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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】アントゥリオ・エチェヴァリア「軍事戦略入門」

軍事戦略入門 (シリーズ戦争学入門)

軍事戦略入門 (シリーズ戦争学入門)

 

創元社から新しく刊行されることになった「シリーズ戦争学入門」の第一弾「軍事戦略入門」を購入。著者は、アメリカ陸軍大学教授等を務めるアントゥリオ・エチェヴァリア。恐らくはコリン・グレイと同様、旧来的な軍事思想のクラウゼヴィッツ学派で、マーティン・ファン・クレフェルトに代表される新戦争学派・第4世代戦争学派とは異なる戦略思想の持ち主かと。やはりこういった本は、著者がどのような戦略思想の持ち主なのかという立ち位置を確認してから読むのが大切。

本書では、軍事戦略を「殲滅・撹乱戦略」「消耗・疲弊戦略」「強制・抑止戦略」「テロ・テロリズム戦略」「斬首・標的殺害戦略」に分類し、そのメリットとデメリットをそれぞれ簡単に解説している。分量的にもほどほどで、戦例も挙げて説明しているので、非常に読みやすく感じた。サイバー戦略、金融戦略にも触れているが、それが旧来のプロパガンダ、経済戦と根本的に違うのかという疑問も呈している。

また、リデルハートが提唱した「間接アプローチ戦略」に関しても、「自らの理論に合うように歴史を切り貼りしており」と手厳しい。実際、第二次大戦で勝利したのは「直接アプローチ」で攻めきったソ連軍じゃないかと。まあ、ウォーゲーム上でも、派手で一発芸的な「間接アプローチ」は人気があるが、自分としてはむしろ地味に戦果を積み重ねていく「消耗・疲弊戦略」の方を多用するタイプ。ウォーゲーマーも、戦略的にいろいろなタイプがいるしね。