Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【参考文献】Martin van Creveld 他「Air Power and Maneuver Warfare」

Airpower and Maneuver Warfare

Airpower and Maneuver Warfare

 

日本でも「補給戦」「戦争の変遷」等でお馴染みのマーティン・ファン・クレフェルト他による「Air Power and Maneuver Warfare」を購入。Kindle版なら5ドルで買えたが、今回も書籍版を購入。しかしAmazon.Japanのオンデマンド印刷らしく、写真が不鮮明だったり、一部文字がズレているのが難点。

本書の初版は、1994年。アメリカの空軍大学(Air War College)で使われた軍事史用のテキストで、その名の通り、エアパワーと機動戦についての教科書的内容になっている。

序盤は、機動戦と消耗戦の違いについて。まずは機動戦の必須要素として、作戦テンポ(OODAループ)、重点、奇襲、複合兵科、柔軟性、非中央集権的な指揮を挙げているが、このあたり、よくウォーゲームでも表現される要素だなと。またその機動戦の定義を踏まえ、航空戦力の関与も含めて、第二次大戦時のドイツ軍のポーランド侵攻、フランス侵攻、ソ連侵攻を例にして解説している。

さらに赤軍の創設時からの進化に伴ったソ連軍式の機動戦も紹介し、その必須要素として、機動性と作戦テンポの速さ、決定的な戦区への兵力の集中、奇襲、戦闘活動性(アメリカ式に言うなら攻撃的精神)とイニシアチブの獲得、戦闘効率の維持、現実的な作戦計画、組織内の協調、縦深と、微妙に異なる性質も記している。また東部戦線におけるソ連空軍の戦力集中度(配置部隊の濃密さ)も記し、機動戦でのエアパワーの活用にも触れている。そろそろ「TSWW:Barbarossa」も発売されるはずなので、この独ソ戦あたりが一番読みたかった。

さらに中東戦争でのイスラエル湾岸戦争についての章もあり。湾岸戦争については「あれは機動戦だったのか?」という疑問を、作戦テンポ(OODAループ)、重点、奇襲、複合兵科、柔軟性、非中央集権的な指揮に沿って解説している。つまり、テレビで多国籍軍の派兵状況が映し出されているのに奇襲効果はあったのか?等々。まあ、このあたりはざっと読み流した感じ。

クレフェルトも、本来は「戦争文化論」とか「戦争の変遷」の方が評価は高いかもしれないが、ウォーゲーマー的には「補給戦」や本書の方が直接役立つと思う。是非。

 

【参考文献】H.P.ウィルモット「大いなる聖戦(上下)」

大いなる聖戦:第二次世界大戦全史(上)

大いなる聖戦:第二次世界大戦全史(上)

 
大いなる聖戦:第二次世界大戦全史(下)

大いなる聖戦:第二次世界大戦全史(下)

 

前々から読もうと思っていた、軍事史家H.P.ウィルモットの第二次世界大戦全史「大いなる聖戦(上下)」を購入、読了。初版は1989年だが、2008年に出された改訂版の翻訳。

この手の第二次大戦の通史で、日本語でも入手しやすいものというと、以前ならリデル・ハートの「第二次世界大戦」、最近ではアントニー・ビーヴァーの「第二次世界大戦 1939-45」がある。リデル・ハートの書は、やはり軍事史家らしく、第二次世界大戦の政戦略や作戦、軍人の決断や、部隊の行動に重きを置いていた。ある意味、ウォーゲーマーが直接参考にできる内容だったとも言えるが、自らの間接アプローチ理論をアゲる意味で旧ドイツ軍人もアゲていたり、ホロコーストに関する言及は一カ所しかない等、いかがなものかと思われる部分もある。それに対してアントニー・ビーヴァーは、ホロコーストや戦時暴力などに晒された民間人の被害にも数多く言及しており、「下からの歴史(History from below)」も拾い上げる第二次世界大戦通史といった趣があった。

それに比べるとウィルモットの本作は、やはり軍事史家なので、リデル・ハートのように軍事面に焦点を当てているものの、リデル・ハートとは違って、軍人名が極力省略されている。ヒトラースターリンといった政治指導者の名前は出てくるものの、お馴染みのグデーリアン、パットン、ジューコフといった名前は一切出てこない。そもそも前書きで『太平洋戦争に勝利したのはマッカーサーではない』『1942年秋のエルアラメインの戦いは、モントゴメリーとロンメルの一騎打ちではない』としているし、そのような将軍個人の活躍が誇張されていることに苦言を呈している。マンシュタインにしても、第三次ハリコフ戦での「後手からの一撃」は過大評価であり、本当にマンシュタインが軍事的天才だったなら、クルスク戦以降の東部戦線をどうにか出来ただろうと。こういった、軍人を英雄として描かない視点は、リデル・ハートへの批判も含まれていると思う。

