Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【Company Scale System】CSS Rules First Impression

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今年Compass Gamesから出版されたWWII戦術作戦級シリーズCSS(Company Scale System)「Saipan」「Guam」は、もともとMMP社からGTS(Grand Tactical Series)作品として発売される予定だった(マップやユニットの画像もネット上で公開されていた)。ところがデザイナーのAdam Starkwetherが、MMPとケンカ別れしてGTSのシリーズデザイナーから下り、Compass Gamesと手を組んでCSSという新シリーズとして「Guam」「Saipan」を発売した形である。

新シリーズとは言っても、GTSCSSも1ヘクス=500m、1ターン=2時間、1ユニット=中隊規模とゲームスケールは変わらず、言うなれば兄弟システムだよなとは理解していたものの、あいにくCSSに手を出す余裕が無く、はてどこがどう違うのだろう?と気になっていた。しかし最近ようやく「Guam」のPDFルールがCompassのサイトで公開されたのでそれに目を通し、さらに日本語訳を見せていただく機会も得たので、ここらでルールブックだけを読んだ自分の印象をまとめておこう。

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先にも書いたように、GTSCSSのゲームスケールはまったく同じ。CSSのターン進行手順も、天候決定⇨活性化チットの購入⇨チット引きによってフォーメーション毎に活性化して移動や射撃を行う……と、GTSとほぼ同じだ。チットの種類も、師団活性化、フォーメーション活性化、直接活性化とGTSとまったく同じなので、大枠でのプレイ感はGTSCSSもあまり変わらないと思う。

少し違うなと感じたのは、CSSでは各師団毎に疲労レベルが導入されていること。各師団は、チットをカップに入れる毎に疲労が蓄積し、疲労レベルが上がるとチットが購入できなくなる。そしてチットをカップに入れなかったターンには、疲労レベルが回復すると。まあGTSでも、派兵(Dispatch)ポイントが減ればチットは買えなくなるし、それが師団の疲労を表していたのだろうが、CSSでは、より目に見える形で表現されている。

またGTSでは各ユニット毎に部隊練度(Troop Quality)が設定されていたが、CSSでは師団毎に部隊練度が設定され、その師団に属するユニットは一律、自分の師団の部隊練度を用いるようになっている。GTSだと、同じ師団でも練度の高いユニット、低いユニットがいて、その史実背景を知っていると『おっ、さすが第101空挺師団第506連隊E中隊(つまりバンド・オブ・ブラザーズ)は練度が高いな!』とかニヤニヤできたのだが、CSSではそういう作りになっていない。その代わりCSSでは、指揮官ユニットに練度や火力を高める能力を持たせている(GTSでは指揮範囲を定める程度の役割しかない)が、自分の好みとしてはGTS式の、各ユニット毎に個性を持たせる方が好きだ。

さらに細かい部分での違いは、高度レベルの導入(GTSでは稜線という概念)、支援火器(臨機射撃をやり過ぎると壊れる)、火力タイプの簡略化(GTSよりも少ない)、射撃結果(4段階の混乱、これは分かりやすいかもしれない)、弾幕効果(GTSの2タイプからCSSでは5タイプへ。なぜかここは細かくなっている)あたりか。戦車も支援火器扱いだが、これも個人的にはちょっと寂しい気がする。ただ、あくまで太平洋戦線では支援火器扱いであって、ヨーロッパ戦線作品では戦車の扱いも違うのかもしれない。また太平洋戦線ルールとしてバンザイ突撃や酩酊ルールもあるが、これはCSSのシリーズルールではなく、「Saipan」や「Guam」の個別ゲームルールなので割愛。

とまあ、ざっとCSSのルールを見たところ、大枠ではほとんどGTSと変わらないものの、細かい部分では簡略化が進められていると感じた。GTSユーザーは、あまり違和感なくCSSもプレイできるだろう。逆にCSSからGTSに移ると、少しディティールが細か過ぎるように感じるかもしれない。いろいろ改良点もあるし、シンプルにもなっているのだが、それでも自分はGTSの方が好みかなと(ユニット毎の部隊練度を見てニヤニヤする派なので)。 

