Wargaming Esoterica

After Action Reports & Reviews of Simulation War Games ほぼ引退した蔵書系ウォーゲーマーの日記

【戦国群雄伝】「関八州古戦録」天正壬午の乱 Solo-Play AAR

f:id:crystal0207:20160307115205j:plain

今年は久しぶりに大河ドラマを初回から見続けている。「真田丸」も先日の放送で天正壬午(じんご)の乱が終わったが、この戦いを扱ったウォーゲームはプレイしたことが無い。しかしよくよく考えてみると、2007年に購入した戦国群雄伝シリーズ「関東制圧」の同人エキスパンション「関八州古戦録」に天正壬午の乱シナリオがあったのだ。カウンターも購入直後に作ってあるし、ちょうど良い機会なのでソロプレイしてみることにした。

※以下、武将名の後に能力レーティングを表記。★★★と★★=総大将。★=大将。能力値は戦力・野戦修正・行動力。野戦修正は最高4。行動力も最高4。

f:id:crystal0207:20160307115254j:plain

シナリオは、天正十年六月第三週ターン、北条氏直(★★★323)が滝川一益(★★234)を襲った神流川の合戦から強制的にスタートする。北条軍は総勢5万2千(52ユニット、122戦力)、滝川軍は1万8千(18ユニット、36戦力)と一方的だが、ある意味、儀式的な幕開けなので気にする必要も無い。

f:id:crystal0207:20160307133755j:plain

合戦の結果、滝川軍はすべてステップロスして敗北。碓氷峠を越えて信濃に逃げ込み、この後、盤端から退場していった。北条軍は、わずか6ステップロスに留まり、部隊を分散させて厩橋、箕輪、松井田、国峰といった滝川方の城を奪取。そのまま信濃へなだれ込んだ。

信濃には真田昌幸(★344)2千(2ユニット、6戦力)がいるが、これはまだ中立。攻め寄せる北条軍にも「どうぞどうぞ」とばかりに刃向かいはしない。しかし待てそれは昌幸の罠だ。真田は、七月第二週以降、反北条方が望むターンから反北条方として行動できる。だったら先に潰してしまえ、とも思うのだが、今回は信濃に守備隊を残して真田に備えることにする。

北条方の勝利条件は、十月第一週ターンまでに甲斐の城をすべて奪取するか、ユニット除去や城獲得による得点で反北条方を上回ればいい。史実の北条軍はこの後、北信濃へ向かって上杉景勝(★★333)軍と対峙したが、わざわざそれをやる必要はない。基本的に上杉軍1万8千(18ユニット、54戦力)は越後・春日山城に留まっており、北条方が上野・信濃に守備隊を10ユニット残しておかなかった場合、反北条方として南下してくる。そのため5万2千あった北条軍は、上野に1万(10ユニット)を残し、4万2千の軍勢として信濃に入っている。

f:id:crystal0207:20160307140647j:plain

北条軍は、徳川方に降った旧武田家臣・依田信蕃(★334)の小諸城を攻略。依田ユニット自身は徳川方と合流するため城を捨て、高遠城から来た徳川軍・酒井忠次(★334)と共に甲斐へ入った。北条軍は、大軍にモノを言わせて小諸城を落としつつ、総大将・氏直自身早くも甲斐に進入。また七月第一週ターンから行動を開始した徳川家康(★★344)も、遠江から甲斐・新府城へ到着している。

f:id:crystal0207:20160307142218j:plain

北条・徳川両軍は史実通り、新府への入り口、若神子城で対峙。実際には正面決戦を避け、小競り合いで終わったようだが、今回は北条軍にまともに決戦を挑ませてみた。

ということで七月第三週ターン、第二ステージ、若神子合戦の火蓋が切って落とされた。北条軍3万1千(信濃にも守備隊を残してきたため31ユニット、79戦力)、徳川軍1万7千(17ユニット、51戦力)と、兵力的には北条軍有利だが、野戦修正は氏直2、家康4のため、ダイス修正的には徳川軍有利である。

