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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【The Second World War】「TSWW:Day of Infamy」What If Wake Island Relief Operation Solo-Play AAR Part.1

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夏頃からVASSAL上でセットアップしていた「TSWW:Day of Infamy」の仮想・ウェーク島救援シナリオをようやくソロプレイしてみた。

史実での、日本軍による(第一次)ウェーク島攻略作戦は、1941年12月8日、真珠湾奇襲と時を同じくして開始された。しかし日本軍は、この島を簡単に攻略できると考え、その攻略部隊は、軽巡3隻、駆逐艦6隻という、わずかな陣容であった。しかし実際に上陸作戦を開始すると、海岸砲台からの砲撃と、守備隊戦闘機(戦闘可能だった、わずか4機のF4F-3)によって、駆逐艦2隻を撃沈され、退却するという散々な結果に終わっている。そこで12月23日、あらためて、重巡青葉を中心とする砲撃部隊や、真珠湾帰りの第2航空戦隊……空母蒼龍・飛龍を加えて、第二次ウェーク島攻略作戦を行い、ようやく島を占領した。

これに対してアメリカ軍も、空母エンタープライズサラトガを送ってウェーク島を救援しようとしたが、真珠湾での大打撃により、太平洋艦隊司令長官をキンメルからニミッツに変更する時期にあたり、その指揮系統の混乱から作戦は中止されている。

しかしこのシナリオは、もしも空母エンタープライズサラトガウェーク島の救援に向かっていたら?という想定を検証するものである。その場合、第2航空戦隊との間で、史実のセイロン島沖や珊瑚海海戦より前に、空母部隊同士の戦闘が発生するわけで、なかなか興味深い仮想シナリオではないかと思う。

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では、両軍の参加兵力を見てみよう。

まず日本軍は、第2航空戦隊(空母蒼龍、飛龍、航空巡洋艦筑摩、利根、駆逐艦2)、第6水雷戦隊(軽巡夕張、龍田、天竜駆逐艦6)、第6戦隊(重巡青葉、古鷹、加古、衣笠、駆逐艦4)に上陸部隊という陣容。シナリオの指定として、第6戦隊は、単独の艦砲射撃部隊として配置してもいいし、第2航空戦隊の援護部隊として配置してもいい。ただし「Day of Infamy」ルール17.C.1.g.iiiによって、日本軍艦隊は(空母が合成風力を得るべく艦隊から離れることを許しているため)1943年6月後半ターンまで、航空攻撃に対して、主力艦1+巡洋艦1+駆逐艦1までしか対空力を合算できないという制限がある。そのため、いくら艦艇を集めても、空母戦闘グループとしての対空力は上がらないので、今回の第6戦隊は、あくまで艦砲射撃部隊とした。

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対するアメリカ軍の2個空母戦闘グループは、その対空火力をすべて合算できる。また空母サラトガには、史実通り、ウェーク島に揚陸する戦闘機と海岸砲台ユニットも、輸送船に乗船する形で随伴している。となると、日本軍艦隊を攻撃する役目はエンタープライズ隊が担わせ、サラトガ隊はあくまで輸送船団の護衛とするのが良さそうだ。

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次に、シナリオの指定として、真珠湾帰りの日本海軍第2航空戦隊は、すでに燃料の1/3を消費した状態となっている。以前プレイした真珠湾奇襲シナリオでは、あまり燃料面には触れなかったが、今回はもう少し詳しく見てみよう。
各艦艇には、1移動フェイズ(約3.75日間)に戦略地図上を何ヘクス移動できるかを示す、戦略移動力(SMA:Strategic Movement Allowance)がある。戦略移動力は、カウンターには記載されておらず、別表に記されている。1ターン中には、4回の海上移動機会(自軍の移動フェイズ、自軍の突破フェイズ、相手方の移動フェイズ、相手方の突破フェイズ)があり、各艦艇は、戦略移動力の4倍の燃料、つまり1ターン(約15日間)での移動機会4回を、まるまる移動できるだけの燃料が積まれている。それ以上、ターンをまたいで移動を継続したいなら、洋上補給が必要ということ。

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VASSAL上では、各艦艇の戦略移動力は、カウンター右下に、水色の枠内に表示される。また、その隣の白い枠内に表示されている数字が、残余燃料である。

日本軍の空母飛龍の場合、戦略移動力は38なので、満タンならその4倍の、燃料152となる。しかしシナリオ開始時は、その2/3しかないため、残余燃料は100とする。しかし同じ空母蒼龍の場合、戦略移動力は29なので、満タン燃料で116、その1/3の残燃料76となる。

