Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】「湾岸戦争大戦車戦(上下)」

湾岸戦争大戦車戦(上) (史上最大にして最後の機甲戦)

湾岸戦争大戦車戦(上) (史上最大にして最後の機甲戦)

 
湾岸戦争大戦車戦(下) (史上最大にして最後の機甲戦)

湾岸戦争大戦車戦(下) (史上最大にして最後の機甲戦)

 

雑誌「軍事研究」連載をまとめて、加筆・訂正された「湾岸戦争大戦車戦 (上下)」を購入。しかし今時珍しい、扇情的かつストレートな題名ですな……

さすが前書きで「世界最高水準の湾岸戦争地上戦に関する著作」と豪語するだけあって、内容はかなり読み応えがある。戦略レベルでは、各国の動員体制から作戦立案に触れ、作戦レベルでは、師団~旅団・連隊~大隊単位での行動を解説。戦術レベルでは、車輌一両単位の行動まで克明に記しており、まさに湾岸戦争地上戦は、これだけでOKな内容になっている。勿論、単なる戦闘記録だけでなく、司令官クラスの確執、戦闘装備の刷新問題、予備の奪い合い、各部隊の自己主張など、人間組織が醸し出すアレやコレも記されていて◎。そして何より「空爆で圧勝」という湾岸戦争のイメージを覆し、イラク軍も巧緻な待ち伏せ攻撃を仕掛けていたなど、湾岸地上戦のディティールが読み解けるのが嬉しい。

しかし惜しいのは、この本に記されている戦術戦闘を追体験できる、ボード・ウォーゲームが見あたらないという悲しい事実。まあ、いずれそういったゲームも出版されるかもしれないが、果たして……