しかし5ラウンドに及んだ合戦の結果、徳川軍敗北。本多正信を含む6ユニットが討ち死にし、新府へ敗走することとなった。だが北条軍も、31ユニット中29ユニットまでステップロスされ、満身創痍。首の皮一枚残しての辛勝である。北条軍は、とりあえず若神子城へ前進してこれを落とし、失ったステップの補充に努めることとなった。

f:id:crystal0207:20160307143813j:plain

と、翌七月第四週ターン、ここぞとばかりに表裏卑怯な真田昌幸が反北条方として行動開始。あえて負けた徳川方につき、恩を売る気か。北条氏房(★313)六千(6ユニット、13戦力)が守る小諸城へ攻めかかった。わずか2ユニットの真田隊だが、野戦修正差は±3。この差が恐ろしいほどモノを言い、氏房隊はあれよあれよと言う間にステップロスし、逆に真田隊への反撃はまったく当たりもしない。上野=信濃間の補給ルートを塞がれては、甲斐の北条軍主力が補給切れになってしまう。あわてて内藤綱秀(★323)が甲斐から引き返してくるが、彼もまだ合戦後の補充が間に合っていない状況である。

f:id:crystal0207:20160307145742j:plain

北条氏房も城に居るうちに補充を……と思ったが、なかなかステップが回復しない。とうとう真田昌幸は、内藤隊を蹴散らし、さらには氏房隊を上野まで追い払ってしまった。これにより「信濃に北条方の守備隊10ユニット」という条件が崩れてしまい、春日山の上杉勢が行動開始。たぶん真田昌幸から「信濃を守るためにお力添えを……」とか何とか頼まれて丸め込まれたのだろう。上杉景勝は、真田昌幸と合流すべく信濃へ南下し始めた(真田隊は6戦力しかないため、レベル1の小諸城が奪えない=城攻めには最低でも城レベル✕10戦力が必要)。

一方、甲斐では徳川軍が高い行動力を活かし、全戦力を回復。いまだ若神子城にて回復を続ける北条軍主力に対し、二度目の合戦を挑んだ。

八月第二週ターン、第三ステージ、第二次若神子合戦は、徳川軍1万1千(11ユニット、33戦力)、北条軍2万7千(27ユニット、57戦力)で始まった。今回も兵力的には北条軍有利だが、北条軍の半数はいまだステップロスしたままである。これが響いて、4ラウンドの合戦後、北条軍が敗北。4ユニットを失って若神子から撤退していった。徳川軍も裏返らなかったユニットは2個だけであり、今回は徳川軍が首の皮一枚で勝った形である。

f:id:crystal0207:20160307151650j:plain

これを見た真田昌幸は、小諸城・平原城の攻略を上杉軍に任せ、北条軍主力の連絡線を断つ位置に進出。退却中の北条軍にしてみれば「げげーっ、孔明真田!」というところか。翌八月第三週ターン、連絡切れにより、北条軍主力はそれぞれ士気が1ずつ落ち、すでに合戦による退却で最低士気の-4まで落ちていた北条綱成隊6千が全滅、除去された。戦わずして相手の兵力を削ぐとは、さすが真田、やり方が汚い(笑)。北条軍は、北に上杉・真田、南に徳川に挟まれ、万事休す。ソロプレイもここで終わりとした。

真田丸 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)

真田丸 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)

 

感想。北条・徳川の戦力差が絶妙で面白いシナリオだった。北条軍が甲斐に持って行ける兵力は3万程度。これを徳川軍が全力で迎え撃つと、どちらが勝ってもおかしくないバランスになっている。だったら北条軍は、わざわざ上野=信濃経由ではなく、いったん小田原に戻り、駿河の徳川方の城を落として連絡線を繋ぎ、甲斐に入ればいいじゃないか、と思われるかもしれないが、そこは特別ルール。駿河へ侵攻してしまうと、徳川方10ユニットが追加で出てきてしまう。しかも「上野・信濃に北条方の守備隊10ユニットが無い」なら、越後から上杉軍も出てくるわけで、如何ともしがたい。相模から山中に連絡線を繋いで直接、甲斐・岩殿山へ向かうルートもあるが、うーん……