そのため本書での記述も、政治家や軍部の指導により、その国の軍隊や部隊がどのように行動したかを書き連ねた形となっている。さながら、将軍ユニットの無い戦略級ウォーゲームの経緯を読んでいるようで、これはこれで非常にスッキリしている。自分が興味があるのも、どちらかと言えば「上からの歴史(History from above)」なので。

第二次世界大戦に限らず、歴史を知る場合に、英雄的人物やそのエピソードを通して見ると、たしかに分かりやすい面はある。ただ、どうしても英雄伝には誇張や隠蔽の可能性もあるので、だったらそういった面を極力廃してしまえばいいじゃないかというスタンスなのかもしれない。ある意味ストイックだし、むしろ第二次世界大戦の軍事的展開そのものが浮き彫りになっているようにも感じた。もちろん、ウォーゲーマー向きの通史だと思う。是非是非。

GMT「Holland'44」Solo-Play AAR Part.3 08-11 Turns

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マーケット・ガーデン作戦75周年記念ソロプレイ・その3。第8(9月19日夜間)ターン開始時点で、イギリス第30軍団は、アメリカ第101空挺師団と連結し、Udenまで進出。しかしその先で援軍を待つアメリカ第82空挺師団とイギリス第1空挺師団は補給切れとなっている。ショートゲームの勝利条件は、第11ターンまでにWaal川北岸に連合軍の非空挺ユニットが4個以上あれば連合軍の勝利だが、果たしてそれまでにNijmegen橋を渡ってWaal川の向こうへ行けるかが勝負と。 

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Son橋に続いてBest橋も修復され、イギリス第30軍団主隊は一気にVeghelへ到達。 

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さらにイギリス第30軍団先鋒の近衛機甲師団は、第82空挺が援軍を待つGrave橋まであと4ヘクス(8km)に迫った。 

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しかし第8ターン裏。Uden近郊に、ドイツ第107装甲旅団が集結。ルールブック記載のプレイヤー用ヒントにあるように、5ユニットを束ねて、連合軍の補給路を断つ作戦である。 

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第9(9月20日午前)ターン。イギリス近衛機甲師団先鋒がGrave橋を通過し、アメリカ第82空挺師団への補給路が開通された。

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しかしすかさず第9ターン裏、ドイツ第107装甲旅団が、Uden付近で連合軍の縦隊を攻撃。1スタックを潰走させ、さらに戦闘後前進中の突破攻撃によって、さらにもう1スタックを後退。これにより連合軍の補給路は断たれ、第82空挺はもちろん、先行している近衛機甲師団などのユニットも補給切れに陥った。ちなみに第107装甲旅団の反撃は史実より2日早いが、ショートゲーム(11ターンで終了)なら、このあたりで連合軍の邪魔をするのも良いかもしれない。 

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続く第10(9月20日午後)ターン。連合軍は、砲兵と航空支援のもと、第107装甲旅団に反撃をしかけ、これを撃退。再び補給路を確保して、Nijmegen方面へ部隊を送り込んだ。まあキラースタックとは言え、多勢に無勢ではこの程度か。まるで同じSimonitch作「France'40」のドゴール将軍の反撃のような…… 

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そのNijmegenには、ようやくイギリス近衛機甲師団が到着。市内の制圧も終わり、次の最終ターンで対岸に攻撃をしかけ、非空挺4ユニットが渡河できれば勝利と。これに対して第9ターン裏、ドイツ軍もNijmegen橋の北詰へ第10SS装甲師団「フルンツベルグ」のユニットを集結させた。

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そしてショートゲーム最終の第11(9月20日夜間)ターン。近衛機甲師団によるWaal渡河攻撃は失敗。やはり史実同様、工兵ユニットによって空挺ユニットを渡河攻撃させた方が良かったのだろうが、あいにく工兵ユニットがまだ到着していなかった。もし工兵が到着していたなら、5420か5521ヘクスも守る必要があるので、守備ユニットを置かなければならないと思う。 

