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After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】コリン・グレイ「現代の戦略」

現代の戦略

現代の戦略

 

アメリカのレーガン政権でアドバイザーも務めた戦略思想家コリン・グレイの「現代の戦略」を購入。小規模紛争、核兵器、サイバー戦争、スペースパワーといった現代戦争の側面にも触れつつ、クラウゼヴィッツ学派として普遍的な戦争論理を見いだしていくという姿勢を取っている。そのため、もはやクラウゼヴィッツ的な国家間の通常戦争は薄れていくと主張しているマーティン・ファン・クレフェルトや、戦争文化に傾倒したジョン・キーガンの著作に対して異を唱えている箇所も多々あり。まあ、これくらいハッキリと、学派の違いを主張してくれると、読んでいる方としても気持ちが良い。個人的には、クレフェルトが推す低強度紛争や、キーガンが推す戦争文化よりは、昔ながらの通常戦争の方に興味があるので、本書のような立場から戦略を語ってくれる方が楽しめる。もちろん本書でも、低強度紛争や戦争文化にも言及しているが、軸足はそちらではない。

昨年、日本語版が出たルトワックの「戦略論」(グレイは、本書も推している)も面白かったが、こちらはそれをさらに上回る内容だと感じている。今のところ、これまで読んできた現代戦略書の中ではイチオシ。これから、折に触れて読み返すだろう。