今回は真田の嫌らしさも光ったが、やはり北条軍はこれを先に潰すべきか。しかし真田隊が3レベルの上田城に籠もれば、城攻めに30戦力は必要になる。強襲すれば真田昌幸にがつがつとダメージを喰らうし、地道に包囲するしかない。仮に上田城が落とせたとしても、その後で甲斐まで奪える時間があるかどうか。対する反北条方は、総大将同士の合戦は避け、有能な武将(真田昌幸酒井忠次あたり)による野戦で北条の兵力をちくちく削ぐ方が良いのか。もしまたプレイする機会があるなら、そういったアプローチで挑戦してみたい。

しかし大河ドラマでも描かれたが、北条が信濃に入った時は北条につき、北条が甲斐に入った後で徳川につく、という真田の身の振り方は、このシナリオでも良いタイミングだなあと。結局、徳川・北条は和睦してしまうが、天正壬午の乱だけを切り取るなら、その身の処し方も正しいと思えてしまった。うん。

【Grand Tactical Series】「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」To the Sea Solo-Play AAR

f:id:crystal0207:20160305144030j:plain

昨日に続いて「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」の「To the Sea」シナリオをソロプレイしてみた。この導入シナリオは、D-Day当日の夕刻に行われたドイツ第21装甲師団の反撃を扱っている。史実では、ブロニコウスキー大佐率いる戦車隊が海岸へ向かう途中でイギリス軍の射撃を受けて被害甚大、という結果に終わったがさてどうなるか。用いる地図盤はハーフマップサイズ、1700時ターンに始まり1900時ターンに終わるため、2ターンのみのシナリオだが、ドイツ軍は2個戦闘団+海岸防備部隊、イギリス軍は2個歩兵旅団+1個戦車旅団+コマンド部隊+海軍と、結構な戦力が集まっているため、プレイのし甲斐はありそうだ。

6月6日1700ターン時点で、ソード海岸に揚がったイギリス第50歩兵師団先鋒は、すでにヴィエヴィル(Bieville-sur-Orne ヘクス37.022近辺)まで進出している。しかしヘクス29.013の海岸砲台とStp17陣地が落ちておらず、海岸線のWn21、Wn24陣地も健在のため、隣のジュノー海岸とは連結できていない。

ドイツ軍の第一勝利条件は、この海岸線に沿って走る連絡道路Aの確保だ。幸い海岸へ通じるマップ西側の道路はいまだドイツ軍の勢力下にあり、早速最初のチットとしてRauch戦闘団のフォーメーションチットを選択。38(t)対空戦車中隊を一気に海岸の連絡道路Aまで突っ走らせ、道路の打通を狙うイギリス軍コマンド部隊の前に立ち塞がらせた。その他のRauch戦闘団ユニットも同時に北上。交通の要になりそうな47.015、46.015の尾根(Ridge)あたりを確保した(その代わり第二勝利条件のペガサス・ブリッジ奪取は諦めた)。

f:id:crystal0207:20160305155930j:plain

続いて第21装甲師団チットが引かれたので、イギリス軍先鋒が籠もるヴィエヴィルへ攻撃開始。まずは面倒そうなシャーマン・ファイアフライ弾幕を張り、IV号戦車中隊✕3が尾根越しに射撃。さらに弾幕の目つぶしが効いているうちにと、捕獲フランス戦車中隊も間合いを詰めたが、これらの攻撃がさっぱり当たらない。それでもドイツ軍は、一応イギリス歩兵中隊1個を除去し、ヴィエヴィルを包囲する形に持ち込んだ。