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しかし孤立しているとはいえ、Arnhemのイギリス第1空挺師団は頑強に抵抗中。ドイツ軍も、毎ターン攻撃は仕掛けたものの、一方的に損失を喰らうことが多く、その防御線を突き崩せなかった。 

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とりあえずの第一印象。さすが安心・安定のSimonitch作品。ルール的な疑問点も少なく、初見でなんとなくプレイしても、史実っぽくなるあたり、とても優等生だなと。その反面、新たな驚きは少ないが、こういう安定作品も手元にあって欲しい。

まあ、日頃から妙に難解なゲームにばかり触れていると『そこまで再現しなくていいだろ』とか『それをプレイヤーにやらせる気か、本気か』と、ゲームに対してツッコミを入れることが多いし、それを楽しんでいる部分もある。しかし本作で、そういったツッコミを入れる機会はほとんど無く、逆に寂しかったり。ある意味、贅沢な不満……さあ、また面倒なウォーゲームに戻ろうか。

GMT「Holland'44」Solo-Play AAR Part.2 03-07 Turns

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マーケット・ガーデン作戦75周年記念ソロプレイ・その2。第3(9月18日午前)ターン、イギリス近衛機甲師団は、Eindhovenへ突入。市内に配置されたドイツ軍「?」カウンターがダミーだったこともあり、順調に市内を制圧。しかしこのターンから、徐々に沿道には、解放を喜ぶオランダ市民が押し寄せ、第30軍団の進撃が鈍ることに(要するに渋滞マーカーが置かれ始めた)。 

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Nijmegen戦区のアメリカ第82空挺師団は、降下ゾーンDZ-Tを奪回。これで後続の増援部隊も降りてこられる。しかしNijmegen市内は、いまだ制圧できず。 

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Arnhem戦区のイギリス第1空挺師団も、果敢に反撃し、孤立したフロスト大隊(3/1P/1)と師団本隊が再び合流。しかし空挺堡の周囲には、徐々にドイツ軍部隊が集まりつつある。

第3ターン裏、ドイツ軍もイギリス空挺部隊を攻めたが、その頑強さに阻まれ、成果は無し。

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第4(9月18日午後)ターン。アメリカ第82空挺師団は、ようやくNijmegen3ヘクスを奪ったが、まだ河岸ヘクスには到達していない。 

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Arnhemのイギリス第1空挺師団も、SS部隊と一進一退の攻防。 

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そして後方では、ようやくイギリス近衛機甲師団と、アメリカ第101空挺師団がSon橋にてドッキング。ただし橋が爆破されたため、架橋資材が必要となるが、その資材はEindhoven市内での、オランダ市民の歓迎によって進めず。だったらLieshoutの橋から迂回するかと接近したところ、対岸に88mm高射砲ユニットが現れ、2つとも橋を爆破。こちらの迂回ルートも塞がれてしまった。 

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第5(9月18日夜間)ターン。ようやくSon橋に架橋資材が到着。その後方には、渡河を待つイギリス第30軍団の車列が連なっている。 

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そしてこのターンから、空挺補給源が消耗し(上写真では補給源マーカーをひっくり返すのを忘れている)、補給線の途絶えた3個空挺師団はいずれも補給切れ(戦術移動のみ、攻撃力半減)と相成った。Nijmegen鉄道橋に接するヘクスにいた「?」カウンターはダミーだったものの、最後の橋ヘクスがまだ奪えない…… 

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Arnhemのイギリス第1空挺師団も、このターンから補給切れに。攻撃力半減となったため、防御に徹することに。 

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第6(9月19日午前)ターン。Son橋の架橋開始。しかしまだ先には進めず…… 

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このターンは曇天のため、降下予定の増援部隊が到着せず。アメリカ第82空挺師団も、Nijmegen橋が奪えぬまま。そしてNijmegen橋の対岸には、増援のSS部隊が、Pannerdenの渡しを通って到着している。 

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イギリス第1空挺師団も、じわじわと戦力を削られつつある。 

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第7(9月18日午後)ターン。ようやくSon橋が修復。いまだ渋滞ながらも、出迎えるアメリカ第101空挺師団の歓呼(補給切れも解消)に応えつつ、イギリス第30軍団が渡河開始。 

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そのSon橋を通って、イギリス近衛機甲師団の先鋒は、一気にUdenまで到達。第82空挺師団戦区まで、もうあと一息だ。しかしその街道近く(写真左下)には、V号パンター戦車装備の第107装甲旅団が増援に到着。イギリス軍と第82空挺師団のドッキングを阻む構えである……というあたりで、今回はここまで。