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Compass Gamesのサイトでは、すでにCSS第3作となる「Montelimar」(1944年南仏ドラグーン作戦での戦闘)がプレオーダーに上がっており、来年には発売されるようだ。またAdam自身はこの先CSSで「1943年のNovorossiysk」「1985年のフルダ峡谷(つまり仮想第三次世界大戦モノ)」を企画しているそうで、さらには「沖縄」「Mortain(リュティッヒ作戦)」も構想中らしい。

自分も、いずれCSSに触れてみたいが、どうもまだ「Saipan」「Guam」の段階ではシリーズルールにもブレがあるようで、テーマ的にも興味深い「Motelimar」から入ってみようかなとも思っている。いずれにしろ来年のテーマだなと……

【Advanced Squad Leader】ASLJ141「Riding with the King」Solo-Play AAR

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ASLのルールを覚え直そうシリーズPart.6。今日は「ASL Journal #9」収録のJ141「Riding with the King」シナリオに挑戦。設定は、1944年10月25日ハンガリー戦線にて、ソ連軍第7機械化軍団がドイツ第3山岳師団を攻撃し、その救援にドイツ第503重戦車大隊のVI号B型ケーニッヒスティーガー2輌が馳せ参じるというもの。ドイツ軍主力は、4-6-8歩兵✕11個、75mm*歩兵砲、50mmL対戦車砲。第1ターン裏には、III号G型突撃砲✕2輌も駆けつけてくる。攻めるソ連軍は、第一波が5-2-7歩兵✕6、4-4-7歩兵✕10、シャーマンIII(a)戦車✕3輌、第2ターンに登場する第二波が6-2-8歩兵✕4、IS-2戦車✕4輌、自走12.7mm4連装対空砲M17✕2輌という陣容である。ちなみにROARでの対戦記録では、ドイツ軍32勝、ソ連軍22勝。

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第1ターン。ドイツ軍は、勝利条件に関わる地図盤53の村の南に防衛線を展開。これに対してソ連軍第一波は、西寄りから盤内に進入。ドイツ軍の75mm歩兵砲に対してシャーマンIII(a)戦車が射撃を浴びせ、早くもその操作班を除去した。

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第2ターン表。ソ連軍第2波は、東寄りから盤内に進入。厄介な50mmL対戦車砲を潰そうと、IS-2戦車が2輌接近したが、なんと50mmL対戦車砲が初弾から致命的命中(DR2)を出し、IS-2を正面から撃破した。第1ターン増援のIII号G型突撃砲も、前線に到着している。

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第3ターン。前線に到着したばかりのIII号G型突撃砲が、IS-2戦車にあえなく撃破された。自走12.7mm4連装対空砲は、ドイツ軍右翼の歩兵を薙ぎ倒し、ソ連軍歩兵が勇躍前進していく。

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第4ターン表。ドイツ軍右翼を突き崩したソ連軍は、東西からドイツ山岳兵たちに接近する。しかし50mmL対戦車砲は、無数の砲撃を浴びつつ、しぶとく戦線を維持している。残る1輌のIII号G型突撃砲も、ソ連軍右翼を押し返している。

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一方、第3ターン裏に盤北端から登場した2輌のケーニッヒスティーガーを迎え撃つべく、IS-2、シャーマンIII(a)型✕2輌が地図盤56の村の交差点に移動した。しかしIS-2の122mmL主砲(基本キルナンバー25)をもってしても王虎重戦車の正面装甲(26)を撃ち抜くことはまず難しい。ここはあえて戦車を囮にして、歩兵を近づけ、白兵戦で討ち取るしか無いかも……ということで、歩兵も随伴させている。

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第4ターン裏。III号G型突撃砲が、ソ連軍歩兵スタックの脇をすり抜けて後方へ回り込み、ソ連軍IS-2戦車に背後から射撃を浴びせたが、あいにく外れ。

