での戦闘を扱った「Roads to Leningrad」も「Operation Spark !」も、たいしてプレイしないまま売却してしまった。残るは「TSWW:Barbarossa」でレニングラード戦シナリオをやるしか。たしかに「TSWW:Barbarossa」には、包囲されたレニングラードの命綱となった、凍りついたラドガ湖を渡る「生の道」補給線ルールもあるので、試してみたい気もする。もっとも本書では、「生の道」というより「死の道」だったという記述もあり、旧ソ連が喧伝したような英雄都市ではなかったという事実も、しっかり学んでおきたい。