Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの日記

GMT「Gathering Storm : Prequel to A World at War」

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先日のGMTセールで「A World at War」と一緒に「Gathering Storm」(2015年発売)も購入した。こちらは「A World at War 前夜」というサブタイトル通り、第二次世界大戦開戦前の、ヨーロッパの政戦略をテーマとしている。ゲームは1935年春、つまりヒトラーヴェルサイユ条約を破棄し、ドイツの再軍備を宣言した時点から始まる。各プレイヤーは、ドイツ、イタリア、イギリス、フランス、ソ連の主要国を担当し、来たる大戦への準備を進め(または政治的に大戦を遅らせ)、中小国と同盟し(または侵略し)、5カ国中2カ国が大戦に参戦するとゲーム終了となる。そしてこの「Gathering Storm」での結果を「A World at War」に引き継ぐこともできる。

この「Gathering Storm」は、ヨーロッパでの政治情勢を扱うが、アジア太平洋を扱う「Storm over Asia」は今年夏にGMTでプレオーダーが始まっている。そちらでは、プレイヤーは、アメリカ、日本、中国を担当するのだろう。一応、自分もプレオーダーする予定(今日現在、379/500オーダー)。

しかしこの「Gathering Storm」、BGG(Board Game Geek)はもちろん、GMTサイトでのユーザー評価も結構低い。特に「ルールブックにプレイ例がまったく無く、非常に読みにくい」「カウンターの例示も無く、どのコマを何に使うのか分からない」とあり、実際その通りだったりする。まあ、そのあたりは専用サイトで補完されているが、基本的には「A World at War」マニア向けの商品なのだろう。

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こちらがゲームマップ。各中小国には、どの主要国からの影響が大きいのかを示すボックスが記されている。ちなみに自分が、第二次大戦前を扱うゲームを手にしたのはこれが初めてだが、デザイナー自身も『この手のテーマは、アバロンヒルのOrigin of World War IIしかプレイしていない』とのこと。 

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こちらが主要国ディスプレイ。ここで各国の国家収入や、工場の稼働状態、軍事ユニットの動員、軍艦の建造などを管理する。 

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こちらが中小国に置かれる、主要国の影響を表す旗マーカー。これだけ見ると、ルールが簡単なマルチプレイゲームに見えなくもない。いや「A World at War」をプレイするよりかは簡単なのだろうが…… 

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こちらがドイツのカウンター。基本的にこのゲームは、自分の望む政治・軍備状況で第二次大戦に突入したいという、ある意味、第二次大戦の各国指導者のロールプレイングゲーム的な要素もあると思う。そのためドイツの場合、大戦前の戦争準備を、史実よりも海軍寄りにしてもいいし、それによって戦艦フリードリッヒ・デア・グロッセ(BB5)、戦艦ラインラント(BB5)、空母グラフ・ツェッペリン(CVL2)、空母エウロパ(CVL2)等の建艦を早めてもいいわけだ。

また逆に、自分なりのヒトラーとして『我が国は、東方に生存圏を拡大せねばならぬ。そのためにはソ連を絶滅させる必要があり、当然、陸軍の拡充と、ウラルの工業施設を叩ける超距離爆撃機が必要なのだ。海軍の諸君の出番は極めて少ない』とか言いだし、そちらに軍事研究を偏らせることもできる。

しかし当然、国家収入なり、軍備努力には制限があるから、一方に偏れば、もう一方への手当が史実よりも減ってしまう。そのあたりのジレンマを楽しめるかどうか。たぶん、自分は楽しめるクチ。 

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イタリアも、自分なりのムッソリーニになりきって『我が国は、かつてのローマ同様、再び地中海を制するのだ。そのためには英仏の艦隊と雌雄を決するための海軍力が必要なのだ』とか言いだし、戦艦ロムルス(BB5)や空母アクィラ(CVL2)を建造してもいい。ただしイタリアの国力でそれをやると、他の分野がどれだけ圧迫されてしまうのか…… 

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イギリスにも、戦艦クロムウェル(BB5)、戦艦ライオンハート(BB5)なるユニットが見えるが、まあ自分ならそこまでやらないだろうなと。

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フランスには、戦艦ナポレオン(BB5)、戦艦ジャンヌダルク(BB4)もあり……っていうか、このゲーム戦艦好きだな! まあ、戦艦という一見美味しそうな選択肢も混ぜておいて、実際の建艦には手間がかかることを理解するためのブラフ(囮)要素なのかも。またフランスの場合、マジノ線をアルデンヌまで延長することも可能で、ドイツ軍の初期電撃戦はどうなるのかという興味もある。そうなると、もはやこのゲーム、仮想・第二次世界大戦の事前設定構築ツールにもなりそうだ。 

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ソ連は、世界的な経済情勢から影響は受けない。そしてソ連の場合、指導部・軍部での意思統一が進めば進むほど国家の生産性が上がる仕組み。そのためには粛清(Purge)を行う必要があり、これを行わずには、戦争準備もままならないという酷い仕組み。恐ろシア…… 

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こちらはランダムイベントカード、144枚。主要国が、いくら計画的に戦争準備を整えても、世界的な経済動向や、中小国の勝手な動きにも影響されると。 

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こちらは、軍事研究の記録シート。国によって可不可もあるが、ジェット機、ロケット、核兵器の開発、戦略爆撃機、海軍航空隊(と空母)の訓練、戦艦の設計、対潜作戦の研究、魚雷、港湾攻撃能力、戦車、機密作戦、対防諜、暗号解読、占領地の統治、レーダー……などが、大戦前にどれだけ進捗したかを記録する。このあたりもプレイヤーの好みが出そうだ。 

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そしてこちらが「A World at War」への引き継ぎルール、大戦前状態の地図のオーバーレイ(ラインラント、チェコスロバキアポーランド回廊がドイツ領になる前の状態)、マジノ線と西方防壁(ウェストウォール)の拡張ヘクスマーカーと、内容物的には、かなりのボリュームがある。

先にも書いたが、本作には、各国指導者のロールプレイングゲーム的な側面もあり、自分の望む形で第二次大戦に突入するプロセスを味わえると思う。ゲーム自体は、1935年春に始まり、1940年冬まで扱う(1ターン=3ヶ月)が、ドイツとして、大戦を1940年まで遅らせてもいいし、イギリスやフランスが先制攻撃をかけてもいい。またイギリスもフランスもイタリアも中立のまま、独ソ開戦という状況もあり得るようだ。そういった歴史的な可能性を試すツールとしては、かなり面白そうに見える。もちろん、それを「A World at War」に引き継ぐとなると骨が折れそうだが、すでに「Gathering Storm」のルール自体は1/3ほど訳したので、いずれ実プレイに漕ぎ着けたい。 

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