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第5ターン表。背後に回ったIII号G型突撃砲に対し、IS-2はゆっくりと車体の向きを変えて(そしてIII号G型の臨機射撃を跳ね返して)射撃を行い、III号G型を一発で撃破。また、しぶとく粘っていた50mmL対戦車砲には、凶暴化した4-4-7(10)分隊が突入し、操作班を除去した。またドイツ軍最左翼で頑張っていた9-2指揮官+MMG(中機関銃)スタックも潰走し、ドイツ軍は大きく崩れてきた。

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シャーマンIII(a)戦車も、建物の間を迂回しつつ、ケーニッヒスティーガー重戦車の後背に躍り出たが、この至近距離でも命中弾なし。ソ連軍歩兵は、白兵突入のタイミングを伺っている。 

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第6ターン表。前進したIS-2戦車が、53M3の建物に立て籠もっていたドイツ軍機関銃スタックを建物ごと吹き飛ばし、ドイツ軍は村内に全面撤退。

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9-1戦車指揮官の駆るケーニッヒスティーガーは、後背に迫ったシャーマンIII(a)戦車を一発で撃破。

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最終第7ターン表。ソ連軍は、ドイツ軍を村内に追い詰めたものの、勝利条件に関わる2ヘクス石造建築物を奪うまでには至らず。

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地図盤56の村では、再びシャーマンIII(a)戦車が迂回によってケーニッヒスティーガーの側面に躍り出るも、命中弾なし。またソ連軍4-4-7分隊は、なんとかケーニッヒスティーガーB号車への白兵突入に成功するも、撃破はならず。返す刀でケーニッヒスティーガーが近接防御擲弾を撃ち込むも、4-4-7分隊はこれを回避して元いた建物へ無事帰還……というところでシナリオ終了となった。ちなみに2D6ダイスロールの平均値は、ドイツ軍が7.18、ソ連軍が6.95とまずまず。

プレイ後、シナリオ的にはどのようにケーニッヒスティーガーを運用すれば良かったのか……と、あれこれ思案もしてみた。本来なら、随伴歩兵なしに街路戦闘に投入すべきではないから、歩兵部隊と合流させれば良かったのか?距離を取って撃ち合える場所があまり無いようにも思えたのだが、もしかするとベテランASLerから見れば、良い射撃位置があるのかもしれない。それともドイツ軍は、もっと後ろに戦線を引いて、増援の戦車との合流を早めれば良かったのか?……などと、あれこれ考えたくなるということは、多分、面白いシナリオなのかもしれない。

【Wargaming Column】ダイス結果集計シート(汎用)

先日、ASLのソロプレイで2D6ダイスロール集計表をアップしたところ『ASLというタイトルを入れずに、汎用集計表としての需要もあるかも』という声をいただいたので、早速作ってみた。Aタイプは、シート1枚にプレイヤー双方のダイス結果が記録できるので、ソロプレイ向け、あるいは記録係がいる場合向け。Bタイプは、プレイヤー双方が1枚ずつ持って自分のダイス結果を記録する対戦向け。いやゴルフスコアのように、不正を防ぐため相手プレイヤーのダイスを記録し合うという手もあるか。

ついでにD6用、D10用も作ってみた。10面体ダイスを使うゲームの中には「0」を「0」として読むゲームもあれば「10」として読むゲームもあるので、その両方に対応可としている。ちなみに2D6用は、良く出るであろう7前後の枠を少し広くしてある。

まあ、D6用、D10用を作ってはみたものの、自分ではまず使わないだろう(たとえ大好きなGTSがD10ゲームであっても、だ)。2D6用も結局、ASLでしか使わないと思う。やはりウォーゲームは基本、作戦の立案やら、史実の雰囲気を楽しむものであって、わざわざダイス集計してまでその平均値を知りたいと思うようなゲームは、個人的にはあまりない。

ただそれは自分の嗜好であって、もしかすると、こういったシートを公開することで、どこかで誰かが『じゃあ、あのゲームをプレイしてダイス結果を集計してみよう』と思うかもしれない。ある意味ひとつのアイデアなので、どうぞご自由にお使いください。 

