Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Wargaming Column】ゲーマーモードとカジュアルモード

ウォーゲームにおいて、勝ちにこだわるあまり、 現実にはまず行わないであろう選択をすることがよくある。それが実際の軍隊シミュレーション教育中に起きてしまったという事例がこちら。

The Last Stand「米軍でウォーゲームが大普及したせいで生じる問題」

先日この「Gaming the Game」という論文も入手したが(N村氏感謝!)、 まあ「The Operational Art of War」という一般向けゲームを使っている以上、勝つために現実から離隔するのも仕方ないと思う。所詮はゲームだもの。

しかし重要なのは「A Study of the Gamer Mode in Educational Wargamig」 とサブタイトルにもあるように、勝つために現実から離隔してしまう状態を 「ゲーマーモード」という造語でくくったことである。おお、なんと便利な!これからは「あいつ、昨日ゲーマーモード発動しやがってさ~」とか 「今日はお互いゲーマーモードで対戦しましょう」と使うのも宜しいかと。

しかしなぜゲーマーモードという状態が発生するかと言えば、 ウォーゲームが史実や現実を内包し、その再現をも目指しているからだと思う。「史実ではモスクワに行けませんでした」とか 「現実にはタイガー戦車はM4シャーマン戦車より強力でした」など、 あらかじめ背景ストーリーが盛り込まれている以上、それと離隔するようなプレイは違和感を生んでしまう。

もちろん背景を知らなかったり、興味がなければ違和感も生まれず、 あえて背景を無視してゲーマーモードでプレイするのも可能である。背景と実プレイという二重ストーリーをどう提供するかは、ゲームデザイナーの思想であり、その表現は彼らの手腕にかかっている。またそのゲームをどう遊ぶかはプレイヤーが自由に選択できる。ここでデザイナーとプレイヤーの思想が異なっていたり、異なる遊び方のプレイヤー同士が対戦すると齟齬が生じるが、できればその違いを楽しむぐらいの気持ちでウォーゲームに接したいものだ。

あるいは先にも書いたように、あらかじめどのモードで遊ぶか、背景を無視してでも徹底的に計算づくで勝ちを目指すゲーマーモードなのか、一応勝ちは意識するけれど、雰囲気を楽しむ寄りのカジュアルモードなのか、そのあたりを事前にすり合わせるのも、楽しいんじゃないかと。

ちなみに自分は、ゲーマーモードするほどの力量は無いし、現実から大きく逸脱するプレイは控えるカジュアルモード派だと思う。そもそもゲーマーモードが通用しにくい、ランダムチット引きが好きだし。いや、ゲーマーモードな相手と戦いたくないからチット好きなのかもしれない!納得!