f:id:crystal0207:20160305180541j:plain

こちらが1700ターン終了時。イギリス第50歩兵師団は、海岸砲台、陣地の攻略を進めつつ、ペガサス橋とヴィエヴィルの間隙を埋めるため、第1ノーフォーク大隊、第2ワーウィック大隊(黄色い帯ユニット)を前線に上げている。これら紫火力のイギリス軍ユニットは、師団チットの第1アクションでも射撃可能なので、できるだけ敵に隣接させた方が良いと思って。

f:id:crystal0207:20160305180607j:plain

またヴィエヴィルに居る第27独立機甲旅団のシャーマン・ファイアフライは、ドイツ軍から猛射を浴びたものの、無傷でこのターンを乗り切っている。

f:id:crystal0207:20160305195611j:plain

こちらが1900ターン終了時。ブロニコウスキー戦闘団は、なんとかファイアフライ中隊1個を撃破し、ヴィエルヴィルの街中へ擲弾兵中隊を突入させた。すでに砲撃で制圧されていたイギリス軍歩兵中隊が強襲で除去され、対戦車砲も下車・展開する間もなく昇天。ヴィエヴィルはドイツ軍の手に落ちた。しかしペガサス橋~ヴィエルヴィル間の平原では、III号戦車中隊がM4シャーマンと歩兵の共同攻撃によって除去されている。またイギリス軍は、ヘクス29.013の海岸砲台とStp17陣地双方を落としており、そちらの部隊も夜間のうちに前線に向かってくるのだろう。

f:id:crystal0207:20160305195629j:plain

こちらは海岸へ向かう西側道路の争奪戦。史実ではイギリス第9歩兵旅団長がD-Day当日に戦死したため、こちらに配置された第9歩兵旅団ユニットにも指揮官が無く、ほぼ何も出来なかった。しかしやはり史実通り、この戦区に配置された第20対戦車連隊のM10駆逐戦車が大活躍。Rauch戦闘団の装甲車、自走迫撃砲を次々に一発除去し、組織的な抵抗を粉砕した。

f:id:crystal0207:20160305195723j:plain

結局、コマンド部隊は連絡道路Aの打通ならず、ドイツ軍勝利となった。海岸縁のWn21陣地は、写真では制圧されているものの、あと1損耗打撃をくらえば除去、という所で生き残ったのだ。コマンド部隊がいる陣地周辺ヘクスにはドイツ軍の地雷原があり、そこから飛び出してWn21を強襲するには、地雷原脱出チェックに成功せねばならず、これに失敗するユニットが続出し、全力では攻めきれなかった。

ちなみに艦砲射撃は、戦艦2、モニター艦1、巡洋艦4、駆逐艦3と豊富にあったものの、一番強力な戦艦とモニター艦に一度も無線が通じないという残念っぷりである。

たった2ターンのシナリオとは言え、やはり処理するチット枚数が多いため、十分な遊び応えがある。双方ともに複数指揮官を持つため、GTS2.0での独立ユニットの使い方(なるべく複数指揮官の指揮範囲にまたがるように配置する)を覚えるには良いと思う。地雷やコマンド部隊のルールも覚えられるし、今回は使わなかったが、後衛や対砲兵射撃もあり得るし、良い入門シナリオかと。

【Grand Tactical Series】「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」Day of Days AAR

f:id:crystal0207:20160304131625j:plain

本日はFORGER氏に誘われ、秋葉原イエサブにて「GTS:The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」の「Day of Days」シナリオを初対戦。このシナリオは、6月5日夜間に行われたイギリス第6空挺師団の降下に始まり、翌D-Day日没までを扱うもの。第6空挺師団が、上陸海岸の東側面を守るためペガサス・ブリッジなどの要衝を確保し、海岸からやって来る増援部隊を待つというシチュエーションである。