【Advanced Squad Leader】ASLJ105「Borodino Train Station」Solo-Play AAR

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ミニシナリオでASLのルールを覚え直そうシリーズPart.5。今日は「ASL Journal #7」収録のJ105「Borodino Train Station」をソロプレイしてみた。設定は、1941年10月16日、モスクワを目指すドイツ軍Hauenshildt戦闘団が(ナポレオン戦争でも有名な)ボロジノ駅を占領したものの、ソ連軍第32ライフル師団がそれを奪い返しに来るというもの。使うのは、地図盤20の半分だけ。全5.5ターンとかなり手頃だ。ROARでの対戦記録は、ドイツ軍67勝、ソ連軍37勝。

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防御側ドイツ軍は、勝利条件になっているボロジノ駅(写真左側のU3建物)と、市役所(写真右側のZ3建物)、さらにその中間のX3建物に部隊を配置。一応、第1ターン裏に4個分隊、PSW221装甲車、251/1ハノマーク兵員輸送車が増援として登場する。対する攻撃側ソ連軍は、登場兵力を第1・第2ターンに分配してよく、今回は第1ターンにほぼ8割方のユニットを出すことにした。また5-2-7分隊✕6は、突撃工兵扱いなので煙幕配置指数が2上がり、dr3以下で煙幕が張れるようになっている。

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第1ターン終了時がこちら。北盤端から登場したソ連軍は、5-2-7突撃工兵に煙幕を張らせつつ、ボロジノ駅と市役所に前進。市役所に陣取っていたドイツ軍HMG(重機関銃)スタックを潰走させ、ボロジノ駅でも2個スタックを後退させている。ドイツ軍は、市役所危うしと見て、輸送車で9-1指揮官+MMG(中機関銃)スタックを市役所裏まで運搬。PSW221も市役所脇に停め、ソ連軍に銃撃を浴びせた。

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第2ターン表。ソ連軍は、ボロジノ駅と市役所の両方に突入。しかしボロジノ駅方面では、ドイツ軍に撃たれて混乱した分隊が多く、駅に突入できたのは1スタックのみ。市役所方面でも9-2指揮官が混乱させられ、突入した部隊はドイツ軍HMG、MMGスタックと睨み合っているという緊迫した状況である。

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第2ターン裏。ドイツ軍は、市役所内での戦闘で再びHMGスタックが潰走。中央とボロジノ駅には増援のスタックが入り、守りを固めている。またハノマーク輸送車は、ソ連軍の側面に位置し、潰走ルートを射界に収めている。

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第3ターン表。ドイツ軍の防御射撃で、市役所に突入したソ連軍4-4-7✕3個分隊が混乱。これを救うべく、混乱から回復したソ連軍9-2指揮官が、ハノマーク輸送車の射線を突っ切って市役所へダッシュで駆け戻り、Z2ヘクスで合流。一方、ボロジノ駅には後続のソ連軍スタックがなだれ込み、ドイツ軍はT3ヘクスに押し込まれた(オーバースタック状態)。

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第3ターン裏。ドイツ軍は、HMG+MMG両スタックの隣接射撃で、突出していたソ連軍スタックを除去し、再び前進。ソ連軍9-2指揮官と混乱スタックをZ2ヘクスに追い詰めた。ボロジノ駅でもソ連軍8-1指揮官スタックを追い返している。

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第4ターン表。市役所で追い詰められたソ連軍9-2指揮官スタックは、どうにか回復し、近づいてきたドイツ軍HMGスタックに射撃を浴びせて三度潰走させ、MMGスタックに対しては白兵戦を仕掛けてこれを除去した。ボロジノ駅でもソ連軍8-1指揮官スタックが息を吹き返し、ドイツ軍をS4に追い詰めた。