GMT「Holland'44」Solo-Play AAR Part.1 01-02 Turns

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1944年9月17日開始のマーケット・ガーデン作戦から75周年ということで、GMT「Holland'44」をソロプレイ開始。ここんとこ濃厚かつ複雑なウォーゲームばかり触れていたので、久しぶりにシンプルな作戦級(と言いつつ実質的には戦術行動が主体)ゲームに戻ってきた感。

そう言えば10年前の65周年には、猿遊会でMMP「The Devil's Cauldron」を2日連続でプレイし、初日の疲労から対戦相手のN村さんがぶっ倒れて翌日来れなくなったという……あれから10年か(遠い目) 

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それはともかく、こちらがガーデン作戦を担当するイギリス第30軍団。ベルギー国境から、いざオランダへと進撃開始。 

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こちらがSon橋~Veghel橋付近に降下したアメリカ第101空挺師団。最初の降下チェックにより、4カ所で分散(戦力半減、戦術移動のみ)という、頼りない展開。 ちなみに「?」カウンターは、ドイツ軍の戦力未確認ユニット。自分でも、何がどれだか分からないように配置したので、この後どうなることやら。

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こちらはNijmegen付近に降下したアメリカ第82空挺師団。分散は3カ所。 

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こちらは、Arnhem近くに降下したイギリス第1空挺師団。幸先良く、分散もせずに降下している。だが、えてしてそういう部隊に限って、後で痛い目に…… 

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では、第1(9月17日午後)ターン開始。まずアメリカ第101空挺師団は、周囲を囲む「?」カウンターに接触。いずれもダミーではなく戦闘ユニットばかりだったが、Best、Son、St.Oedenrode、Veghelという北へ向かう街道沿いの街は確保した。ただしドイツ軍によって、取っかかりのSon橋、Best橋が爆破され、史実通りの展開に…… 

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一方、アメリカ第82空挺師団は、Mook、Grave橋を無事に確保。Nijmegen市内にも1個大隊が突入し、橋の確保に向かっている。 

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北のイギリス第1空挺師団も、史実通りフロスト少佐率いる大隊(3/1P/1)をArnhem市内に先行させ、それ以外の部隊でドイツ軍SSKrafft大隊を攻撃。これをステップロスさせて、やはりArnhemへと接近した。同師団は、第3ターンにLZ-Yに増援部隊が降下するため、その降下ゾーンを確保する部隊を後方に置いてきている。またイギリス第30軍団も、先鋒・近衛機甲師団を先頭にオランダへなだれ込んだ。 

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これに対してドイツ軍は、第1ターン裏、早くも第406歩兵師団の投入チェックに成功(最速)。Nijmegenへ向かうアメリカ第82空挺師団の補給源とそれを守る空挺大隊に攻撃を仕掛け、これをステップロスさせて後退。第3ターンに第82師団砲兵が降りてくる予定の降下ゾーン、DZ-Tヘクスを占領した。精鋭・第82と、低練度の第406師団とでは士気差によって戦力比が不利に2シフトするが、いつものSimonitch作と同様、低比率の攻撃でも何とかなってしまった。 

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第2(9月17日夜間)ターン、イギリス第30軍団は、Valkenswaardまで突出。近衛機甲師団スタックは強力だが、守るドイツ軍もそこそこ防御力があるので、戦闘比10:1による自動的DS(防御側撃破)までは持って行けず、ごく普通に攻撃し、上手くいけば戦闘後前進に伴う突破攻撃という、お行儀の良い攻め方となっている。いや、それで良いのか。 

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アメリカ第82空挺師団は、DZ-Tを奪回すべく、2個大隊でドイツ第406師団を攻撃するも、お互い1ステップロス。Nijmegenへ向かった部隊も、市内で88mm高射砲部隊とぶつかり交戦(ENG)状態に。 

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一方、イギリス第1空挺師団先鋒のフロスト大隊は、Arnhem橋北詰にいた、やはり88mm高射砲部隊と戦闘に入ったが、これを除去。無事にArnhem橋北詰を確保した。また後続部隊も、Krafft大隊を蹴散らして、市内へ入りつつある。 