本作では、「The Devil's Cauldron」「Where Eagles Dare」の降下ルールとは少々異なり、降下結果によって損失を被ったユニットは離散兵(Strugglers)なる迷子ポイントを発生させる。この離散兵ポイントは、各大隊毎に集計され、あらかじめ決められた集結地点(Rally Point)に補充ポイントとして変換され、周囲3ヘクスのユニットを回復させたり、集結地点上にユニットとして登場したりする。この新ルール、離散した部隊を再結集させる、なかなか面白いアイデアだが、今回は最初に降下した6個大隊のうち3個大隊が無傷で降下してしまい、大きな混乱は見られなかった。

f:id:crystal0207:20160304142956j:plain

第6空挺師団は、6月5日夜間ターンを終える頃には、最重要目標ペガサス・ブリッジとホルサ・ブリッジを確保。降下ゾーンN近辺にいたドイツ第21装甲師団の工兵中隊に痛撃を浴びせて後退させ、順調な滑り出しである。

f:id:crystal0207:20160304143009j:plain

海岸に近い降下ゾーンVの第3空挺旅団第1カナダ空挺大隊は、降下した結果、全中隊が後衛(Rearguard)に変換されるという混乱に陥ったものの、同旅団第9空挺大隊は無傷で降下し、重要目標メルヴィル砲台へ接近。夜間のうちに砲台へ強襲をかけ、最初の2個中隊が武勇(Bravery)チェックにしくじったものの、最後の1中隊がなんとかこれを制して事なきを得た。

海岸に布陣するドイツ第716歩兵師団は、上写真ではKrug指揮官が居るものの、実は特別ルールによってランダムに来ては去り、来ては去りをくり返し、なかなか指揮下になれなかった。指揮ポイントも僅かしかなく、ほぼ置物状態に……

f:id:crystal0207:20160304152023j:plain

明けて6月6日0700時ターン。海岸ではいよいよ上陸が始まり、第6空挺師団にも艦砲射撃の恩恵が来た……と思ったら、頼みの巡洋艦2隻が双方砲撃ダイスで9を出し、弾幕マーカーさえ張れぬ失態。それでも中央の降下ゾーンNに降り立った第5空挺旅団は、ドイツ第21装甲師団の部隊にダメージを与えつつ前進を果たしている。

f:id:crystal0207:20160304160236j:plain

こちらは0900ターン終了時。ドイツ軍は、増援の自走迫撃砲部隊を降下ゾーンNに向かわせたが、イギリス空挺歩兵の強襲をくらってあえなく全滅。ペガサス・ブリッジに向かった7.5cmPak装備の装甲車隊も、対戦車砲と艦砲射撃に叩かれ除去。さらに歩兵も失った第21装甲師団のLuck指揮官は、いったんTroarn(ヘクス11.030)方面に退却して部隊を集めることに。

f:id:crystal0207:20160304164918j:plain

こちらは1100ターン終了時。すでに写真左下には、上陸海岸から急行中のコマンド部隊の縦隊列が見える。退却したドイツ軍を追って第5空挺旅団は広く散開。しかしドイツ軍にも増援のStG200(火力は高いが装甲は無い簡易突撃砲)中隊が駆けつけ、ようやくLuck麾下の部隊も戦闘団らしく行動し始めてきた。なにしろ内陸に居る第21装甲師団の歩兵たるや、強襲力が複合火力(最も効果的な射撃種別、恐らくパンツァーファウスト装備)で赤文字(強襲の際は強襲力で2回射撃する)、しかも通常火力より強襲力の方が高いという、殺る気満々の精鋭部隊であり、とても軽装備の空挺歩兵がかなう相手ではない。

そこで第6空挺師団は、このあたりから後衛ユニットを捻出。後衛とは、歩兵ユニットが捻出できる0ステップの小部隊で、GTSver1.1では移動もできず、射程も1しかない、単なる足止め部隊に過ぎなかった。ところが本作の連合軍後衛は、なんと移動が出来るようになり、ルールブックにも「後衛の使い方を習得するのがGTSver2.0をうまくプレイするコツ」と書かれているほどだ(ちなみにドイツ軍には、移動できるうえに複合火力、さらに射程が2以上ある後衛もいる)。