第4ターン裏。S4のドイツ軍は、さらに防御射撃を喰らって混乱。ドイツ軍は、もはやボロジノ駅を保持するのは不可能と判断。さらなる勝利条件である、盤南へのソ連軍突破を防ぐため、8-1スタックを駅から潰走させ、回復の機会を待った。市役所では、最後の1ヘクス(Z4)を守るため、部隊が集められた。

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第5ターン表。ソ連軍は、ボロジノ駅から叩き出したドイツ軍8-1スタックを殲滅。市役所でも、最後までZ4で粘っていたHMGスタックを白兵戦の末に除去し、2つの勝利条件建物を制圧した。

第5ターン裏。残るドイツ軍は、ソ連軍の盤南への突破を防ごうと、PSW221装甲車とハノマーク輸送車を交差点に配置したものの、すでに盤全体をカバーできるほどの兵力は無く、第6ターン表にソ連軍勝利と相成った。ちなみにDR(2D6ダイスロール)平均値は、ドイツ軍7.01、ソ連軍7.09とほぼイーヴン。ただしドイツ軍が、回復で最悪のDR12を3回出し、1.5個分隊を失ったのは痛かった。

それにしても、かなり好感触のシナリオだった。『すべての建物は地上レベルのみとする』という特別ルールも簡単でいい。サイズ的にも元祖「Squad Leader」のシナリオ1「The Guards Counterattack」を彷彿とさせるものがあり、やはり市街戦は手に汗握るなあと。これが建物の2階や3階を導入すると、また面倒になるのだが、そういった本格市街戦もそのうちに……

【Advanced Squad Leader】ASL112「Out of Cowardice」Solo-Play AAR

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引き続き、ひとりASL復習会Part.4。そう言えば、2006年に買った枢軸中小国モジュール「Armies of Oblivion」も遊んでないなあと気づき、良さげな東欧系シナリオを探したところ、ASL112「Out of Cowardice」が手頃なサイズではないかと。設定としては1941年4月、ドイツ軍、イタリア軍と共にユーゴスラビアに侵攻したハンガリー軍が「ちょっとした抵抗を受ける」というもの。しかしROARの対戦記録を見ると、ハンガリー軍9勝、ユーゴ軍51勝と圧倒的にユーゴ軍が有利そうなシナリオである。

使うのは地図盤50の半分のみ。全6ターン。防御側ユーゴ軍がdr(D6)で決定した個数の建物を、ハンガリー軍が奪えば勝利。本来、ユーゴ軍+パルチザンは隠匿マーカーを用いるが、ソロプレイなので割愛。パルチザンは、勝利条件の建物に配置され、ユーゴ軍はその村を守る高地付近に配置される。ハンガリー軍(トルディI型軽戦車1輌、チャバ装甲車1輌あり)は、第1ターンに盤端から進入する。

トルディ (戦車) - Wikipedia

チャバ (装甲車) - Wikipedia

問題は、両軍のELR(戦闘経験レベル値)だ。士気チェックに失敗した際、士気値+ELRを越えてしまうと、そのユニットは1段階、質の低いユニットカウンターに置き換えられ、回復しても、以後はその質の低いユニットとして機能するというルールだが、今回のシナリオでは、ハンガリー軍のELRが2、ユーゴ軍のELRは1しかない。つまりハンガリー軍3-4-7分隊は士気7+2=9、ユーゴ軍4-3-7分隊は士気7+1=8を越えると質が低下してしまうし、これはかなり頻出しやすい数字だと思う。ハンガリー軍3-4-7(一線級、そもそもこのユニットからして、よその国の軍隊なら半個分隊だ)は3-3-6(徴集兵)になり、ユーゴ軍4-3-7(新兵)はそれ以上質の悪いユニットが無いため、戦意喪失(敵に隣接されると降伏する)状態になってしまう。ちなみにユーゴ・パルチザンはELR5。いやそれが普通なんだが。

