Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】K.R.グリーンフィールド編「歴史的決断(上下)」

歴史的決断〈上〉 (ちくま学芸文庫)

歴史的決断〈上〉 (ちくま学芸文庫)

 
歴史的決断〈下〉 (ちくま学芸文庫)

歴史的決断〈下〉 (ちくま学芸文庫)

 

2004年に文庫化された「歴史的決断(上下)」を購入。原題は「Command Decision」。アメリ陸軍省戦史部が著した「第二次世界大戦陸軍戦史」全90巻のうち、唯一、商業出版された、統帥決断研究編とのこと。上下巻で20の軍事的決断を採り上げ、「日本の開戦」「対ソ援助ルート」「原子爆弾投下」と言った戦略レベルから、「(ノルマンディでの)独軍包囲作戦」「アルンヘム空挺作戦」レベルまで扱っている。

各章の内容は、戦闘の細かい経緯よりも、その作戦がなぜ実行されたかという意志決定プロセスを主眼に据え、計画の立案から、対案、政治的配慮、補給による束縛などを経て、ひとつの作戦計画が完成するまでを記している。WWIIウォーゲームで言うと、作戦立案にまで関わるようなゲームなら参考になるかと。

個人的に面白かったのは、「アンツィオ上陸作戦」のくだり。この作戦背景に詳しくないので、米英指揮官たちの軋轢も興味深く読めた。「幅の広い戦線」は、例のアイゼンハワー案vsモントゴメリー案。そう言えば、しばらく「Onslaught」やってないなあ。惜しむらくはアメリカ軍編纂なので、東部戦線項目が皆無なのと、初版が1959年と古いため、その後、新しい事実が出ているのかもしれないというあたりか。まあ、その点を差っ引いても、概ねウォーゲーマー向きの本だと思う。