第6空挺は、この後衛ユニットをわらわらと(工兵アクションによって)生産し、後衛ではなく前衛として中隊ユニットの前に展開。なにしろ一応、射撃ゾーンを持つので、ドイツ軍としても師団活性化の第1アクションでは隣接できない。後衛は0ステップ・ユニットなので損耗打撃を一発くらえば死亡だが、わざわざそんな矮小ユニットのために射撃アクションを消費するのも面倒臭い。除去されても、すぐまた再生産されて、前線に出てくるゾンビのような存在になってしまった。また第6空挺師団の場合、後衛カウンターは15個も用意されており、数も脅威になっている(他の連合軍歩兵師団ではせいぜい5個)。

f:id:crystal0207:20160304172530j:plain

そして1300ターン終了時。増援のコマンド部隊は、今やペガサス&ホルサ橋を渡っており、写真では判別できないが、橋の近くには戦車隊(M3スチュアートとシャーマン・ファイアフライ装備)も到着している。第5空挺旅団の一部は、すでにカーン市郊外の要塞ヘクスに進入。ドイツ軍の増援を塞ぐ構えである。

f:id:crystal0207:20160304172541j:plain

降下ゾーンK周辺には第3空挺旅団第8大隊が陣地を築き、これに第21装甲師団の砲兵支援下、StG200突撃砲、IV号戦車中隊、歩兵中隊が襲いかかっている。赤いイギリス軍ユニットも多くいるように思えるが、その実、写真だけでも8個の後衛ユニットが見える。イギリス軍は、ドイツ軍の射程外で後衛を捻出して前線に送り、除去されたらまた別の後衛を送り込むという戦術を用い、なんとか急場をしのいだ。ドイツ軍からは「イギリス空挺部隊はアレクニド@宇宙の戦士か!」という悲鳴が上がったが……

本日は1300ターン終了時にて時間切れ。これにて「The Greatest Day」の空挺シナリオも味見できた。やはりイギリス軍にとって後衛が重要、というか後衛を使わないと勝てないと思う。プレイ後に後衛をマップから取り除いてみると、実際のイギリス軍戦線はスカスカで、この状態ならドイツ軍戦車隊を駆使して海岸まで突破できると思われた。後衛のルール変更はちょっとしたものだが、いやいや、プレイに及ぼす影響は確かに大きいと実感したシナリオだった。

【参考文献】「戦術学入門 戦術を理解するためのメモランダム」

新刊「戦術学入門」を購入。古今東西の戦術研究の歴史を紐解き、戦闘原則を交えつつ、現代の戦場に適合した戦術判断を導き出すには?というあたりが主眼か。

個人的に興味深かったのは、アメリカ陸軍の状況判断プロセスであるMDMP(軍事意思決定プロセス)とTLP(小部隊指揮手順)の紹介。部隊規模で言うと、旅団戦闘チームや大隊以上の判断はMDMP、中隊以下の判断はTLPとなる。このMDMPのために、CRM(危険見積)とIPB(情報見積)があり、7段階のステップを踏んで進めるわけだが、途中の4段階目にウォーゲームの実施が挟まっている。そしてウォーゲームの結果を見た後、指針を修正し、最終判断を下す……という、なかなか面倒なプロセスになっている。ややお役所仕事的にも感じるが、旅団規模ともなると、そこまで入念な準備が必要なのだろう。しかしTLPも、8段階のステップを踏むため、小部隊の判断でも、それだけ念入りにということか。4段階で済むOODAループは、まだ簡単な方なんだなと。

ただ、このMDMP、TLPという判断ステップを、自分もウォーゲームをプレイする際に、自然とやっているかもしれない。つまり、対戦するゲームを決めたら、その情報と危険を見積もり、事前にソロプレイをして、作戦を修正した後、本番で対戦する……みたいな。それをお役所仕事的に書き連ねるとMDMPになるのかもしれない。

【参考文献】ラリー・コリンズ & ドミニク・ラピエール「パリは燃えているか(上下)」

パリは燃えているか」の新装版文庫が出たので購入。実はこの版が出るまで、読んだことがなかったのだ。昔からハヤカワ文庫版で見かけていたのに、スルーし続けて来たのはなぜなのか。もしかしたら昔、映画版の「パリは燃えているか」を観た時に、あまり面白く感じなかったせいかもしれない。その映画も今、観直してみたら、印象も違っているのだろうな。

