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Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退したウォーゲーマーの置き土産

【Wargaming Book】浦安で「無血戦争」を読んだ日

無血戦争

無血戦争

 

「無血戦争」がホビージャパン社から翻訳出版されたのは、1993年12月。当時、自分は書店員として働いてたにもかかわらず、あまりに忙しく&ゲームとは疎遠で、ずっと未所有・未読のままだった。ところが本書が浦安市立図書館にあると分かり、早速行ってみる事に。案内カウンターで訊ねてみると、通常は地下収蔵庫にあるそうで、 道理で軍事書の棚に無いはずだよと思いつつ、本とご対面。3時間ほどソファに座って、メモを取りつつ読み通した。二段組み・300ページもあるので熟読は無理だったが、軽く御紹介なぞ。

「第1部:背景」は、ウォーゲーム誕生の歴史から。フォン・ブラスコヴィッツ親子による兵棋クリークスシュピールの開発や、各国軍で行われたウォーゲーミングが紹介されている。勿論、ミッドウェイ図演での宇垣少将・損害改変事件も。またアメリカ海軍大学でのウォーゲーム発展の歴史が詳しく書かれ、対日戦シミュレーションでは神風攻撃以外をすべて予測できたと豪語する一方、1ターン3分単位の戦術級海戦ゲームが役立たずだったとも述べられている (実際のWWII海戦では、より短時間に多くの事象が発生したため)。そしてチャールズ・ロバーツがホビー・ウォーゲームを出版し、彼の戦闘結果表(あのアバロンヒル・クラシックの!)を見て、ランド研究所が自分たちのウォーゲームと似ていると驚く一方、ロバーツもランド研究所のゲームに用いられていたヘクスを頂戴したり。ここからホビー・ウォーゲームの歴史が語られるが、すでにこの頃からユーザーがゲームの欠点をあげつらい、酷評していたらしく、それにキレた製作者側が、評論家格付け、批評信頼係数なる概念でもって「お前の批評は信頼できるのか?」と反撃しかけていたのが興味深い。

「第2部:原理」は、ゲームデザイナー必読の内容。たとえば「プレイ順に従ってルールを説明する」「ルールの組み合わせ作用をたくさん例示する」「重要なルール、特殊なルールは元になる理論を説明する」等々、まんまゲームルールの執筆に使えそうな教示ばかり。またプレイヤーが遊びたくなるゲームを作るべきだし、プレイヤーがもっと上手くなりたいと思うゲームを作るべきだとも提唱。そのために「あなたの観客を知れ」って教えは、小説も同じかな。さらにゲーム評価の基準についても触れ、ゲーム評論とは、デザイナーの設定したテーマがきちんと表現されているか、そしてそのテーマは表現・達成する価値があるかどうかを見定めなさいと。当然リプレイの書き方もゲームテーマについて洞察し、それに対する問題を洗い出し、提起するべきだと述べており、ここら辺は自分を含むウォーゲームbloggerにも勉強になるはず。

「第3部:将来の展望」は、軍用シミュレーションの進化が中心だが、引き続きデザイン論について「リアリズムとは技術的詳細さではなく、プレイしやすさとは抽象化・簡潔さに等しいワケではない」って言葉が素敵。ウォーゲーマー人口の拡大については、 そもそも「一般人はウォーゲームに対して関心も知識も無い」と記し、ホビー・ウォーゲームへの偏見、拒絶反応も認めているのが現実的だった。

軍用、商用、ホビー・ウォーゲームまとめて語った本だが、ウォーゲーマーが思ったり、考えるであろう事柄が詰まった一冊だった。勿論、ウォーゲームの問題すべてに答えてはいないし、本書が唯一の正解でもないのだろうが、読む価値は大いにあり。どこかで復刊してくれないかな ……と読後感に浸りつつ、夕暮れの浦安駅までてくてく。そんな午後だった。