こりゃあバランスが悪いと言うより、酷い展開になるのでは……と思ってソロプレイを始めたところ、いきなり第1ターンの戦闘だけで、ハンガリー軍11個分隊のうち、2個分隊が除去、3個分隊がELR落ちで3-3-6に置き換え、さらに7-0指揮官が損耗で除去、トルディI型軽戦車の主兵装20mm砲が故障(後に完全使用不能)という、あまりプレイバランスを気にしない自分でも『こりゃ酷いなあ』という展開になったので、あらためて最初からプレイし直すことにした。

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仕切り直しての第1ターン表。盤端から進入したハンガリー軍は、ユーゴ軍と横一線に並んで撃ち合うことに。しかしこれは失敗。ハンガリー軍は、分隊とは言え3火力しかないのだから、ユーゴ軍新兵分隊の4火力に撃ち負けて当然。普段使っているドイツ軍やソ連軍と同じように動かしていてはダメだ。『自分はダメな軍隊を扱っているんだ』と意識を切り替えないと。一応、ユーゴ軍も各所で士気チェックを強いられたが、意外にダイス目が良く、混乱もせず、頑強に粘っている。盤端ではハンガリー軍2個分隊がユーゴ軍1個分隊相手に白兵戦を挑んで混戦となっているが、この後の第1ターン裏で、まさかの敗北を喫し、2個分隊とも除去された。

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第1ターン裏では、取り巻きの歩兵がいなくなったトルディ軽戦車に対し、ユーゴ軍8-0指揮官+4-3-7分隊が白兵戦を仕掛け、これを移動不能とした。トルディ軽戦車は、車載機関銃で白兵戦に応じ、ユーゴ軍は混戦に。この混戦に対して第2ターン表、ハンガリー軍が隣接ヘクスから射撃を行い(つまり自軍の戦車と脱出した乗員もろとも撃つ)、8-0指揮官は混乱、4-3-7分隊は混乱・戦意喪失。その戦意喪失した分隊に、ハンガリー軍が隣接していたため、ユーゴ軍分隊は降伏して捕虜となった。ところが第2ターン裏、今度はそのハンガリー軍+捕虜スタックめがけて、ユーゴ軍が射撃を行い(つまり囚われた捕虜もろとも撃つ)、ハンガリー軍2個分隊ともELR落ちで3-3-6となり、捕虜も撃たれて半個分隊になるという、東欧製B級戦争映画(そんなものが実在するかは知らんが)のような展開に。

で、そのあたりの処理に馴れていないものだから、ルールブックをひっくり返して、あちこちを読むうち疲れてしまい、今回のソロプレイは2ターンまでで終わりとした。まあ今日は、あまり使ったことがない戦意喪失や車輌への白兵戦ルールなどを確認できたので良しとしよう。ハンガリー軍にしても『分隊分隊と思うな、半個分隊と思って使え』という教訓を得たので、いずれまた違うシナリオで触れてみたい。そしてこういう経験の積み重ねがASLには必要だと思う。元祖Squad Leaderも、段階的にルールを修得するシステムだったし、ASLも、無理して最初から全部のルールを完璧に使いこなそうとして結局プレイできないなら、まず自分が把握できているルールだけで遊ぶのもアリだと思う。

【Advanced Squad Leader】J128「Opium Hill」Solo-Play AAR

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本日もひとりASL復習会。そう言えば、せっかく太平洋戦線モジュール「Rising Sun」を買ったのに、太平洋戦線シナリオを遊んでいないなあと思い、日本軍が登場するシナリオの中から良さげなものを探してみた。できれば日本軍が攻撃側で(ステップロスしつつ前進するのを試したい)、車輌も少し登場するシナリオを……という条件で見繕った結果、「ASL Journal #9」収録のJ128「Opium Hill」に決定。

設定としては、1942年2月14日、マレー半島に上陸した陸軍第18師団第56連隊が、イギリス軍士官に率いられた第1マラヤ旅団を攻撃するというもの。日本軍は、イギリス軍ユニットを除去するか、指定の石造建築物を支配するか、盤外へ突破するなどして勝利得点24を獲得すれば勝利、というシナリオである。日本軍戦力は、4-4-7分隊✕9を主力として、95式ハ号軽戦車が3輌。イギリス軍戦力は、4-5-7分隊✕3、4-4-7分隊✕8に加え、第1ターンにマーモン・ヘリントンIII型装甲車が1輌登場する。ROARの対戦記録では、日本軍11勝、イギリス軍18勝とのこと。全6ターン。