あいにくパリ解放に焦点を絞ったウォーゲームは手元に無く、その存在も知らない。「Decision in France」でも、連合軍がノルマンディ半島を突破した後は、あれよあれよと一気に後退戦が始まるし、ドイツ軍もわざわざパリに踏みとどまらない場合があるので、あまり戦闘の焦点にならなかったような……うん、そういうことだから、本書のことも、ずっとスルーしてきたのかもなあ。

【参考文献】イアン・トール「太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(上下)」

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 上

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 上

 
太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 下 (文春文庫)

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 下 (文春文庫)

 

「太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(上下)」が文庫化されたので購入。一応、全3作(6冊)のうちの最初の1作(2冊)。アメリカ側によって書かれた太平洋戦争の通史と言えば、ジョン・トーランドの「大日本帝国の興亡」があるが、あれもだいぶ古くなっているし、こちらはやや海軍寄りでもあるし、戦闘経緯もより詳細なので、WWII海戦ウォーゲーマーが、太平洋戦争全般を見渡すには良さそうだ。個人的には、日本側が太平洋戦争を書く場合にすっ飛ばしがちなウェーク島攻略戦(最初は日本軍が攻略に失敗)にもかなりのページを割いているのがありがたい。だいたい負けた側は、その戦いのことをあまり詳しく書かないものだから……

【Grand Tactical Series】「The Greatest Day: Sword, Juno, and Gold Beaches」Storming Gold Solo-Play AAR Part.2

f:id:crystal0207:20160215153202j:plain

さてゴールド海岸上陸シナリオ「Storming Gold」6月6日0700ターン、最初の海上チットが終わったところから。ドイツ軍は、続く第716歩兵師団チット、直接指揮チットで反撃開始。しかしWn33aが地雷原処理中のイギリス軍工兵を射撃し1ステップロスさせた程度で、さほどのことはなく。

対する連合軍も旅団フォーメーションチットが連続したが、すでに指揮ポイントが尽きており、第2アクションまでやる余裕無し。とりあえず海岸ヘクスでの渋滞を避けるため、前進のみで終わっていく。ようやくイギリス第50歩兵師団チットが来たが、Wn33攻略に呼び寄せた戦闘爆撃機4個は3回外れ、1損耗打撃というていたらく(シナリオ中に使える戦闘爆撃機4個をすべて使い切った)。それでもターンの最後に再び海上チットが引かれ、支援用舟艇の射撃でどうにかWn33を吹き飛ばした。上陸第二波が海岸に着き、第三波が上陸波ボックスに入った時点が上写真。

f:id:crystal0207:20160215160223j:plain

ターン変わって0900。今度はイギリス第50歩兵師団チットから始まり、ケンタウロスMk.IV自走砲中隊の砲撃によりWn33aがあっけなく除去(0ステップユニットなので損耗打撃をくらっただけで死ぬ)。東ヨークシャー大隊もWn34を潰し、一気に開けた東側から、戦車隊が自軍弾幕ヘクスを突っ切ってドイツ軍側面へと躍り出た。

f:id:crystal0207:20160215162222j:plain

一方西側でも、ハンプシャー大隊がWn36へ強襲をかけこれを撃破。こちらの開口部からも戦車隊が飛び出し、強力なシャーマン・ファイアフライ中隊が要衝Le HamelのWn37へ隣接した。このWn37を突破すれば、勝利条件のひとつ、83.007が見えてくる(シナリオ終了時までに83.007から最低4ステップの第47海兵コマンドを突破させる、というのが第二勝利条件)のだが、ドイツ軍もヘクス81.006に集結するLa Hamel攻略スタックめがけて増援の砲兵部隊が砲撃開始。Wn37自体、防御修整-3と本シナリオに登場するWnユニット中で最も固く、連合軍はボトルネックになったヘクス81.006から先へ進めなくなってしまった。

f:id:crystal0207:20160215185111j:plain

1100ターンは、海上チットからスタート。ここでの艦砲射撃により、連合軍の行く手を阻むWn37、Wn38がようやく消し飛んだ。これにより83.007への道筋は空いたものの、その道路上には連合軍自らの重弾幕マーカーが並んでしまい(入退出に部隊練度チェックが必要)、おいそれとは通れない。