実際、空母蒼龍の積載燃料は3400トン、航続距離7680浬であり、空母飛龍の積載燃料も3750トン、航続距離7670浬とあるので、あまり差は無いように思う。ただ、空母飛龍は、公試で10250浬を達成したという話もあり、それを元に戦略移動力に差が付けられたのかもしれない。

と、ここまで読んで『TSWWって燃料消費計算が面倒だなあ』と思われたかもしれないが、むしろ「一律1/3消費済み」という処理は、TSWWとしてはかなり省略されているし、おおざっぱだ。

本来、各艦艇は、フェイズ毎に燃料消費が異なるが、海上任務グループとして編成されると、同一の移動力で移動しなければならない。第2航空戦隊の場合、空母を含んだうえ、すべての艦船が戦術移動力7以上のため、高速空母グループとして編成される。高速空母グループは、各フェイズ毎に21移動力でまとまって移動できる。

ここで面倒なのは、各艦艇の戦略移動力の差である。空母蒼龍は戦略移動力38、飛龍は29、航空巡洋艦筑摩と利根は31なので、1フェイズ中に21移動力消費できる。問題なのは、2隻の駆逐艦の戦略移動力が18しかないことだ。エンジンの大きい空母と巡洋艦は余裕で進めるが、駆逐艦は、通常の戦略移動力18を3超過消費して追随しなければならない。そのため、第2航空戦隊がそのまま移動を続けると、4回目の移動あたりで、駆逐艦の燃料が足りなくなってくるから、やはり洋上補給するか、駆逐艦の燃料が枯渇する前に寄港する……という計算も本来はしなければならないのだ。

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もっとおおざっぱなことに、このシナリオでは、具体的に日本軍を配置するヘクスが記されていない。ただ、真珠湾奇襲が、このシナリオに先立つ1941年12月前半ターンに行われ、その最後の移動機会で、第2航空戦隊はハワイ沖から退避したとしよう。そしてこのシナリオが開始される1941年12月後半ターンの最初の移動フェイズでウェーク島に接近するものとする。

また仮想状況として『日本軍は、アメリカ軍の救援部隊を察知していたのか?』という問題がある。 もし日本軍が、アメリカ軍の来援に気づいていなければ、第2航空戦隊はその航空戦力のすべてをウェーク島の航空制圧・地上爆撃に使うだろう。当然、母艦や、艦砲射撃部隊、上陸部隊の航空直掩は行わず、アメリカ軍空母の航空攻撃には対処できなくなってしまう。

そこで今回のソロプレイでは、日本軍はアメリカ軍の救援を察知しているものとする。ただ、その場合、第2航空戦隊の航空戦力を、どう割り振ればいいのかという問題が生じる。ウェーク島の爆撃を優先するのか、それとも母艦や上陸部隊の直掩にも戦闘機を回すのか。しかし飛龍・蒼龍合わせても、戦闘機隊は、零戦2スコードロン(0.5ステップ✕2)しかない。すべてをカバーすることはできないのだ。となると、母艦の直掩に零戦1スコードロン、ウェーク島爆撃隊の掩護に零戦1スコードロンということか。艦砲射撃用の第6戦隊、第6水雷戦隊、そして上陸部隊本隊に直掩機は回せない。まあ、シナリオの勝利条件的には、ウェーク島を取ることで得られる勝利ポイントの方が大きいため、日本軍としては、敵艦隊の撃滅は後回しにせざるを得ないか。この『島の占領を優先するのか、それとも敵艦隊の撃滅を優先するのか』という問題は、ミッドウェー作戦でも生じたジレンマでもあるので、ある意味、リトル・ミッドウェーとして、このシナリオを試してみることにしよう。

逆にアメリカ軍としては、島を取られても、艦船を撃沈したポイントで勝てる可能性もあるかもしれない。しかし、いくら第6戦隊、第6水雷戦隊が空からの攻撃に対して丸腰だと言っても、巡洋艦駆逐艦をいくら沈めても、ウェーク島を失ったポイントを埋め合られるほどではない。飛龍、蒼龍を2隻とも撃沈できれば、釣り合うかもしれないが、1941年の、まだ練度の低いアメリカ軍にそれが出来るかどうか。

というあたりを念頭に置いたうえで、ソロプレイ開始。しかし相変わらず、TSWWソロプレイは、図上演習的というか、事前に考えることが多くなるし、能書きも多くなるなあ。ちなみにこのソロプレイ、第二次ウェーク島攻略戦78周年記念プレイでもある。