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しかし第2ターン裏。Arnhem市内に急行したSS部隊は、イギリス第1空挺師団グライダー大隊に決死の1:2攻撃を仕掛け、最良のダイス目6で、これをステップロスさせて後退。これによりフロスト大隊を空挺師団本隊から切り離し、Arnhem市内に孤立させた。橋の南詰には、ドイツ軍グレーブナー大尉指揮のSS装甲捜索大隊も迫っており、またまた史実通りの展開に……というあたりで、今回はここまで。 

【参考文献】Osprey Campaign Series「The Kuban 1943」

The Kuban 1943: The Wehrmacht's Last Stand in the Caucasus (Campaign)

The Kuban 1943: The Wehrmacht's Last Stand in the Caucasus (Campaign)

 

CSS:The Little Land:The Battle of Novorossiysk」の参考資料として、オスプレイ・キャンペーン・シリーズの「The Kuban 1943」を購入。ノボロシースク戦を含むクバニ橋頭堡での戦いは、東部戦線全体を扱った書籍でも無視される場合が多く、この戦闘だけ切り取った書籍も少ない。本書が出版されたのも、昨年2018年。Further Reading(本書以降のオススメ文献)を見ても、2000年以降にロシアで出版された書籍も多く、ソ連崩壊後の開示資料によって研究が進められている戦場なのかもしれない。

実際、スターリングラード陥落直後の1943年1月、ドイツA軍集団の後退に始まり、その後1943年9月まで(クルスク戦の後!)この地を保持していたという、粘り強い後退戦は、地味ながらも興味深い。

そして本書を読んで思いだしたのが、このクバニ橋頭堡の支援に、あのルーデルが37mm砲付きのJu87スツーカで出撃していたこと。たしかにルーデルの自伝「急降下爆撃」を読み直すと、ノボロシースクの支援に向かった記述が、ちらりと出てくる。だったら「CSS:The Little Land」にもルーデルのユニットがあっても良さそうだが、あいにくそういったユニットは無し……

【Company Scale System】「The Little Land : The Battle of Novorossiysk」

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プレオーダーしていたCSS(Company Scale System)第5弾「The Little Land : The Battle of Novorossiysk」が到着。本作のテーマは、1943年2月、すでにスターリングラードで敗北したドイツ軍がコーカサス方面から撤退する中、その後退を阻止するために、ソ連軍が黒海沿岸のノヴォロシースク(Novorossiysk)付近に上陸するというもの。1982年にPWG(Peoples War Games)から発売された「Black Sea Black Death」と同じテーマと言えば、分かる人には分かるかもしれない。

史実では、主上陸部隊第一波は、オセレイカ(Yuzhnaya Ozereyka)付近に夜間に上陸し、少数ながら空挺部隊も降下している。しかしそれに続く第二波以降が「夜のうちに艦隊は海岸より離れる」という命令通り、上陸部隊を乗せたまま引き返すという前代未聞の行動に。当然、取り残された第一波は、ドイツ軍とルーマニア軍の守備隊に撃滅されてしまった。

ところが、これと並行して行われたソ連海軍歩兵コマンド部隊による、ノヴォローシスク近郊への陽動上陸作戦は、逆に成功。ソ連側としては、オセレイカでの失敗を帳消しにするためにも、このノヴォロシースク近郊に築かれた小さな海岸堡=「The Little Land(小さな土地・寸土)」を是が非でも確保せんと、本来はオセレイカに上陸させるはずだった部隊を投入。以後、7ヶ月に渡って、この海岸堡を巡る戦闘が続いたが、本作で扱うのは、最初の1週間のみである。 

しかしこのノヴォロシースクでの戦闘について、日本語で読める文献と言えば、今となっては悪名高くなってしまったパウル・カレルの「焦土作戦」ぐらいしかない。

独ソ戦史 焦土作戦〈上〉 (学研M文庫)

独ソ戦史 焦土作戦〈上〉 (学研M文庫)

 
マーラヤ・ゼムリヤ―ブレジネフ回想録 (1978年)

マーラヤ・ゼムリヤ―ブレジネフ回想録 (1978年)

 