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第1ターン。日本軍は、イギリス軍対戦車ライフルを警戒しつつ、中央の道路から95式ハ号を進めたが、何もここまで警戒しなくても良かった気が(なにしろハ号は、正面装甲値が1しかなく、対戦車ライフルでも十分無力化され得る)。それに対して日本軍歩兵は……なぜか『とにかく行け行け、敵の射撃に構わず突撃!』という無謀な気分になり、開豁地でもかまわず敵に向かって前進。当然、損害も喰らっているが、日本軍ドクトリンとしてはこの方が「らしく」感じる。うまくプレイするのも大事だが、「らしく」プレイするのも自分の中では大切な要素なのだ。

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第1ターン裏には、イギリス軍マーモン・ヘリントン装甲車が登場。果樹園を突っ切り、95式ハ号の車列の側面に回り込み、対戦車ライフルで射撃を開始した。またイギリス軍9-1指揮官率いる中機関銃(MMG)スタックが、DR3射撃を浴びせて日本軍9-1指揮官を早くも除去。やはりこの性急な前進、ドクトリンとしては日本軍らしいが、ASLプレイとしては正しくないらしい……

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第2ターン。95式ハ号2輌が道路を外れて移動。これに対してマーモン・ヘリントン装甲車が対戦車ライフルを臨機射撃で放ったところ、95式ハ号1輌を移動不能とした(乗員は脱出して車輌は放棄)。しかし残る95式ハ号が、37mm砲を撃ち込み、装甲車を撃破。こちらも乗員は脱出している。

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第3ターン。イギリス軍9-1+MMGスタックは、またもDR3射撃で日本軍スタックを血祭りに上げたが、95式ハ号や50mm迫撃砲の集中砲火も受けている。東側の森では、日本軍がイギリス軍を圧倒しつつ、木々の間を縫うように浸透。

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第4ターン。脱出した95式ハ号の操作班は、人出が足りないため、軽機関銃(LMG)を任されていたが、何の気なしに放った射撃がDR2となり、イギリス軍分隊1を除去。この活躍に士気が奮い立ったか、日本軍は良好な射撃を連発し、頑強に抵抗していたイギリス軍9-1指揮官+MMGスタックをも混乱・潰走させた。

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第5ターン。95式ハ号✕2輌は、東の森の切れ目からイギリス軍側背に進出。混乱するイギリス軍分隊を射撃したが、ここでDR12、主砲故障……。それでも日本軍は、東の森を制圧。そのまま盤外突破して勝利得点を稼ぐ手もあったが、引き続き、イギリス軍が籠もる石造建築物を攻撃することに。

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しかし回復したイギリス軍9-1指揮官+MMGスタックが、再び頑強に抵抗。またも95式ハ号、50mm迫撃砲の猛射を受けつつ、日本軍を寄せ付けぬ構えである。しかし東の森に取り残された8-0指揮官+対戦車ライフルスタックは、日本軍に囲まれ、この後、全滅。G7木造建築物ヘクスにも、日本軍分隊がステップロスを喰らいながらも突入している。 

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第6ターン。G7に入った日本軍ステップロス分隊は、隣のH7に突撃し、不利な戦力比ながらもイギリス軍分隊との白兵戦に勝利。しかし日本軍の前進もここまで。結局、イギリス軍分隊5、指揮官1を除去して、勝利得点11に留まり、イギリス軍勝利となった。しかし無理に石造建築物を攻撃するより、さっさと盤外突破すれば勝利得点24を稼げたと思う。ちなみにDR(2D6ダイスロール)統計は、日本軍がDR平均6.69。イギリス軍がDR平均7.17だった。イギリス軍は最良のDR2を一度も出せず、日本軍はDR2を3回出している。まあ日本軍は、今回の敗北をダイス目のせいにはできないかなと。

