Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】「砲兵から見た世界大戦 機動戦は戦いを変えたか」

「砲兵」から見た世界大戦: ――機動戦は戦いを変えたか (WW2セレクト)

「砲兵」から見た世界大戦: ――機動戦は戦いを変えたか (WW2セレクト)

 

第一次世界大戦から、戦間期を経て、第二次世界大戦を進む中で、砲兵という兵種がどのように運用され、また変化していったかを解説した一冊。これはかなり面白かった。と言うのも、大概のWWIIウォーゲームでは、戦車の効果はそれなりに表現されていても、砲兵を「単なる物理兵器」として表現している作品が多いからだ。本書では、いかに砲兵が重要だったかについて触れているので、こういった論をベースにしたWWIIウォーゲームがもっと出て欲しいと思う。

自分の経験として、砲兵効果の強力さを初めて知ったのは「GTS:The Devil's Cauldron」である。GTSの制作陣は『そもそも、今までのウォーゲームは、砲兵の効果を軽視し過ぎている』という見解から、今までにない形で砲兵効果を表現していた。それが、砲兵の弾幕効果である。GTSの間接砲撃は、相手にダメージを与えなくても、弾幕が張られ、相手の視界を奪う効果を持っている。この効果を用いれば、強力な敵戦車部隊に(ダメージが入らないのも前提で)砲撃を撃ち込み、その視界を遮り、長射程の主砲を使わせないまま、自軍の戦車隊なり対戦車砲を接近させ、討ち取ることもできる。さらに大概の歩兵大隊には、迫撃砲中隊が付随しているが、これがあらかじめ敵部隊の戦力を削りつつ、その視界を弾幕で覆い、自軍歩兵の突入支援をするという、非常に自然な流れを生み出していた。

こういった弾幕効果は、他のWWIIウォーゲームではあまり見られず、敵部隊を攻撃しても「当たりか外れ」の判定をするだけのものが多かった。そのため自分の周囲では「GTSは、砲兵ゲーム」と呼ばれるほど砲兵の重要度が高く、既存のウォーゲームに慣れた人々からは『砲兵の効果が強すぎるんじゃないか』と批判されることもあるが、いやいや実際の砲兵はこういうものだよと思ったりもする。そのGTSの砲兵効果の真理を理解するうえでも、本書は役に立ってくれそうだ。