Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

SPI「Atlantic Wall」 Solo-Play AAR

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今年は、ノルマンディ上陸作戦65周年なので、我が家に眠る未プレイのノルマンディ戦ゲームを消化したいと思っている。特にSPI/HJ「大西洋の壁」は、20年近く押し入れで眠ってるゲームだが、実はこれ自分の所有物ではなく、Mi-boh氏が学生時代に購入したモノ。当時、自分がルールを読んでインストするために預かったものの、ちょうど就職で忙しくてプレイできず、そのまま現在に至る曰く付きの一品である。

とにかく全然プレイできていないので、練習がてらソロプレイをしてみる事にした。 勿論キャンペーンは物理的にも時間的にも無理なので、無難にイギリス・カナダ軍の上陸シナリオを選んでみた。このシナリオなら空挺降下もあり、カーン北方のボカージュ効果も検証できそうだし。※実際にはカーン北方にボカージュ地帯は無いのだが、本ゲームでは連合軍の前進を緩めるためか、ボカージュが書き足されている。

しかし並べてみたはみたものの、ユニットにも地図にも配置情報はまったく書かれておらず、いちいちシナリオと首っ引きでユニットを配置してくれなんて最近のユーザーフレンドリーなゲームに慣れた身には苦痛過ぎる。しかもシナリオ情報にはユニット国籍が明記されておらず「第6空挺師団が1個大隊足りない!と思ったらカナダ軍か!」とか「コマンド部隊が1個足りない!と思ったら自由フランス軍か!」とか叫んだり、イギリス第3歩兵師団とカナダ第3歩兵師団の両方にカニンガム准将と云う同名・同階級の指揮官がいて混乱したり。ちなみに空挺チャートを別表にせず、地図Aに印刷してあるのも困りもの。地図Dだけで遊べるシナリオなのに地図Aも必要になるのだから……

またドイツ軍Ost中隊(ロシア人の捕虜部隊)ユニットには何の表記も無く、逆に砲台ユニットは100mmや122mm等の砲種の違いが明記されているくせに能力値はまったく一緒で、呆れる部分もあった。

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ゲームは、ジョン・ハワード少佐率いるグライダー中隊の登場から開始。ハワード隊には史実通りオルヌ川にかかる通称ペガサス・ブリッジを確保させ、イギリス第6空挺師団本隊はカーン北東の平野部に降ろした。しかし降着先導員(パスファインダー)の誘導がうまくいかず、18個の空挺中隊のうち全滅5、戦力減少10となるも、 ハワード隊との合流には成功し上陸部隊の来援を待つ事に。

第一波上陸に先立ち、連合軍の戦略爆撃・艦砲射撃が始まり、ドイツ軍の防衛火点5を吹き飛ばし、陣地・砲台含めて14を制圧。ドイツ軍砲台も第一波に対し射撃を浴びせ、2個戦車中隊を撃沈した。そしていよいよ第一波上陸。自力航行した水陸両用DD戦車は5中隊が沈没。しかし歩兵損害は1中隊のみと軽微で、ドイツ軍の小火器応戦も効果薄。連合軍第一波は防衛火点3、陣地1を除去し、掃岸工兵によって開かれた突破口数はソード海岸3/12、ジュノー海岸6/20、ゴールド海岸7/20となった。

第二波上陸に先立ち、再び艦砲射撃が砲台3、防衛火点2を除去。ドイツ軍の応戦と漂流による第二波の損害は戦車4、歩兵4中隊。しかし早くもソード海岸を脱したコマンド部隊は第6空挺師団との合流を目指し、内陸に進んでドイツ軍砲台を撃破。一部はウィストレアムに接近した。突破口数はソード海岸4/12、ジュノー海岸9/20、ゴールド海岸7/20。

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そして第三波上陸。すでに艦砲射撃の目標たりえる固定ユニットも少なく、1ヶ所に二重三重の艦砲チェックを叩き込み、砲台2、防衛火点1を除去。第三波の 損害は、戦車2、歩兵4、工兵1中隊だが、ジュノー海岸の一部を除いて3海岸をほぼ確保し、内陸侵攻の準備に入った。突破口数は、ソード海岸9/12、 ジュノー海岸17/20、ゴールド海岸11/20。

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続いてドイツ軍フェイズだが、連合軍が戦術爆撃力160を割り当てたため、ほとんど移動できず、風に流された空挺中隊1を除去したのみ。と云う感じで、とりあえず第1ターンだけソロプレイをしてみた。

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デザイナー本人が認めているが、上陸部分は本質的にゲームではなく、プレイヤーの作戦・意図が介在する余地はほとんどない。ルールに言われるままダイスチェックを続けるばかりだが、一応「うまくいくのか?」的な緊張感があり、つまらなくはなかった (ドイツ軍プレイヤーは叩かれるばかりで辛いだろうが)。勿論ゲームとしてはもっと抽象化して良いと思うのが、あえてここまでディティールを掘り下げた所に本作の価値がある。ちなみに第1ターン完了までに約2時間かかった……

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さて第2ターン開始……と思ったら、増援用のイギリス軍分割ユニットが足りない! 上陸した中隊を大隊にまとめれば分割ユニットが捻出できるが、そんな手順は上陸段階にはないため、仕方なく勝手に再編成してみた。

このターン、コマンド部隊はウィルストレアムを奪取し、ゴールド海岸から揚がった第50歩兵師団はティエルスヴィルを占領。しかし偶数ターン(満潮)は突破口が開けず、ゲームは上陸段階のまま。

一方、ドイツ軍増援としてIV号戦車含む第21装甲師団先遣隊がカーンに到着。ブロニコフスキー大佐は史実ならここで第84軍団長マルクス大将から「貴官が英軍を海に追い落とせなかったらこの戦争は負けだ」と督戦されたり、悲嘆にくれる第716歩兵師団長リヒター少将を慰めたりしてる頃である。

そして第3ターン。再び干潮となった3海岸はようやく必要突破口を確保。これで重装備の砲兵隊なども陸揚げ可能になるが、そうはさせじとブロニコフスキー戦闘団がカーン運河沿いに北上。 英軍1歩兵、1工兵中隊を踏み潰して、イギリス第6空挺師団の孤立を図った。

しかし第4ターン。連合軍は、強制混乱してしまう夜間戦闘を敢行し、ブロニコフスキー戦闘団を包囲して1歩兵大隊を除去した。こうしてドイツ軍のつたない反撃も潰え、一番長い日は終わった……。

とにかく第4ターンまでプレイできた。煩雑な上陸侵攻段階さえ終われば、その後はさして面倒ではなく、ユニットの多さ以外はごく平均的ゲームとして遊べると思う。ただし古いゲームにありがちな不親切な部分はフォローすべきで、戦闘結果表も非常に分かりにくかったので、改良版(上陸時・内陸侵攻時の2パターン)を自作してからプレイに臨んだ。今回の収穫を、次は是非対戦に繋げたい。