Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Company Scale System】「Saipan:The Bloody Rock」Death Valley Solo-Play AAR

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昨日のシナリオ1に続いて「CSS:Saipan:The Bloody Rock」のシナリオ2「Death Valley」をソロプレイしてみた。このシナリオは、1944年6月23日(アメリカ軍上陸9日目)における、タッポーチョ山東の「死の谷」を巡る戦闘を扱っている。全6ターン。日本軍が立て籠もる岩場+塹壕or洞窟陣地をアメリカ軍が攻めるというオーソドックスな状況なので、いきなり夜間の玉砕突撃をやらせるシナリオ1よりも、入門者には向いていると思う。

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第1(0900時)ターン。イニシアチブ側のアメリカ軍は、派兵(Dispatch)ポイント2を払って、第27歩兵師団第165連隊フォーメーションから活性化。まずは日本軍陣地に接近しなければならないが、厄介なのが「パープルハート・リッジ」の向こうにあるヘクス46.30と46.29の洞窟である。洞窟内の日本軍ユニットには白兵戦が仕掛けられず、射撃するにも同一ヘクスに進入する必要がある。そして出来れば、工兵中隊を洞窟ヘクスに進入させ、工兵アクションを行わせて、洞窟を封鎖してしまいたい。しかし移動隊形の工兵ユニットは敵弾に当たりやすく(防御修整+2)、しかも46.31から46.30に進入しようとすれば、隣の45.30の日本軍スタックからも臨機射撃をくらってしまう。

そこでアメリカ軍は、スタックをバラしてまず1個歩兵中隊を先行させ、45.30からの臨機射撃を誘発。この臨機射撃によって歩兵中隊は潰走(盤外の師団ディスプレイへ退出)させられたが、45.30の日本軍スタックはそれ以上の臨機射撃が不可となった。アメリカ軍は、さらに1個歩兵中隊を46.30の洞窟ヘクスへ進ませ、洞窟内からの臨機射撃を引き受けてこれに耐え、ようやく臨機射撃がおさまったところで、工兵中隊を前進させた。この『囮を使って敵の臨機射撃チャンスを潰していく』テクニックは、ASLなど他の戦術級ゲームでも見られるが、先輩システムのGTSでは『部隊練度チェックに成功すれば何度でも臨機射撃できる(される)』ため、こういった手法は適用できない。

そしてこのターン、「玉砕」イベントが発動。日本軍前線の中央で指揮を執っていたAbe大尉が、早くも『もはやこれまで』と自暴自棄になり、塹壕から出て玉砕突撃を開始した。ちょうど目の前のアメリカ軍スタックは、すでに集中射撃(臨機射撃を不可とする代わりに射撃時の火力を1上昇させる)を行っており、この玉砕突撃に対して臨機射撃が行えなかったが、白兵戦でこれを殲滅し、いきなり日本軍戦線にぽっかり穴が開いてしまった。  

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第2(1100時)ターン。アメリカ軍工兵スタックは、46.30の洞窟封鎖に成功。しかしたとえ封鎖されても、隣接ヘクスにも洞窟がある場合、洞窟が繋がっていると見なされて、夜間浸透により逃げられてしまうため、その前に46.29の洞窟も塞ぐ必要がある。

またこのターンは、アメリカ軍の航空支援(毎ターン0~5箇所で行われる)が炸裂し、前線の日本軍は手酷く混乱させられた。なにしろ地上部隊からの攻撃では、岩場・塹壕・急斜面・ユニットの防御修整に阻まれ、滅多に射撃が当たらないが、航空支援には修正が一切入らないため、かなり頼もしい攻撃となっている(日本軍にとっては一番厄介かもしれない)。

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第3(1300時)ターン。アメリカ軍は、2つ目の洞窟を封鎖すべく、戦車の支援を受けた工兵中隊をヘクス46.29へ前進。そしてまたもアメリカ軍の航空支援が功を奏し、ヘクス45.30の日本軍スタックが殲滅された。アメリカ軍はこの間隙を突いて、「死の谷」の南端45.29と、タッポーチョ山の南44.30へ前進。 

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第4(1500時)ターン。アメリカ軍は、ヘクス46.29の洞窟を工兵中隊によって無事、封鎖。ヘクス43.30で頑強に粘っていた日本軍スタックも、航空支援で吹き飛ばし、遂に日本軍の第一線を殲滅した。

さて勝利条件としては現在、日本軍第43師団司令部があるヘクス44.28と、「死の谷」の中央ヘクス45.28をアメリカ軍が奪うと、日本軍の勝利得点が下がるのだが、得点が下がった状態で日本軍が師団チットを引くと、予備部隊を投入することができる。アメリカ軍としては、それはちょっと困るということで、あえて45.28を占領せぬまま、タッポーチョ山の攻略を開始……というところで、今回のソロプレイはお開きとした。多分あと2ターンあれば、残る日本軍も掃討されるだろう。

感想。イレギュラーな状況を扱うシナリオ1に比べて、非常にオーソドックスかつ手頃なサイズのシナリオだった。と言うかこの「Saipan:The Bloody Rock」には、小規模なシナリオが2つしかないので、事実上このシナリオ2が唯一遊びやすくてマトモなシナリオだと言えるかもしれない。

そしてこのシナリオ2に触れることで、アメリカ軍プレイヤーは日本軍陣地の攻略法を学べ、日本軍プレイヤーは狡猾な陣地の組み方を学べると思う。第1ターンのところでも書いたが、日本軍スタックは、その射撃ゾーンを複数組み合わせることで、十字砲火的な臨機射撃キルゾーンを作ることも出来る。これは実際、沖縄戦などでも見られた戦術で、やはりCSS/GTSの1ヘクス=500mというスケールでこそ再現されるものだと再認識した。

デザイナーのRoss Mortell自身、デザイナーズノートで『これまでの(1ヘクスが3.2kmで1ユニットが大隊規模の)太平洋戦ウォーゲームの日本軍は、ただその場に座って、死ぬのを待つような展開ばかりで退屈だった。しかしそれはゲームスケールが問題だった。1ヘクスが500mのCSSなら、日本軍プレイヤーは、いつ退却するか、いつ増援を送り込むか、いつ反撃するかという決断を楽しめる』というようなことを言っているので、その意図が汲み取れるシナリオだと思った。

また昨日に続いてGTSとの比較で言うと、師団チットでの第1アクションでも射撃が可能になったため、射撃機会が多くなったように感じる。ただしCSSでは師団チットも購入しなければカップに投入できないし、「1スタックから射撃できるのは1ユニットだけ」「臨機射撃は基本的に1回だけ」という制限も生まれたのだが、もしすでにGTSをプレイして、射撃チャンスが少ないなあ……と感じた方は、CSSの方が向いているかもしれない。射撃修正も少ないので、最終火力も求めやすいし。ただGTSの、やる気(部隊練度)次第でいくらでも臨機射撃できるところや、じっくりと攻撃の段取りに時間と手間をかけて、いざ連隊/戦闘団フォーメーションで攻撃!という仕組みも、それはそれでスリリングで面白いので是非是非。