さらにドイツ軍は、ボトルネックの81.006に積み上がった連合軍スタックを執拗に撃ちまくり(6ステップ積まれていたため混雑修整+3)、コマンド部隊をひとつ除去して気勢を上げた。

結局、連合軍の第一勝利条件である「1100ターン終了時までに海岸オーバーレイを掃討する=抵抗拠点・海岸障害物・突破口レベルを0にし、増援ヘクスから3ヘクス内にドイツ軍ユニットがおらず、もはや海岸ヘクスに連合軍ユニットがいない状況」が達成できず、ここでソロプレイを終えた。

f:id:crystal0207:20160215201902j:plain

1100ターン終了時の西側。弾幕マーカーが外れると盤端までの道が開けて見えるが、街の中にはまだドイツ軍部隊もおり、そう簡単には抜けそうもない。

f:id:crystal0207:20160215201954j:plain

一方の東側。散々砲撃をくらった2つの海岸砲台は最後まで生き残り、ドイツ第352歩兵師団に属するウクライナ人中隊もステップロスしつつ戦線を支えている。

また連合軍の第三勝利条件は「シナリオ終了時にイギリス第50歩兵師団が指揮ポイントを最低10残していること」だが、これもなかなか厳しそうだ。実際1100ターン終了時には、1ポイント余ったのみである。ただGTSver2.0から新しく導入された軽迫撃砲火力(紫)の歩兵部隊(他では禁じられている師団チットの第1アクションでも射撃可能)は、指揮ポイントを浪費せず攻撃ができる。今回は前線に出すタイミングを間違えたが、紫火力の部隊はどんどん接敵させて、無料の射撃チャンスを増やした方が良い。

一応、上陸自体は軽微な損害で済んだが、これもダイス次第でどうなるやら。DD戦車を撃ってくる海面状況レベルは減らしようがないため(海の荒れようなど人間の力ではどうにもならないのだ)、史実のオマハ海岸のように、DD戦車大隊全滅も十分ありえる設定だ。DD戦車が海岸に着かなければ抵抗拠点レベルも減らせず、続く工兵隊にも損害が出れば海岸障害物の撤去も遅れ、上陸する歩兵部隊の損害も増す、という負のスパイラルが容易に想像できた。

シナリオブックには本シナリオのプレイ時間を「1.5時間」と書いてあるが、最初はそんな時間では終わりそうもない。上陸の手順自体は一度プレイすれば飲み込めるだろうが、判定も多いため、それなりに時間がかかるだろう。

またGTSver2.0から独立部隊ユニットは、活性化した指揮官の指揮範囲にあれば1ターンに何度でも活性化できるというルールに変更された。実際このシナリオでも、イギリス軍側に3人の旅団長がおり、それらが活性化するたびにケンタウロス自走砲迫撃砲中隊が射撃できたのは便利だった。独立ユニットは直接指揮チットでは活性化しないというデメリットもあるが、うまいこと複数の指揮範囲に引っかかるよう配置するのが得策かと。

シナリオ勝利条件は厳しいものの、上陸部分だけでも面白く、いずれジュノー海岸、ソード海岸シナリオもプレイして、それぞれの状況を比較してみたい。

※枢軸軍リサーチャーVincent Lefavraisが「The Greatest Day」制作のため、ドイツ軍戦闘序列の基礎とした書籍がこちら⇩

Normandy 1944: German Military Organization, Combat Power and Organizational Effectiveness

Normandy 1944: German Military Organization, Combat Power and Organizational Effectiveness