しかし久しぶりにASL日本軍を使った印象は……やはりこういう人間(生命)の使い方はダメだなと感じた。指揮官からすれば『とにかく休むな』『死んでもいいから戦い続けろ』だし、兵士にしても『俺たちに混乱という選択肢は無い』のだから、悲惨という他ない。

まあ、日本軍の悲哀はともかく、シナリオ規模としては、やはりこの程度が一番好きだと思う。細かいルールに関しては、まだ覚えきれていないので、引き続きリハビリ的なソロプレイを重ねていきたい。あれこれ遊んでいるうちに「Hakkaa Paalle」「Yanks 2nd」を買う意欲も出てくるだろう(なにしろ、そろそろ朝鮮戦争モジュール「Forgotten War」も出るらしいので)

【Advanced Squad Leader】ASL35「Blazin' Chariots」Solo-Play AAR

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昨日に続いてASLをソロプレイ。車両ルールをだいぶ忘れていたので、再インストールという意味で、純然たる戦車戦シナリオ「ASL35 Blazin' Chariots」(West of Alamein収録)を選んでみた。設定は、1941年11月19日リビアにおけるクルセイダー作戦の一部として、イギリス軍王立戦車連隊第5大隊のスチュアートI(a)軽戦車12輌と、ドイツ軍第5装甲連隊の一隊……IV号E型✕2輌、III号H型✕2輌、III号G型✕3輌、II号F型✕2輌……が交戦するというもの。The ASL Scenario Archive の記録では、イギリス軍10勝、ドイツ軍7勝。ROARでは、イギリス軍75勝、ドイツ軍83勝。地図盤は26、27、28の3枚を使うので、各地図盤毎にイギリス軍は戦車を4輌ずつ、ドイツ軍は3輌ずつ配置してゲームを開始した。夕陽に向かって射撃を行う場合、命中判定には、強烈な西日による+2妨害DRMが付くので、西に向かって前進するイギリス軍にはやや不利か。

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今回は事前に、各戦車主砲の命中ナンバーと撃破ナンバーの「素」の数値を算出しておいた。ここに記したのは、あくまで射撃距離、砲の種類程度の数値であって、実際に射撃する際には、さらに様々な修正が乗っかるのだが、ここまでの数値を出しておくだけでもプレイ中の計算が楽になるし、何より各砲の特徴が分かるので便利だ。IV号E型の75mm*砲は、射撃距離13ヘクスから急に命中ナンバーが落ちる(つまり当たらなくなる)から、これは接近戦向けだなとか。III号G/H型の50mm砲とスチュアートの37mmLL砲はほとんど大差無いし、むしろ遠距離では37mmLL砲の方が撃破ナンバーが高いなあとか。 

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そんな特徴を眺めつつ、とりあえず先攻イギリス軍は、12輌のスチュアート軽戦車を二段に分け、6輌は移動中射撃を行いつつドイツ軍に接近、残る6輌はある程度前進した後で停止して射撃することにした。ドイツ軍は、先にも書いたようにIV号E型は接近戦向けだし、II号F型の20mm砲も遠距離では役に立たないので、積極的に距離を詰め、近距離砲戦を挑むことにした。

で、後はまあ、お互いに撃ち合い、撃破炎上したり移動不能になったりという展開で、両軍の半数が機能停止した3ターンあたりでプレイを止めてしまった。戦車だけとは言うものの、一人で戦車を21輌動かすというのもなかなか面倒くさく、これは「T2 Puma Prowls」でリハビリした方が良かったかもなと思った。(そういや11年前の⇩この時も簡易射撃データ表を作った……と書いてあるなあ)

やはり自分が好きなASLシナリオは、歩兵戦主体で、車輌はちょっと出てくるだけ、というバランスなので、そういったシナリオを選んで、ルールの再取得を続けていこうと思う。 

ちなみに今日使った砲兵器ナンバー表もDropboxに上げておくので、ご興味のある方はご自由にどうぞ。