Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】喬良・王湘穂 「超限戦 21世紀の新しい戦争」

超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書)

超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書)

 

2001年に日本語版が発売され、品切れていた「超限戦」が新書化されたので購入。中国で原書が発行されたのは1999年だそうで、2001年の「9.11テロ」前にハイブリッド戦争に言及していたことで話題になったそうだが、自分が触れるのは初めて。マーチン・ファン・クレフェルトも、1991年の「戦争の変遷」で、すでに非正規戦に触れていたが、本書はより具体的にハイブリッド戦争に触れている。

もはや21世紀の戦争は、通常戦争やゲリラ戦争は優に及ばず、金融、メディア、心理戦争など、あらゆる境界や制限を超越して複合されているという意味で「超限戦」なのだろう。まあ、さすがに生態戦争(天候や気象を利用する)となると「?」と思ったりもするが、ちょうど今オーストラリアで起きている大規模な山火事のような災害なら人為的に起こせるだろうし、それも将来戦の一手段なのかもしれない。

ただ、自分の手元には、あいにくハイブリッド戦争をテーマとしたウォーゲームは無い。たぶん「ModernWar」誌あたりで発表されているゲームの中に、ハイブリッド戦的な作品はあるだろうが、まだまだ作品数は少ないと思う。なにしろハイブリッド戦自体、実例も少なく、現在進行形でもあることから、制作側としてもモデル化・ゲーム化しにくいのだろう。またハイブリッド戦争という言葉自体が、すでに中国・ロシアの戦争形態を表しているという話もあり、テーマ的にも絞られるのかもしれない。

一方、プレイする側としても、(自分も含めて)まだこの新時代の戦争観に追いつけていなかったり、むしろなじみ深い、旧来のクラウゼヴィッツ的な通常戦争ゲームを好む人も多いのではないだろうか。いずれ新時代の戦争が、普遍的な形でモデル化されたら触れてみたい気もするが、さまざまな分野での変化スピードが上がっている現代では、なかなかそれも難しいかもしれない。それよりは個々の、今現在の戦争を、その時の状況だけ切り取ったり、仮想設定を組み立てて、個別に表現していくという「取って出し」な形で対応するしかないのかも……などと思いつつ、自分も、もはや失われつつある、通常戦争ウォーゲームと、ノスタルジックにつき合っていくのだろうな。