ちなみにこの戦いには、後のソ連書記長となる、レオニード・ブレジネフが政治委員として参加し、本作でも、英雄カウンターとして登場している。しかしその効果は『プレイヤー自身が、どれだけブレジネフの個人的英雄譚を信じているかに左右され、2つの効果(配置されたユニットの損耗を軽減できるか、逆に配置されたユニットの混乱を増大させるか)のうち1つを選べる』というもの。プロ司書であるN村さんの調査によれば、ブレジネフ書記長の回想録の日本語版も出ているそうだが、これが国会図書館他、わずかな在庫しか無いらしい。またN村さんによって、この戦闘に関する裏話的な「ブレジネフ大佐の小さな場所、あるいは資料のウラオモテ」という論文も発見されたので、ご興味のある方は是非。

http://maisov.if.tv/r/index.php?LittleLand

一応、ゲームデザイナーのAdam Starkwetherのオススメ書籍は、オスプレイ・キャンペーン・シリーズの「The Kuban 1943」なので、こちらを発注してみた。 

The Kuban 1943: The Wehrmacht's Last Stand in the Caucasus (Campaign)

The Kuban 1943: The Wehrmacht's Last Stand in the Caucasus (Campaign)

 

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さて本作のゲームマップは2枚。CSSとしては、小振りな方か。スケールも、以前と同じく1ヘクス=500m。ちなみに「Black Sea Black Death」が1ヘクス=800mなので、さらに細かくなっている。 

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こちらが、上陸に失敗したオセレイカ付近。たしか東西の高地上に、枢軸軍の砲台があって、両側から砲撃されたはず。 

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こちらが海軍歩兵コマンド部隊が上陸に成功した「The Little Land」付近。「Mud Baths(泥風呂)」というヘクスもあるが、名物だったのだろうか? 

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カウンターシートは、7.5枚。カウンター総数1320個。こちらは、目にも眩しいソ連軍ユニット。特にドギツいピンク色ユニットが、黒海集団のペトロフ将軍麾下の部隊。この黒海集団と、第8親衛狙撃旅団は、最大部隊練度(Troop Quality)6となかなか頼もしく、登場する枢軸軍部隊を上回っている。しかし指揮値(Command Rating)1の部隊も多く、やる気はあるけれど、融通は効かないという、なるほどソ連の精鋭部隊っぽい評価だなと。戦車ユニットも多少入っているが、T70戦車や、レンドリースのM3スチュアート戦車は頼りなく、マチルダ戦車は足が遅い(移動モードでも6しかない)。それに比べるとT34/76は、さすが良く出来ているなあと。また英雄カウンターには、ブレジネフ政治委員の他にも、陽動上陸部隊の指揮官クニコフ(Kunikov)少佐も登場。そして先のCSS太平洋シリーズでの「バンザイ突撃」ルール同様の「人海戦術」ルールもあり。 さらにアゾフ艦隊の艦砲支援や、航空支援もあり。特にイリューシン2型「シュトルモビク」は、火力7という恐るべき破壊力。

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対する枢軸軍は、ドイツ第73、第125歩兵師団と、ルーマニア第10歩兵師団(写真右上の薄緑色ユニット)が登場。史実では主上陸部隊を撃退したルーマニア第10歩兵師団だが、最大部隊練度3とかなり頼りない。一応、ドイツ供与らしい88mm砲中隊が3個あるし、砲台と合わせれば、第一波ぐらい撃退できるのだろう。しかしドイツ軍の2個歩兵師団にしても、最大部隊練度5と、ソ連軍に劣っている。装甲戦力も、III号F型、III号突撃砲が多少いる程度。まあ、ソ連軍も大量の戦車を持っているわけではなし、マーダーIII対戦車自走砲でなんとかするしか。 

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そして本作から、今までチャートに印刷されていた「戦場で使い込まれた汚れ感」が削除され、きれいな印刷物になっている。CSSでは、第1作「Saipan」から第4作「Montelimar」まで、戦場の雰囲気を出すためだけに、あえてチャートに「汚れ」が印刷されていたが、当然のように購入者からは『なぜそんなことを?』『要らない雰囲気作り』『チャートが見にくい』と大不評だったので、ようやく是正されたということか。 なんなら今までの4作のチャートも印刷し直してほしいわ。

シナリオは、キャンペーン含めて4本。オセレイカ方面、ノヴォロシースク方面だけのシナリオならマップ1枚で済むので、プレイの敷居は低そうだ。

しかし振り返って見ると、CSSでは初めてとなる東部戦線モノだし、兄貴分のGTS(Grand Tactical Series)でもいまだに東部戦線モノは発売されていない(クルスクという企画もあったが、立ち消えになったか)。つまり、1984年の元祖「Panzer Command」以来、35年ぶりにこのシステムが東部戦線に帰還したとも言える。そう考えると、なかなか感慨深いなと……