Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Musket & Pike Series】GMT「This Accursed Civil War」

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「この呪われし内戦」とでも訳すのだろうか。近世初頭のヨーロッパ会戦を戦術級で表した Musket & Pikeシリーズ第1弾ゲームである。本作には1642-45年の清教徒(ピューリタン)革命での5会戦を収録している。清教徒革命については、自分も映画「クロムウェル」を観た程度であるが、王党派vs議会派のイギリス内戦である。名高いクロムウェルは議会派の騎兵将校で、鉄騎兵(アイアンサイド)と呼ばれる騎兵隊を率いて活躍。 しかし議会派の中で頭角を現すだけなら英雄譚ぽいものの、その後で国王は斬首するわ、反対派は弾圧するわ、アイルランドで虐殺やるわと独裁政治を進めていく。護国卿(Lord Protecter of Engrand)と呼ばれるが、死後に王政復古が成されると墓を暴かれる始末。 一応現在では、名誉回復されているようだが、ウォーゲームの題材としては興味深い人物で、長槍パイク隊の両翼にマスケット銃部隊を配置する、いわゆるスウェーデン方式を採り入れる事で 新編成軍(New Model Army)なる国民軍を勝利させた人物だ。

ゲームスケールは1ヘクス=100ヤード、1ターン=20~30分。収録された会戦は「エッジヒル」「第一次ニューベリー」「マーストンムーア」「第二次ニューベリー」「ネイズビー」。

戦闘技術の歴史3 近世編

戦闘技術の歴史3 近世編

 

Musket & Pike シリーズの基本的なルールとして、まず両軍プレイヤーは、3~5のウイングと呼ばれるユニット集団を指揮する。各ウイングにはウイング指揮官があり、その上位に軍指揮官が存在する。両軍のウイングは、突撃・準備・待機・回復命令状態の順番で活性化し、もし両軍に突撃ウイングがある場合は、より多い方が先に活性化し、同数の場合は、指揮官の指揮値が良いウイングから活性化する。

活性化ウイングは、継続チェックによって1ターンに最高3回まで活性化でき、活性化するたびに射撃や白兵戦が行える。命令によっては不可能な行動(敵への移動、再編、回復)もあり、たとえば突撃命令を受けていないと敵に隣接できず、待機または回復命令を受けていないと士気回復が行えない。しかも命令変更はダイスチェックによって行うため、攻撃したくてもor回復したくてもできない場面がまま生じる。

しかし継続と命令変更ダイス修正を持つ良好な指揮官がいれば、突撃命令で攻撃→待機命令に変えて回復→また突撃命令出して攻撃、のような離れ業を1ターン中に続けて行える可能性もあり、非常に強力である。無論これを阻むため、非活性化側は割込を行い、両軍で活性化の奪い合いとなる。

戦闘ユニットには、騎兵、歩兵、砲兵がある。砲兵は10ヘクス以上の射程を持ち、ある一定の射程内なら、水平射撃によって射線上の全ユニットを(敵も味方も)に被害を及ぼせるが、砲兵が射撃できるのは1ターンに1回のみである。騎兵と歩兵は、射程1ヘクスを持ち、敵に隣接した場合、射撃するか白兵戦をするかを選べる。騎兵は2回射撃すると弾が尽き、さらなる射撃を行うには弾薬の再装填が必要である。また重歩兵は、撃っただけでも士気チェックを課せる斉射が行える。

戦闘ユニットは、相手の行動に対してリアクション移動や射撃ができ、たとえば隣接してきた敵に対して斉射を浴びせるとか、接近してきた騎兵をリアクション移動(迎撃)で足止めする事も可能である。騎兵と歩兵ユニットの被害は、フォーメーション、戦力、士気で表される。フォーメーション・ヒットは隊形の乱れで、白兵戦をすると必ず1ヒット受け、移動困難な地形に入ったり、射撃を受けても1ヒットくらう場合もある。2ヒット受けると移動不能となり、ヒットを取り除くには再編が必要である。戦力は射撃によって削られ、死傷ポイントが額面戦力の約半分に達すると、死傷臨界と判断され、士気チェックを課される。士気チェックに失敗して動揺状態になると、額面士気が1落ち、さらに崩壊状態に陥ると士気が1になってしまう。

士気崩壊ユニットは回復しない限り、地図盤端に向かって敗走する。またウイングの全ユニットが士気動揺、混乱、除去されていた場合は、そのウイングは、強制的に回復命令にされてしまう。両軍は除去ユニット、また捕獲した砲兵によってVPを得て勝敗を決する。さらに全ウイングが回復命令になった軍は、降伏とみなす。

すでに何回か練習ソロプレイを行っているが、Musket & Pike シリーズの活性化システムには会戦を大局的にコントロールする楽しさがあり、ウイング毎の継続・命令システムには戦場のままならなさが含まれ、意外に細かい戦術戦闘で指揮の巧みさを問われるゲームだと感じた。これから各作品に収録された戦いを少しずつプレイしていきたい。